42話 見えない力
「ここに癒がいるのか。」
俺は目の前の大きな屋敷を見上げた。
「中に入って確かめるしかないか……」
俺は屋敷の正面の扉から入った。中にはいくつもの部屋があり、それが3階建てになっている。癒を探すのには少し時間がかかりそうだった。
『先に見つかると先制攻撃を受ける。あまり大声や足音はたてられないな。』
俺は慎重になって探していると、2階に上がって奥の部屋に近寄ると声が聞こえた。
「なぜ言うことが聞けないんだ!」『パシンッ!』
「早くアレをやれ!」『パシンッ!』
部屋の中を見てみると癒とNo.6がいた。No.6は自分の思い通りに行かず、癒の顔を殴っていた。鼻から血が出ていて、口の中は切れていて血も吐いていた。そんな姿を見て俺は飛び出した。
「てめぇぇ!! なにやってんだ!!」
俺はアルファマインドを発動し、右手に風を集めNo.6の方へ向かった。すると、No.6は左手をこちらに向けて変形させた。その形はまるでバズーカ砲だった。
「お前誰だ? 邪魔すんな!」
『ズドーンッ!』
俺は至近距離でバズーカ砲を放たれ、屋敷の外まで吹き飛ばされた。俺は地面に叩きつけられたが、アルファマインドの耐久でバズーカ砲の衝撃すら抑えた。屋敷を見ると、吹き飛んだ穴からNo.6と癒の姿が見える。
「お前のその目! 面白い物を持ってるじゃかいか!」
「そんなことはどうでもいい! その子を離せ!」
「いいや、それは出来ない。こいつには寿命を貰う。その為にこいつが必要だ。」
俺は癒が俺の上げたパーカーを着ているのに気がついた。そのパーカーにはNo.6に殴られた時の飛び血が付いていた。
「あれは、俺が上げたパーカー……なんで俺は、こんなに目の前に来ているのにすぐに助けられる力が無いんだ……なんで女の子1人救えないんだよ、俺は……」
俺はまた自分の無力さを痛感し、悲しみの涙を零した。
「今川の時もそうだ。今回もそう。その能力を持ってるってだけで狙われる。悪用されるために連れ去られる。そんなの……そんなの悲し過ぎないか……
お前には! 愛や志って物が無いのか!」
「愛? 志? 次そんな言葉言ったらぶっ殺す。」
すると、癒が叫んだ。
「小原くーん! 戦っちゃだめぇ! 殺されちゃうよ! もう私なんて助けなくていいから! 逃げてぇぇ!」
「ふんっ、この女は状況が理解できてるみたいだな。」
「違うだろぉぉ!」
「え?」
「約束が違うじゃないか!」
すると癒は、連れ去られる日の就寝前の事を思い出した。そして癒は涙を流して叫んだ。
「"蓮"!」
「初めて名前で呼んでくれた。"癒ぃぃ"! もうお前に、悲しみの涙は流させない! 一緒に帰るぞぉぉ!」
それを聞いた癒は大号泣してしまった。
「蓮……蓮……やっぱ私、蓮が好き……」
「ちっ、くだらないな。聞いててムカつく……」
No.6は吹き飛ばされた2階の穴から飛び降りた。
「お前ウザイな。さっさと殺してその目を貰う。」
「生憎だが俺もお前が許せないんだ。」
俺は右手に風を集めた。その風は今川の時のように黄金に輝いていた。
「お前の強さは、本当の強さじゃない!」
俺はその風をNo.6に向けて放った。とても大きな風撃で、No.6は両手で鉄の壁を作るが壁ごと吹き飛ばし屋敷まで飛んでいった。だがすぐに壊れた瓦礫を吹き飛ばし外へ出てきた。
『こいつ、遠距離攻撃もできるのか。少しやりにくいな。そして今の一発、普通じゃない風性質の能力。あの金のアルファマインドがそもそも厄介なんだ。只野が面白い物を見れるって言ってたが、どうやらこれの事だな。』
「だが、お前が金のアルファマインドを持っていようと俺には勝てない! 俺はNo.6だからな!」
そう言うとNo.6は両腕がチェンソー、背中からは無数の刃、腹からは3機のバズーカ砲を出した。
「こ、これが想像変擬体か。思ってたよりもえげつない姿してんな。」
俺は右腕にまた風を溜め、風撃を放った。
「風豪波!」
No.6もバズーカ砲を3発放ち風豪波と打ち付けあった。砂煙が舞い、そこから俺の前にNo.6が現れた。
「そんなスピードで俺に追いつけるのか!」
No.6はチェンソーで俺を切り裂こうとしたが、俺はNo.6の上を通り避けた。
「この位置なら行ける!」
俺は風豪波をNo.6に叩きつけようとするが、No.6の足が空気砲に変わり俺の方へ浮上してきた。そして背中にある無数の刃で刺してきた。
『グサッ!』「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
俺は両手で受け止めたが、両手から血が出てしまい、足、腕、腹、胸元に計8本程が軽く刺さってしまった。
「俺とお前とでは経験が違うんだよ!」
No.6は刺した刃を抜き、俺を蹴り飛ばした。
「案外大したことないんだな。何が金のアルファマインドだ。期待して損したなぁ。」
「蓮っ!」
癒が1階に降りて扉を開け、俺の方へ走ってきていた。
「なんで来たんだ! お前もやつに! ぐっ!」
「動かないで!」
癒は俺の傷口に手を当てた。
「療性・癒流点照。」
傷口がだんだんと塞がってきていた。その治癒スピードの早さに俺も驚き、癒が医療の天才とまで思った。
「す、すげぇ……」
「私も戦う!」
「馬鹿っ! お前が戦えるわけ……」
「そう、私が戦えるわけがない。だからこんなことしかできない。でも蓮には生きててほしいの。」
癒は全ての傷口を塞ぐと、俺の心臓の場所に手を置いた。
「療性奥義・自動治癒。」
すると俺の体に何かが駆け巡ったのを感じた。
「今、何をしたんだ? 身体に何か入った気がする。」
「この能力は傷を負っても自動的に今みたいな早さで傷が癒える能力なの。でも、この能力は私が完全発動してから制限時間が5分しかないの。そこで決めるしかない。」
「No.6には最適な戦法だな。」
「でも、腕とかを切断されたらそれは戻らないからね。それだけは気をつけて。」
その時、No.6が俺と癒に歩いて近づいてきた。
「2人で何コソコソ話してるんだ? 何をやっても無駄なのはお前ら本人が分かってるはずだ。」
俺は立ち上がり、No.6の方へ向かおうとすると、癒は俺の手を握った。
「蓮、私ね、蓮を見ていると強くなれる気がするの。蓮を見てると何でも頑張れるっていうか。蓮には、人を変える力があると思うの。だから……」
「っ!?」
「"生きて"」
癒はこの状況でも満面の笑顔を俺にくれた。その時俺は、なぜか何も言わずに頷くだけだった。俺と癒は握った手を離し、俺はNo.6の方へ走って向かい、癒は両手を合わせた。
「近距離戦でくるのか! 本当に馬鹿だな!」
俺はアルファマインドを発動し高く飛び上がり、右腕に黄金の風を集めた。
「自動治癒、発動!」
俺は身体の一つ一つの神経が活性化されていくのが肌で感じた。そしてその時こう思った。
『癒は笑って俺を信じてくれた。癒の笑顔にはいつも救われる気がするんだ。ずっと笑顔でいてほしい。癒の笑顔には"どんな状況でも覆るような力"があると思うんだ!』




