39話 無意識な友情
「お前、さっきなんで俺の攻撃が当たらなかった。」
「そのままだろ? そういう能力だ。後々分かる事だし、親切に教えてやったんだ、戦いやすいだろ?」
「ふんっ、その能力を使えないと勝てないってか? 男なら拳と拳で勝負しようや。」
「初めからそのつもりだ。」
後藤は右手にダイヤモンドの結晶を、田中は右腕から大量の骨を出し、まるで拳のような形になった。
「俺のダイヤモンドが骨なんかに砕けるわけがねぇ!」
2人はお互いの拳を打ち付け合ったが一瞬で後藤のダイヤモンドが砕けた。その反動で後藤の右腕の何ヶ所からは血が吹き出してきた。
『バキーンッ!』
「ぐっ、ダイヤモンドが砕けた!?」
後藤はそのまま弾き飛ばされてしまった。
「ほほぅ、俺の骨にここまでヒビを入れた奴は初めてだ。んまぁ大した傷じゃないけどな。」
「はぁはぁはぁ……あんだけ本気で殴って与えた傷があれだけかよ……右腕も1発でもこの有様だしな。」
後藤の右腕は紫色に変色していて、腕からは血が流れている。
「もう1発で終わりだ!」
田中はまた骨で覆われた大きな右腕で後藤を殴るが、貫通ですり抜けた。
「それを使うって事は自分の弱さを認めてるって事だろ? 俺に拳じゃ適わねぇって事だろ!?」
『はぁはぁ……俺が弱い? んまぁ、1発食らっただけで腕が折れちまって何もできねぇ俺は、確かに弱いかもしんねぇな。自分で蓮に任せろなんて言っといて情けねぇな。』
「そういう事言ってるって事は、貫通の時は俺に勝てねぇって事だよな? 」
「弱者が調子に乗るな。本部のエージェントがこの程度じゃあ、日本の警察も終わりだな。」
すると、後藤はボロボロの右腕にまたダイヤモンドを集めた。
「いいさ、弱者は弱者なりに成長するからよ!」
後藤は田中に向かって全力で走り出した。
「アルファマインド! 貫通!」
「またその技か!」
後藤と田中はまた拳を打ち付け合おうとしたが、後藤の拳は田中の骨をすり抜け、そのまま回転した。
「こいつ、なにをしてんだ!?」
回転すると後藤の左肘が田中の顔面に近ずいた。左肘にはダイヤモンドが敷き詰められていた。
『バキンッ!』
左肘が田中の顔面に直撃し、体勢を崩した。
「このまま、押し切る! 金剛石破壊!」
後藤は血を吹き出しながら金剛石破壊を田中の胸元に叩き込んだ。だが、右腕に力が入らず、そこまでのダメージを与える事はできなかった。
「こんな生ぬるい攻撃しやがって……」
「っ!?」
田中の胸元はあばら骨から飛び出した骨に覆われ、後藤の金剛石破壊をいとも簡単に防いでしまった。
「俺はな、自分の筋肉や脂質を少量消費して膨大な量のカルシウムを作り出す事が出来るんだ。まだまだここからだぜ!」
すると、あばら骨の1本が後藤の右肩を貫き後ろの木まで貫通していった。すぐさま後藤は貫通でその骨をすり抜け、肩を抑えて後ろへ下がった。
「やばい、もう右腕は上がらないし使えない……」
ふと田中を見ると身体中から骨を飛び出していた。そらは手足や胴体、顔にも覆いかぶさった。
「これが俺の最強の矛であり最強の盾でもある骨の鎧だ。これを破った奴はまだいねぇんだ。」
「こりゃあマジでやべぇな。ただでさえあんなに硬ぇのに、あれが全身に纏ってたら勝ち目はないな。」
田中は後藤に向かって走ってきた。鎧を纏っている今のスピードはさっきの姿よりも断然速い。
「っ!? 速い! アルファマインド! 貫通!」
田中は拳を振るうが後藤の身体をすり抜けた。
「またその技か。そろそろ体力も持たないんじゃないか?」
「はぁはぁはぁはぁ……もう気づかれてんのか。」
『貫通はあと使えて4回、それを使えばアルファマインドは当分停止しちまう。そうなれば確実に殺される。だが、あいつのスピードなら左目だけでも俺のスピードの方がまだ速い。貫通を使わずにスピード勝負だ!』
後藤は右腕じゃあ力が弱いので左腕にダイヤモンドを固めた。そして田中の胴体の骨を一発一発移動しながら攻撃していった。
「何やってんだこいつは。」
「くそっ、やっぱ硬ぇな。時間がかかりそうだ。」
田中はアルファマインドのスピードには着いていけず、後藤に振り回されていた。
「ちょこまかと攻撃してきやがって。」
すると、胴体の一部にヒビが入った。
『この勢いだ! もう一発!』
『ドギャッ!』
後藤は急いでしまい、もう一発殴ろうとした所を狙われ腹を思い切り殴られてしまった。
「はっはっはっはっは! 欲をかいたな!」
後藤は吐血しながら殴り飛ばされた。
「俺、なんでこんな所でこんなことしてんだろ……知らない奴と戦って、あばら骨と鎖骨を折られて……」
その時、後藤の頭には皆の姿が写った。
「あ、そうか、仲間のために戦ってたのか。俺、無意識に仲間のために戦ってたのか……」
後藤はゆっくり立ち上がり、田中の方へ向かった。
『俺はずっと1人だった。一生1人で生きていくんだと思っていた。でも、この世界に入って、蓮に会って、気付かされた! 1人で生きていける人間なんていないんだとな!』
「親父、おふくろ、俺、無意識に仲間のために戦えるようになったぞ!」
左手にダイヤモンドを集中させた。
「フルパワーだ! 金剛石破壊!」
「お前がどれだけ俺の前だと無力か教えてやろう!」
田中は抵抗をするのを止め、自ら胴体の部分を差し出した。
『バキーンッ!』「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
ダイヤモンドは砕け、左腕の指と手首が折れ曲がり、筋肉からは血が吹き出した。だが、大きくヒビが入った。
「最後の最後でここまでヒビを入れたか。殺すには惜しいが、ここで死ね!」
そう言うと田中は右腕を上げた。だが田中の目に写ったのは後藤のダイヤモンドに覆われているボロボロの右腕だった。
「右腕があること、忘れてんぜ! 金剛石破壊!」
『バギーンッ!』「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
後藤の右腕の骨が割れ折れてしまった。だが、胴体の部分の骨の部分を破壊した。
「骨の鎧を破壊しただと!?」
「くそっ、ここまでかよ、もう動けない……すまねぇ、皆、俺、ダメだ……」
後藤は地面に倒れてしまった。それを見て田中は胴体を破壊されたまま右腕を下ろそうとした。
「少しビックリしたが、すぐ楽にしてやる!」
「天鳥の技・小啄木鳥!」
田中は気づくと、むき出しになった胴体が切られていた。
「まだ、いたのか……」
「心臓を切り刻んだんだ。最後の言葉がそんな言葉でいいのか?」
田中は目を見開いたまま倒れた。後藤は微かに開いた目でその男を見上げた。
「お、鳳……」
「皆速すぎて追いつけなかったぜ。大丈夫か?」
「俺は大丈夫だ……この先に蓮がいる。早く行ってくれ!」
「近くのエージェント達に応援要請を送ったから、その人たちが助けにくる。その人達が来るまで死ぬんじゃねぇぞ!後は俺に任せろ!」
「ふっ、相変わらず調子いいな、クソ野郎。」
「その身体で喧嘩売るつもりか!? 今ならお前に勝てそうだな! はっはっはっはっは!」
鳳は笑いながら蓮の行った方向へ向かった。そして後藤も笑いながら静かに目を閉じた。
「余計な事しやがって……助かったぜ……」




