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44話 空っぽな人間

「じゃあ、貴方達は今日から小学生です! まずは皆さん自己紹介しましょう!」


「じゃあ、次は望月(もちずき)君!」


「はい! 僕の名前は望月(もちずき) 幻創(げんそう)! よろしくね! 僕は生まれつき凄い能力を持っているんだ。」


幻創は手の平からナイフを出した。その能力は小学生の皆からは凄いものだと思われていた。


「望月君凄いよ!」

「どうしたらこんなことできるの?」


小学生までは……

小学生を卒業して中学生になると、その能力が気味悪い物になっていった。


「アイツの能力、気持ち悪くないか?」

「身体から変な物出すもんな。」


幻創はそんなイメージを払拭(ふっしょく)するために、手の平から蝶を出した。それで皆の気が引けると思っていた。だがそれも気持ち悪がられてしまった。自分の命を削って創り出した1つの命を。


「うわっ、あいつ手から蝶を出したよ!」

「気持ち悪っ!」

「行こーぜ。」


幻創はこんな能力のせいで一人ぼっちになっていた。でも、一人だけ受け入れてくれる人がいた。その子は小学校からクラスの人気者だった篠原(しのはら) 真衣(まい)だった。真衣はクラスの人気者で、明るくて、幻創にとても優しくしてくれた。


「幻創って凄いね! なんでも出来るんだもんね!」


「え? 俺が怖くないの?」


「なんで怖いの?」


「あ、いや、皆は俺の事をあんな目で見る。友達にも何人にも裏切られた。」


「なんだ、そんなやつ友達じゃないよ。」


「でも、俺1人だから友達欲しいし……」


「え、じゃあ私は友達じゃないの? 同じクラスだし。」


「えぇぇ!? 篠原さんは人気者だし、俺といたら皆からどんな目で見られるか分からないよ?」


「別にいいよ! どんな目で見られても!」


幻創は真衣がとても心配だった。一人だった幻創と一緒にいると真衣まで嫌われてしまうのではないかと不安に思っていたからだ。案の定、その不安は的中してしまう。


「真衣、なんで最近幻創なんかとつるんでんの?」


「え、だってアイツ面白いじゃん!」


「まさか、真衣も変な能力持ってんの? 気持ち悪いんだけど。」


真衣は幻創と絡むようになってから人気者だったのがあっという間に嫌われて者になってしまった。それでも真衣は幻創の事を見捨てたりはしなかった。そしてついに幻創は本音を口にする。


「篠原さん、もう俺と一緒にいないでくれないか?」


「え、なんでだよ!」


「俺、見てわかるよ。俺と一緒にいると嫌われるって。だから前に言ったんだ。」


「あのな、これ、まだ誰も知らないんだけど……」


すると、真衣は自分の骨を曲げ始めた。


「私もジエーネなんだ。曲げたいと思う骨や関節をこんな風に自由な方向に曲げられるんだ。気持ち悪いだろ?」


真衣は笑ってそう言った。幻創はそんな思わぬ共通の人物だと知って初めて仲間だと思えたし、何より救われた気がした。


「幻創! 私の事、真衣って呼んでみな?」


「え、なんだよ急に!」


「だって、私は幻創って呼んでるのに幻創は私のこと真衣って呼んでくれないだろ?」


「分かったよ。まぃ……」


幻創は照れくさそうに名前を呼んだ。


「え! なになに! 全然聞こえない!」


「もう言わないからな!」


2人でいる時間はとても短く感じた。なぜなら学校にいる時間が長く感じたからだ。学校では2人していじめられていた。


「お前らなに2人でイチャイチャしてんの?」


「なにお前ら、どっか行けよ。」


「真衣、そんな言い方するなよ。」


「クソ! この野郎っ!」『ドカッ!』


クラスメートが真衣を蹴飛ばした。それを見た幻創は右手の拳を鉄に変え、そのクラスメートを殴った。殴られたクラスメートは教室の外まで吹っ飛ばされ、病院送りになった。


「俺のせいで真衣が傷ついてるんだ……」


幻創はそう思わずにはいられなかった。幻創はもちろん停学処分となった。その期間は真衣と連絡は取っていたが、全く会っていなかった。2週間後、幻創は学校へ再登校すると、真衣は学校へ来ていなかった。


「え、なんで真衣がいねぇんだよ。」


「望月、篠原はもう1週間来ていないんだ。」


担任の先生がそういうと、真っ先にクラスメートを疑った。


「誰の仕業だよ……誰が真衣を不登校にさせたんだよ!」


皆は顔をそむけたり下を向いたりしていた。


「先生も! 絶対分かってたはずだろ!」


先生も何も言わなかった。幻創は急いで学校を飛び出し、すぐさま真衣の家へ向かった。家に着くとケータイで電話をした。


「もしもし真衣!? 今、家の前までいるんだけど!」


「あ、幻創!? 停学終わったんだ!」


「早く家から出てこいよ! 何があったんだ!」


「何って、体調崩したんだよ! 心配しないで!」


「お願いだ……いいから出てきてくれ……」


すると、家から真衣が出てきた。真衣は眼帯を付け、口の横は紫色に腫れ上がり、左腕を骨折していた。幻創は涙を流して真衣を抱きしめた。


「あぁ……本当にごめん……真衣には辛い思いさせちゃった……」


「階段から落ちただけだから!」


「嘘つくなよ! 全部俺のせいだ……」


幻創はこの時、愛や志があるからこそ人を傷つけてしまうのだと感じた。その後、幻創と真衣は学校へは行かなくなった。ある日、河川敷の階段で2人で座っていた。幻創は真衣の前で手の平から蝶を出した。


「うわぁぁ! 凄いね! でも、生命を生み出すのって自分の命を削るんだろ?」


「あぁ、そうだけど、真衣に使うんだったら全然平気! 削るって言ってもこのくらい小さい生き物だったら大したことないよ!」


「そうなのか。でも、その能力。本当に優しい能力だよな。」


「え?」


「私の心にはちゃんと届いてるよ!」


幻創はその時、本当の愛や志を手にしたと思っていた。


「私も、幻創みたいに人を喜ばせる為に命を(つい)やしたいな。」


そしてその蝶が道路に出ていった時、ちょうど車が飛び出した。その瞬間、真衣は蝶の方へ行き、手を伸ばした。


『キーーーーーッ!』


真衣は車に引かれてしまった。


「嘘だろ……真衣!」


幻創は真衣の所へ行くと、真衣は血だらけになっていた。


「真衣、なんでそんなことしたんだよ!」


「幻……創……命の重さは皆平等なんだ……私も……幻創も……あのクラスメートの奴らも……そしてこの蝶も……」


真衣は重なってた両手を離すと幻創が出した蝶がヒラヒラと空へ舞って行った。


「真衣……っ!?」


真衣は目を見開いたまま動くことは無かった。


「こんなことってあんのか……俺が創った蝶で、真衣が……俺が、殺したのか……」


幻創はその時、とてつもない罪悪感と嫌悪感で絞め殺されそうだった。


「あぁぁ真衣! なんでだよ! 真衣! 愛や志なんて持つからこんなことになるんだ! そんなもん無かったら人間は苦しまなくて済むんだ! 人間は愛や志を持ってはいけないんだ! 俺の命なんかいいから、真衣の命を返してくれ……」


幻創は変わってしまった。通っていた中学の学生と教師、全員殺害。この事件で指名手配され、それからも次々と人を躊躇(ちゅうちょ)無く殺すようになってしまった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「そこから俺は変わったんだ……だからお前らみたいな愛だ志だと言っている(やから)は殺したくなる。」


するとNo.6は立ち上がった。


「その時に俺に残されたのはこの無情さと空っぽな肉体だけだ! 愛は俺の生きる意味を、志は俺の生きる痛みを持っていきやがった!」


No.6は右手を刃に変え、自分の左の手の平に突き刺した。


「全く痛くねぇんだ……これは生きてる実感がねぇってことだ。お前にこんな俺を救える事ができるのか?」


俺は下を向きながら口を開いた。


「No.6、いや、望月 幻創。あなたの心の中に、あなたの愛した真衣さんは生きている。」


「はぁ? 俺はそういう訳分かんねぇ利己的(りこてき)な事言うやつが1番嫌いだ。」


「じゃあ、あの時なぜ蝶を切らなかった!」


「っ!?」


「それが何よりの証だ。」


No.6は怒りを感じ、俺に殴りかかってきた。


「お前に俺の何が分かるんだ!」


俺はアルファマインドを発動し、カウンターでNo.6を殴り飛ばした。


「今はお前より俺の方が強い。なんでか分かるか?」


No.6は顔は悲しい目をして俺を見上げた。


「お前には愛がないんだ。」


No.6は地面を向き、涙を流した。


「俺も……永遠の愛が欲しかった……志を持ちたかった……でも、今なら何かが分かる気がする……」


No.6は自信を持って立ち上がり、拳を握った。


「俺のこの能力、想像変擬体(そうぞうへんぎたい)は死んだ能力だ。こんな能力に頼らず、自分の中の何かを信じ戦う。"そんな人間でありたい"。」


「あんたの能力は死んでなんかいない。今も生き続ける、優しい能力だ!」


そして俺とNo.6は拳を交えた。

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