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41話 炎の剣士

「おい、こっちに来いよ!」


「やだ! なんで髪の毛引っ張るのよ!」


(おおとり)は昔から好きな女の子に相手にしてほしかったため、傲慢(ごうまん)に振舞ったり、皆の気を引くために弱い奴をいじめたりしていた。


「やめろよ! 僕のメガネ返して!」


「こんなの、こうしてやる!」


『パキンッ!』


鳳はメガネを踏み潰し、メガネを潰されてしまった男の子は泣いてしまった。最初は皆も笑って見ていた。でも、歳を重ねる(ごと)に人気者から不器用な奴に。不器用な奴から嫌な奴にと変わっていった。


「おい、ここの店に万引きしに行かないか!?」


「よし、見てろ!」


鳳はお店の商品を盗んで外へ出てきた。


「ちょろいもんよ!」


絡む友達も変わっていき、"善人"というには程遠い生き方をしていた。そんな鳳にも、1人の兄貴がいた。その兄貴は一般警察官だった。鳳が万引きや夜中にバイクを乗り回し、良く兄貴の警察署にお世話になっていた。


「また剣矢(けんや)か! これで何回目だよ! 兄貴として恥ずかしいよ!」


「恥ずかしい弟で悪かったな!」


2人は基本的にはこういう会話しかせず、とても仲が良いとは言い難かった。そんなある日、その街で連続殺人犯が逃げているというニュースが入っていた。だが鳳はそんなの関係なしにその日の真夜中も相変わらず友達とバイクを乗り回している。少し疲れると、バイクを降りて缶ジュースを飲みながら友達と話しをしていた。そこに1人の怪しい男が目の前を歩いていった。


「アイツ、もしかして連続殺人犯じゃね?」


「そんな悪い奴はこうしてやる!」


鳳は持っていた缶をその男に投げ、頭に当たった。


「ストライーク! はっはっはっはっは!」


するとその男は鳳の方へ近ずいていった。よく見ると、右手に血で少し()びていたナイフを持っていた。


「おい、マジかよ……」


男は鳳目掛けてナイフを差し、鳳は目をつぶった。


『グサッ!』


鳳は目を開けると、前には1人の警察官がいた。それは鳳の兄貴だった。


「え、兄貴、なんで……」


「これが俺の仕事だ……」


連続殺人犯はそのまま走って逃走した。鳳の兄貴はすかさず、声を踏ん張り警察署に連絡した。


「兄貴、なんで。」


「あ? なんでって……」


「なんで俺みたいな恥ずかしい弟の為に、俺より何百倍も立派に生きてる善人の兄貴がこんなことすんだよ!」


「そりゃー、危なかったからな。」


「なんでだよ……俺が死ねばよかったのに。」


「ふっ、大好きな弟のために身体張れるなんて、兄貴としてカッコイイじゃねぇか?」


「うるせーよ! 早く病院行くぞ!」


「いや、いいんだ。刺されどころが悪かったみたいだ。血は止まらないしもう下半身は冷たくなってきてる。剣矢、お前は俺より何百倍も強い。だから俺は命をお前にかけた。お前は人を守れる力がある。そして、強くなって自分の守りたい人を守り抜くんだ。俺の思い、受け取っ……て……く……れ……」


鳳の兄貴は心臓にナイフが達していて即死だった。


「あ、兄貴ぃぃぃ! 俺、兄貴みたいに人のために命なんかかけられねぇよ……」


だが、鳳はそこからエージェントを目指した。そして、鳳はいずれ自分も兄貴みたいに死ぬ時は大切な人や仲間と自分の命を天秤にかける程、強くて優しい志を持ちたいと考えるようになった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「過去の俺は、何も罪も無い人達を傷つけてしまうような弱い人間だった。でも今は、強い志を持った兄貴と共にある! 天鳥(てんちょう)()孔雀連(くじゃくれん)!」


鳳は只野(ただの)に走って向かって行った。すると、鳳の右腕が6本に増えた。


「っ!? なんだ、幻覚? いや、確かに腕が6本ある。」


「左腕が無いからやっぱり完全体にはなれなかったか……」


只野は鳳の孔雀連を自分の刃で受け止めた。


『確かに6本ある。しかも、一本一本が全く違う動きをしている。もし左腕もあったらなんて考えたら恐ろしいな。』


天神(てんしん)()建御名方神(たけみなかた)!」


只野は、鳳の左腕を切り裂いた技を至近距離で繰り出してきた。鳳は6本の腕で守ったが、それでも胴体に大きな切り傷を負ってしまう。鳳は仰向けになって空を見上げた。


「俺、マジで(いやし)の事好きだったな。」


そして鳳は今までの自分を振り返っていた。だが、良い事なんて1つも無かった。


「俺って地獄に行くのかなぁ。天国にいる兄貴には会えないのかなぁ。」


「そうか、お前の兄貴は死んだのか。お前は何も守れないくらい弱いのか。」


鳳は決心をし、静かに立ち上がった。


「弱くても、守りたいものが出来ちまったんだ。それは人としては仕方ない事だし、避けて通れない道だと思う。そして、今がその時だと思う。」


そして頭に浮かんだのは癒と今まで一緒にいた4人の顔だった。


『癒だけじゃないお前ら全員大好きだ。』


終身(しゅうしん)()不死鳥(ふしちょう)(じん)。俺が傷付けてきた人に比べたら、俺の痛みなんて一瞬だ!」


刀が熱く激しく燃え上がり、その刀を自分の心臓に向けた。


「俺、大切な人を守りたい。そして、あの頃から変わらないのは、善人が死んで、悪人が生き残る世界なんてやっぱりおかしい! 癒は絶対に殺させない! 兄貴、ここで使うの、間違ってないよね……」


そしてその刃で自らの心臓を貫いた。


「はぁはぁはぁ……熱い……なんだ、視界が真っ白に……心臓が……苦しい……ああぁぁ……」


すると、鳳は空の上にいた。


「あれ、俺は死んだのか?」


そこには沢山の人が歩いている。目の前には鳳の兄貴もいて、手を差し伸べていた。


「お前は、自慢の弟だよ。」


鳳は初めて嬉しさの涙を零した気がした。


「あぁ、兄貴、俺……人として生きれたかな……」


……………


『ブワンッ!』


鳳の身体が燃え上がり、炎の翼が生えた。


「な、なんだこの技は……」


只野は鳳を見ると、身体が動いていなく、目が完全に閉じ切ってないのが分かった。


「あいつ、もう、死んでる!?」


鳳の身体は勝手に動き、只野に刀を振るった。


「なんだこの動きとスピードは! 人間の動きじゃない! まるで華麗に空を舞う(ちょう)の様だ。」


只野は鳳の刀を弾こうとするが、逆に弾かれてしまう。


「こ、これは……なんて美しい太刀筋なんだ……」


今まで太刀筋にこだわらなかった只野が、鳳の不死鳥の陣を美しいと言った。


「だが俺もここで死ぬわけには行かない!天神(てんしん)()建御名方神(たけみなかた)!」


『ズバンッ!』


鳳の不死鳥の陣は、只野の建御名方神を一太刀で打ち破った。


「なんてことだ……」『スパンッ!』


鳳は(ちょう)のように飛び舞い、そのままその刃は只野の首を切り裂いた。首は空高く跳ね上がり、地面へと叩きつけられた。鳳の身体から出ていた炎は収まり、身体中が火傷だらけだった。刀は灰となってしまい、鳳の身体は地面へと倒れ込んだ。そして、その肉体は少しずつ(ちり)になり、風に揺られ自然へと還っていった。


その頃俺は屋敷の前に立っていた。


「ここに癒が……待ってろよ。」

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