40話 天性の持ち主
俺が只野を追う捜索をしていると、森の中に大きな屋敷が見えてきた。
「なんだあの建物。あそこにNo.6がいるのか!?」
すると、通り過ぎた木の陰から誰かの気配を感じた。
「よぉ、ここまで来たのか。」
俺はすぐさま足を止め、声がした方向を向いた。
「その声は、只野か!」
「さっき会ったばかりだからな。声まで覚えててくれたのか。」
気の陰から只野が出てきた。只野は既に刀を抜き、まるで戦闘態勢に入っているようだった。
「どうやら俺はお前を先へは行かせられないらしい。んまぁ、行かせても死ぬのは目に見えてるけどな。」
「ってことは、あの建物に癒がいるんだな。」
「あぁ、あの女か。今頃No.6に何されてるか分かんないぞ。」
「お前をさっさとぶっ潰してあの屋敷に行ってやる!」
すると、いつの間にか俺の背後に只野がいた。
「それはお互い様だ。」
只野は刀を振るうが俺はアルファマインドを使い瞬時に対応した。
「いいね、その目。俺に背後を取られて攻撃を避けるとは、便利な道具だ。」
只野は刀を両手で持ち体勢を低く取った。
「なにかくる……」
「瞬舞の技・瑞牆。」
只野は俺の真下まで来て、刀をすくい上げた。俺はギリギリかわせたが、風圧で右腕が切り傷を負った。
『マジかよ……これをまともに食らってたら腕が飛んでた。そもそもアルファマインドが無いとかわせない。』
すると、またそこから只野は構えた。
「天山の技・皇海。」
刀から青い光が溢れていた。
「やばい! 空中じゃ動けない!」
「天鳥の技・雲雀!」
『ガキーッ!』
俺の目の前に現れたのは、鳳だった。只野と鳳の刀が触れ合った時、周りの木々や大地を強く削った。
「鳳! 来てくれたのか!」
「蓮、こいつはやばい。先へ行ってくれ。天の技を使う剣士は天の技を使える剣士じゃないと太刀打ちできない。」
「お前、今の技は中々良い太刀筋だったぞ。剣士として興味がある。名を名乗れ。」
「俺の名は、鳳 剣矢だ!」
「そうか、実際俺はあんな女なんて興味無いんだ。ただ強い奴と戦いたい。お前みたいな強い奴とな、鳳。今の一振で分かったぞ。」
「蓮、早く癒を助けに行け!」
「こいつスゲー強いぜ。大丈夫か?」
すると、鳳は笑って俺に言った。
「任せろ。俺もスゲー強いから!」
いつもはふざけた奴だけど、この時は本当に頼りになる奴だと思っていた。なぜかは分からないが、鳳の背中が大きく見えた。
「じゃあ任せたぜ!」
今の鳳や他の3人が俺に癒を託してくれた思いを背負い、只野を任せ屋敷に向かった。
「元No.4の一番弟子のアンタに強いって言われて光栄だな。」
「形では一番弟子だったが、俺とあのお方ではレベルが違う。一番弟子でいるのが烏滸がましい限りだった。あのお方には警剣部隊で勝てる者はいないだろうな。」
「ふんっ、ここにいるじゃねぇか!」
鳳は只野に向かって走り、大きくジャンプしながら刀を頭の上に上げた。
「瞬舞の技・鳶!」
『ギーンッ!』
「瞬舞の技を、技を使わずに止めやがった。」
只野は鳳の刀を振り払い、低く構えた。
「天山の技・武尊。」
青く光る刀を下から上へすくい上げ、鳳に斬撃を飛ばした。鳳は刀で防ごうとするが、防いだ場所以外の左肩と右脇を切り裂かれた。
「ぐっ、なんて威力だ。そして、なんて雑な太刀筋なんだ。剣士にしては乱暴過ぎる。」
鳳は地面へ着地すると、只野に問いかけた。
「あんたみたいな人が、なんでこんな乱暴な太刀筋をするんだ? もっと繊細な太刀筋ができるはずだ。」
「太刀筋? そんなの興味無いね。力が全てだ。俺はそれで勝ってきた。勝てばそれが正解だろ?」
「なら俺が証明してやる。綺麗な太刀筋がお前の乱雑な太刀筋を凌駕するということを!」
その後も2人は刀と刀を合わせ続けるが、経験、力、スピード、そして剣士としての完成度が違いすぎた。鳳の身体は次々と傷が付き、体力も消費されていった。
「鳳、そんなものか。お前には"隠した力"があるはずだ! 最初に刀を合わせた時に確信した! だからお前が強いと言ったんだ! 早く見せてくれよ!」
「隠した力か……確かにそれは……」
「あるなら見せてくれ。」
鳳は刀の矛先を只野に向けた。
「この技は、三連撃の大技だ!」
すると、鳳の刀から灼熱の炎が燃え上がった。
「一連撃・天鳥の技・仏法僧!」
炎の縦の斬撃が大地を焼き尽くしながは只野に襲いかかるが、只野は簡単に避けてしまった。
「大技がこんな淡白な攻撃なのか?」
その瞬間、かわしたはずの炎の斬撃が軌道を変え、再び只野の方へ向かっていった。
「なるほどな! 追跡斬撃か! 凄いじゃないか!」
「まだだ! 二連撃・天鳥の技・篦鷺!」
次は横の斬撃が只野に襲いかかった。
「これも追跡斬撃か!」
「最後だ! 三連撃・天鳥の技・蓮角!」
最後は十字の炎の斬撃が只野を襲った。三つの炎の斬撃が周辺の大地や木々を焼き尽くしていく。只野は三つの斬撃からひたすら逃げていた。
「なんて技だ! こういうのを待っていたんだ! このまま何もしなかったら俺は追跡斬撃を食らって死ぬ! 考えるだけで興奮すんなぁ!」
三つの斬撃が同時に只野に当たる瞬間、両手で刀を握りしめた。
「天山の技・天城!」
只野は三つの斬撃を一振で消滅させた。
「ありえない! あの斬撃を消滅させるなんて、しかもたった一振で!」
「消滅させたんじゃない。飛ばしたんだ。俺のこの天城は、触れた物体を別空間に飛ばす技だ。ただ、体力の消費は半端じゃないがな……」
只野は膝から崩れ落ちた。2人の周りは鳳の三連撃によって火の海のようになっていた。
「それにしても凄い技じゃないか。まだ若いのにここまでの技を使えるとはな。」
鳳は只野が弱っているのを見て、刀を握り締め構えた。
「そっちはもう体力が無いじゃねぇか! 天鳥の技・火食鳥!」
鳳の出した斬撃はまるで鳥の形をして只野の方へ飛んでいった。
「体力が無いとは、舐められたもんだ。これはNo.4に教わって唯一俺に出来た技だ。心して見ておけよ。」
すると、只野が両手で刀を持ち、頭上へ上げた。刀は金色に光っている。
「天神の技・建御名方神。」
刀を振り下ろすと大きな金色の斬撃が鳥の形をした斬撃を真っ二つに切り裂き、鳳を横切り、森を削っていった。
「なんなんだ……今の。っ!?」
鳳の左腕は今の斬撃でどこかに飛んでいってしまった。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
「おぉ、危なかったな。あと10センチくらいズレてたら身体が真っ二つだったな。」
「ぐああぁぁ……なんて荒々しい斬撃なんだ……」
「これで分かったろ。力が全てだ。繊細さや太刀筋は関係ない。そもそも刀を振るのに美しさなど求める必要が無い。」
鳳は左肩を抑えて膝を地面に着いて、少し微笑んだ。
「癒は、片腕が無い男となんて付き合ってくれないだろうな……」
「なんだ、お前あの女が好きなのか?」
「あぁ、そのために来たに決まってるだろ?」
「それで片腕を失うなんて、馬鹿だな、お前。」
「ふっ、何も分かってねぇな。惚れた女の為に身を犠牲にするなんて、男としてはカッコイイじゃねぇか。たとえ片腕を無くしても俺は戦うぜ。」
そして、鳳は立ち上がり只野に刀を向けた。
「それが、過去の過ちを背負う今の俺の生き様だ!」
天の技・・・警剣部隊や刀を扱う剣士の中でも、限られた剣士しか扱うことができない技。扱える剣士は天才と言われるような者ばかりだ。他にも、瞬舞の技というのは天の技の一つ下の階級だ。扱うだけでどれだけの剣士かというのも分かる。




