37話 繋がる気持ち
「さぁ、始めようぜ。」
「今度はウチがあんたを気絶させてやるよ。」
高倉は鉄を、清水さんは木々や石を浮かせた。
「ここには浮かせられる物がいっぱいある。鉄しか操作出来ないアンタはこの場所を選んだのが失敗だったな。」
「その言葉、そのまま返してやる。」
高倉は大きな鉄の塊を分散させた。それも大量な数だ。その分散させた鉄を細い針の形をさせて清水の周りに着けた。
「この量。どう避けられるかな!」
高倉はその鉄を全て清水さんへ放った。すると清水さんは自分の周りに木や石を固めガードした。そこにたくさんの鉄の針が刺さる。
「舐めるなよ!」
「っ!? 下か!」
『グサグサッ!』
「ああぁ!! な、なんで下から!? 最初から地面にあったのか!?」
すると清水さんの周りの木や石が崩れていく。清水さんの体には鉄の針が刺さっている。地面に手を着いた時に気づいた。
「っ!? 砂鉄!?」
「おぉ、気づいたか! ここには大量の砂鉄が引いてある。それは俺が仕込んだ物だ。だから言ったろ? その言葉そのまま返すと。」
「くそっ、ここはウチに任せろって……いきなりピンチじゃねぇか。カッコつかねぇな……」
「ここで決着を着けてもいいんだぜ?」
「ふっ、まだまだ……」
清水さんはゆっくりと立ち上がった。
「なんか面倒そうだからすぐ終わらせるか。」
「……」
「血肉鉄線!」
すると清水さんに刺さっていた鉄の針が砂鉄に変わっていった。
「なんだ、ありがたいねぇ。動きやすくしてくれたのか?」
「違うね。まだ分かんないのか? お前は鉄が刺さった時点で死んでるんだよ。」
「はぁ? どういう事だ。」
「俺は鉄を自由に操る事ができる。そしてお前の体に刺さった鉄のを砂鉄に変えた。」
「まさかっ……そんな!」
「そうだよ! もう既にお前の身体の中に砂鉄が入り込んでいるんだ! それは血管を通り周り回って心臓にたどり着く。さぁ、この後は俺がどうするかだが……」
「なんて事を……」
清水さんは完全に"死"というものを目の当たりにしていた。
「なら、心臓にたどり着くまでにアンタを殺すまでだ!」
清水さんはまた木や石を持ち上げ高倉に投げた。
「こんなヤケクソな。バカがやる事だ。」
それでも清水さんは投げ続けた。
「鬱陶しいんだよ! 鉄鑫人身!」
高倉は鉄で10体の人の形を造った。その10体が清水さんに襲いかかる。
「ウチに出来るか……」
清水さんは両手を合わせ静かに目を閉じた。すると目、鼻、口から血が出てきた。
『あの女、何をするつもりだ。』
『成功してくれっ……』
「超重力波!」
すると清水さんから歪んだ空間が発生した。それは30メートル程まで届いていた。その瞬間……
『ズドンッ!』
「くぅぅ! なんだこれは! 体がとてつもなく重い!」
「はぁはぁはぁはぁ……どこまで持つか……」
清水さんから半径30メートルの場所の重力が通常の16倍程の重さになった。生えている木は地面にめり込み、高倉が出した人型の鉄も倒れていった。高倉の手足からは血が吹き出していた。
「くっそぉぉ、だが、ここからどうするんだ!? お前も全く動けていないじゃないか!」
「このまま押しつぶす! ……あれ?」
すると超重力波の効果が無くなってしまった。
「今だ!」
『ゴーンッ!』
人型の鉄が立ち上がり清水さんを強く殴り飛ばし、地面に大きく叩きつけられ気が遠くなった。
…………
『萌香ちゃん……』『萌香ちゃん……』
『ん? これは癒の声……』
『萌香ちゃん……』『萌香ちゃん……』『萌香ちゃん!』
「はっ!」
清水さんはふと目を覚ました。
「はぁはぁ……おい女、また俺に気絶させられていたろ?30秒くらい動いていなかったぞ?」
清水さんはゆっくり立ち上がり、胸元に手を当てた。
「だから、今度はウチがあんたを気絶させるって、何回言えば分かる。クソ野郎。」
清水さんはヨレヨレと歩きながら高倉へ近づいた。
『さっきの超重力波で体力が……まだ瑛斗さんのようには出来ないか……』
「残念だが、そろそろ時間だ。」
『超重力技を使える回数はあと1回くらいだろう。これを使えば当分は動けなくなってしまうが、そんなこと言っている時間もない……このまま突破する!』
「やれ!っ!! あぁ! 手足が折れてやがる。」
10体の人型の鉄が動きが遅いが襲いかかる。
「邪魔だ!」
清水さんは10体を持ち上げて右側へ全て吹き飛ばし、高倉の上へと高倉飛び、拳を握りしめた。
「すぐに決着が着いたな!」
「ふっ、確かにな……時間切れだ。」
「っ!!」
「死ねぇぇぇ!! 砂鉄凝固!」
『グチャッ!』
清水さんの胸元の中から砂鉄の棒が飛び出し貫通した。
「ぐはぁっ!」
『やばい、気が遠くなってくる……目の前が……真っ暗に……』
清水さんは大量に吐血しながら空中で静かに目を閉じた。
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「癒! お前好きな人とかっているのか!?」
「えっ!? なんで急に……」
「いいじゃないか! ウチら、なんでも言える仲だろ!?」
「じゃあ、私が教えたら萌香ちゃんも教えてくれる?」
「あぁ! いいよ!」
「私ね……実はね……」
癒はとても顔を赤くした。
「小原君が……」
「えぇぇぇ!? お前まじかよ! あんまり趣味良くねぇな! なんで小原なんだ!?」
「寮の時から気になってたんだけど……小原君は仲間を作る力っていうか……小原君のいる所に人が集まるっていうか……しかも、あんな強い後藤君にも勝っちゃうし……人との繋がりを作る力がある気がするんだよね……」
「なるほどなぁ。確かにそんな気もするなぁ。」
「萌香ちゃん。私言ったよ? 次は萌香ちゃんが言う番だよ!」
「ほぉ、そうだな! ウチは、癒が好きだ!」
「え!?」
「いや、そういう意味じゃねぇよ! 友達としてだ! なんか、お前には笑っていてほしい。お前の笑顔にはいつも救われるんだ。お前には、そんな力がある!」
清水さんは笑顔で癒にそう伝えた。
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『そう、だから、ウチが癒を、癒の笑顔を守るんだ!』
清水さんは目を覚ました。
「なんでだ! 心臓を貫いて即死のはずだ! っ!? 砂鉄の位置が心臓の少し上だ! あの時か!」
清水さんは1回気絶していた時に地面にたまたまマグネットが落ちていた。それを胸元に当てて砂鉄をその場所に止めていたのだ。
「まずいっ! 手足が折れて移動できない!」
清水さんは握っていた拳に超重力を貯めた。
「めちゃくちゃ重くしてやる! ぐっ!」
清水さんは最大質力にし、支えるための腕の筋肉が裂けた。
「ちょっとまて! あの女が欲しいのはNo.6なんだ! あんな女なんか俺は欲しくない!」
「アンタらなんかに、癒の笑顔を奪われてたまるかぁ!!」
その拳を高倉目掛けて放った。
『ズドーーンッ!グシャッ!』
清水さんは高倉を上から殴ると、地面が大きく陥没し、清水さんの右腕の骨は潰れた。その地響きは俺たちにも聞こえていた。
『ズドーーンッ』
「清水さんの方から聞こえたぞ!?」
「清水の奴、やられてないといいけどな。」
清水さんは血を流し、右腕をブラブラさせながら陥没した地面から這い上がってきた。そして左手で胸元を貫通している鉄の棒を引き抜いた。
『グチャ!』「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
胸元から大量に出血し、鉄の棒を投げ捨て仰向けに倒れ込んだ。
「今日の空も、ホントに綺麗だな。空はウチのこんな醜い姿を見ても、なんでそこまで綺麗な眼差しで見ていてくれるんだ? 本当に温かいよ……」
清水さんは眩しい空を見た後、静かに目を閉じた。
『蓮、癒を頼んだ……』




