45話 美しき愛の形
「こんな能力に頼らず、正々堂々戦うさ!」
「俺も戦う! 愛の為に! あなたの為にも!」
俺とNo.6は全力で戦うことを誓い、俺は癒の為に、No.6は今は亡き真衣の為に拳を交わした。それは各々の愛の為でもあった。だが、俺はNo.6の力や思いに押されていた。
「おい小僧! アルファマインドを使わないとこんなものか! 俺に殴り殺されるぞ!」
「あなたこそ! 愛があれば、こんなに強いじゃないですか!」
2人は何度も何度もお互いを殴りつけた。
「はぁはぁはぁはぁ……」
「はぁはぁはぁはぁ……」
「なぁ、そろそろお互いの力をぶつけ合おうか。」
「望むところだぜ。」
No.6は身体中の筋肉を増強し始め、身体が大きくなっていた。
「これも想像変擬体の能力の一つだ。もちろん生命の一部だから命は削ることになるがな。」
俺はアルファマインドを発動し、身体中に風の性質を纏った。
「俺もやられてばっかじゃあ、癒にいい所見せられねぇからな! 練習してたんだ、ストームモード!」
2人は勢いよく飛び出し拳と拳をぶつけ合うと、その威力の風圧で癒や木々が飛ばされそうになった。癒は急いで森の木の後ろに隠れた。
「す、凄い。っていうか、全然見えない。特に、蓮のスピードが!」
その後もNo.6の身体に打撃を加えていった。そして俺のアルファマインドとストームモードのコンビは筋肉を増強したNo.6のスピードさえも凌駕していた。
『この筋肉増強は俺の体術モードの中でも1番スピードが速い形態だ。それなのにここまで押されるのか! 一体何なんだ、コイツの力は!』
俺はNo.6を下から蹴り上げ自分も飛んだ。No.6からは俺が下から来るのが丸見えだった。
「空中で動けることは出来ない! ここに来るのは分かっている! 部分最大増強!」
No.6の右腕がまた一回り増強した。
「これをまともに喰らえば全身骨折は免れないぞ!」
No.6は拳を振るうが、俺には当たらなかった。俺は空気中をまるで壁があるかのように蹴って移動した。
「なに!? 空気を蹴ったのか!?」
「俺は風の性質だ。こういう事だって出来る!」
俺はすぐさまNo.6の上へと移動した。
「俺も最大質力だ!」
ストームモードの上からまた右手に風を集中させた。
「筋肉増強をしてからまだそんなに時間は経っていない! 防御する物体を出すにはまだインターバルがあるはずだ! 生身の身体で防御してみな!」
「くっ! これはヤバい! あの右腕の周辺の空間、空気を圧縮し過ぎて歪んでいるようにも見える! 防御しても、俺のこの腕がどこまで持つか!」
No.6が見た通り、俺の拳の周りは空気圧を圧縮し過ぎてモヤモヤした様な、ギザギザした様な、テレビの砂嵐の様な感じだった。俺は空気を蹴りNo.6に向かっていった。
『癒のあの笑顔は、本当にこの状況を覆す力をくれた。ありがとう。』
「風奏重力波!」
俺は力いっぱいNo.6を殴り飛ばした。No.6も両腕の質量を高めたが、俺の拳が当たった瞬間に両腕がねじ曲がってしまい、あっという間に地面に打ち付けられた。その勢いでその一帯の地面は割れ、木々は飛んでいき、アジトの屋敷も粉々になっていった。俺は瞬時に癒を抱え空へ飛んだ。
「はぁはぁはぁはぁ……勝ったんじゃねぇか?」
「っ!? 蓮、その右腕……」
癒は、俺の右腕が内出血や指が曲がっているのを見て、制御できていないようにも感じていた。
「あぁ、これは大丈夫だ。流石にこれで終わっ!?」
俺の目に映ったのは、瓦礫の中から立ち上がるNo.6の姿だった。両腕は黒く変色してブラブラしていた。
「小僧っ! 今の一発で俺を仕留めきれなかったな!」
「癒、次で決める。だから待ってて。」
俺は癒を少し離れた瓦礫の上へ移動させた。
「もう1回ストームモードで行く!」
だが、いきなり風奏重力波を繰り出したせいか、身体が思うようにうごかず、ストームモードも発動出来なかった。そこにNo.6が走ってきている。
『小僧、特に根拠は無いが、お前に会って変われた気がする。なぜかは知らないが、どうして変わったか分からないが、確かに俺の心や身体、そして命を感じる! ありがとよ。やっぱりアイツには人を変える何かがあるのかもしれない。』
No.6は左手に鉄の塊を溜めて拳を振るった。
「限界を超えろ! 風神の拳!」
2人の拳は打ち付け合うと、No.6の鉄を砕いていった。
「そんな、馬鹿な! この鋼鉄を砕くなんて普通じゃない!やはりコイツは、金のアルファマインドを持つに相応しいのか!?」
俺はアルファマインドを発動し空高く飛び上がり、両手に体力の風の性質を集めた。
「俺は癒の為にも、仲間の為にも、これから俺が守る人々の為にも、ここで負けるわけにはいかない! 」
両手の拳を振るい、連続で膨大な風の風撃を飛ばした。
「風豪大連波!」
「ふっ、こんなもの! っ!?」
No.6は腹から鉄の盾を出そうとしたがその時、先程切らなかった蝶が盾の外側を飛んでいた。それを見て鉄の盾を創るのをやめた。そしてその蝶の先の空に、No.6の目には微笑んだ真衣の姿が映っていた。
「幻創、私は信じてるよ。」
そう言って消えていった。No.6は涙を流してボロボロの両手で蝶を包み込んだ。
「俺の中にも、まだ愛はあったのか……真衣は、いなくなっても俺の心の中にいたのか……」
そしてその蝶を包み込んだ手を胸に当てて叫んだ。
「愛とは、愛とはなんて素晴らしく切ないものなんだぁ!」
『ズババババババババッ!』
No.6は俺の風豪大連波を生身の身体で受けた。地面は何ヶ所も陥没し、全身の骨が砕けてしまった。俺の体力にも限界がきていて、No.6の側へ落下し、そこに癒が走って駆けつけた。
「蓮! 大丈夫!?」
「あぁ……」
俺と癒はNo.6の方を見ると、仰向けになりながら包み込んだ両手を上げた。両手を離すと蝶がヒラヒラ空へ飛んでいった。
「命の重さは皆平等だ。俺も、お前も、その女も、そしてこの蝶も。命は儚く美しく脆い。俺が何を言ってるんだと思うかもしれないが、俺もお前と出会って変わった。俺は命を宿す能力だが、お前は俺に命を宿してくれた。本当に情けないよな。」
気づいたら俺は涙を流していた。
「愛を持ったあなたは、とても強い人間でした。」
「人間か……俺もやっと、人間になれたよ、真衣……」
No.6は笑って目を閉じた。俺にはNo.6の目に何が映ったのかは分からないが、愛が宿ったということは伝わった。
「癒、1番良い決着の付け方だと思わない?」
「蓮ならやってくれると思っていた。」
癒は倒れた俺を強く抱きしめた。その後、山梨のエージェントと新宿本部のエージェントが増援に来て、皆を回収してくれた。
「どんな戦いをすればこんな怪我になるんだ。早く医療部隊のいる場所へ!」
「はい!」
山ちゃん、後藤、清水さんは複雑骨折などの怪我で当分の治療が必要だったが鳳は……
「こ、これは、身体の血液や、臓器、骨まで灰になっている。っ! 触ると熱い。なぜこんなことに……」
俺と癒の場所へも助けが来た。
「すみません! こっちです!」
俺は体力を使い切り全く動けなかった。
「すみません、動けなくて。」
「大丈夫だ。じっとしていろよな。」
凶悪犯達も身体がボロボロの状態で搬送された。だが、鳳と戦った只野は首を切られていて既に死んでいた。俺は気づくと本部の医療室のベットにいた。
「ここは……本部か?」




