35話 秘められた思い
その日は室田署長はたまたま大阪警察署本部にいて合流する事は出来なかった。そして、守護警部5人の中でも1番年上の特別守護部隊隊長の岩田さんが本部の全エージェントを集めた。
「今回の事件で、特別守護部隊6名の死亡。及び特別医療部隊の安斎 癒が誘拐されてしまった。これはエージェントにとっても、一般市民にとっても非常に危険な状態だ。だからと言って仲間を見捨てる訳にはいかない。今回は部隊別関係ない。見つけ次第連絡をし、全力で捜索に当たってくれ!」
「はい!」
「よし、俺らも行くぞ。」
こうして本部エージェントは東京都全域でNo.6と他4人の捜索が始まった。俺は山ちゃん、後藤、鳳、清水さんと一緒に捜索をすることにした。
「俺は前にNo.6を見た時は国分寺にいたんだ。」
「そういえば、三井さんがNo.6とやりやったのも国分寺だったよな?」
「あぁ、そうだ。でも三井さんがあそこまでやられるってなると、相当きついな。」
「それに、No.6以外の脱獄者だって強いはずよ。特に只野 武蔵という刀使いがNo.4の一番弟子なだけあって強いはずだ。鳳は知っているか?」
「あぁ、知っているさ。警剣部隊なら皆知っていると思う。あまりの強さだからウチの隊長の刀和さんしか勝てなかった。今の一番弟子は登坂という男らしい。」
「俺、登坂とやりあったぞ?」
「本当か? 蓮。」
「うん、俺はすぐやられちまったから良く見てないけど、立川エージェント全員やられちまった。あの人達がやられるなんて相当な強さだ。」
「マジかよ! 1回手合わせしてみてぇな!」
「今はとりあえず癒だ。先を急ごう。」
一方その頃、No.6のアジトでは……
「おい、起きろ。起きろ。」
体術使いの28番、田中が癒の頬を何回か軽く叩くと癒は目を覚ました。
「きゃーーーーっ!」
田中は癒の口を塞いだ。
「叫ぶな。殺しはしねぇ。望月さん、起きましたぜ。」
「やっと起きたか……今川がちゃんと役目を果たしていればこんなに苦労しなくて済んだのによぉ。」
そこはとても静かな場所で望月が癒に近づく足音だけが響き渡った。
「お前は安斎家の人間だな。なら知ってるよな? 寿の技・寿命転生のことを。」
「っ!? 知りません……そんなの……」
『パシンッ!』「きゃーっ!」
望月は癒の頬を殴った。
「てめぇ、殺されてぇのか? 早く俺にその技をやれよ。」
癒は恐怖のあまり目に涙を浮かべた。
「あぁあ、女ってのは扱いが難しいなぁ。まぁ、時間はある。ここにも慣れさせなきゃいけないしな。3日だ。3日後にその技を俺に施せ。いいな。」
そういうとNo.6は闇へと消えていった。
「おい、お前を部屋へと連れていく。そこに3日間いろ。」
癒は田中に部屋へ連れていかれてしまった。部屋の中は薄暗く肌寒い所で、床や壁にはカビも生えていて女性がいるには最悪の場所だ。
「小原君……」
5人はその日、国分寺市をありったけ探したが、手がかりが一切見つからなかった。
「なんか、ここにはいない気がしてきた。」
「なんでだ?」
「よくよく考えると前にここにいたならエージェントがここを捜索する事なんか分かるはずだ。きっとまた見つからない場所に逃げたんだ。」
『確かに、山ちゃんの言う通りだ。でも、どうやって……』
「なら、ウチに任せな。」
「清水さん。任せろって良い方法があるのか?」
「この方法は時間がかかるから避けたかったんだが、ここにいなかった以上こうするしかない。1回本部へ戻ろう。」
「え!? まじかよ! なんでだよ!」
「最後の手がかり自体が新宿本部だ。そこからやるしかない。そもそもはウチが癒を守れなかったんだ。本気でやらせてくれないか。」
「あぁ、いいぜ。」
他の4人は清水さんの熱意を信じ、新宿本部へ戻った。本部に戻った頃には日は暮れている。
「もう夜になっちまったな……」
「いいや、夜の方が動きやすい。さぁ、始めるよ。」
『パンッ!』
清水さんは両手を合わせ目を瞑った。
「回路侵入!」
清水さんの息が荒くなり、鼻血も出てきた。
「おいおい、大丈夫か!?」
その瞬間清水さんは目を開いた。
「っ!? はぁはぁはぁ……」
「おい、何したんだ!?」
「ウチから半径1キロの防犯カメラ全てをハッキングした。この能力は脳が活性化されて血流の循環がおかしくなるんだ。はぁはぁ……」
「あんまり無理すんなよ!?」
「あぁ、奴らはこっちに逃げたぞ。」
5人は走ってその方向に向かった。そして清水さんは回路侵入を使いながら癒を追った。
「次は左だ!」「次は右!」「このまま真っ直ぐ!」
「ペース落とした方がいいんじゃねえか!?」
「いいや、まだやるさ!っ!?」
『バタンッ!』
「清水さん!」
清水さんは倒れてしまった。
「ちょっと無理しすぎだぞ。」
「いいや、まだ……っ!?」
今度は額に手を付き壁によりかかった。
「一旦休もう。今日1日探し回ってる。皆も疲れてるだろうし、清水さんは能力使いすぎだ。」
「すまない……」
俺は清水さんが癒が誘拐された事にとても責任感を感じているんだと思っている。俺たちはその日の晩、稲城市の森林の中で休むことにした。
「清水さん、安斎は仲間だから助けるのは当たり前だけど、でもそこまで無理しなくても……」
「癒は寮時代からの親友なんだ。蓮、お前も知ってるだろ? ウチと癒がずっと一緒にいたの。癒はウチにとって、初めて親友って呼べる存在になってくれたんだ。癒もウチに心を開いてくれている。お互い秘密事を教え合える仲でもあったんだ。」
「じゃあ清水さん、安斎家の事も?」
「あぁ、知ってるさ。それで狙われる存在っていうのも知っていた。だからウチが守らないといけなかったんだ。」
「そこまで自分を責めなくても……」
「これはウチが勝手に言っているだけだ。気にしないでくれ。あと、そんな秘密を言い合える中だからこそ言えることもある。」
「ん?」
「"癒はお前を待っている"。」
「……それは、どういう……」
「いいや、あまり気にするな。癒はウチらが助けに来ることを信じているからな。それに応えて上げたいってだけだ。」
「なるほどな。大丈夫だ。俺は絶対連れ戻すからな。」
「もう遅い時間だ。ゆっくり休養を取ろう。」
「あぁ、そうだな。」
夜も深け、辺りは鈴虫の鳴き声だけが聞こえるくらい静かになり、5人は明日に向けて休養を取った。
時刻は午前7時、5人は各々捜索の準備を始めていた。
「よし、出来れば今日中、遅くても明日には見つけ出したい。清水を中心に良く周りを見て捜索に当たろう。」
「おぅ!」
「じゃあ清水、よろしくな。」
「あぁ、とりあえず回路侵入をする為に昨日追った所までの市街地へ出よう。」
5人は市街地へと出た。市街地では一般市民や通学の学生などの人が見えてきた。
「一般市民も見えてきたから早く進もう。回路侵入!
こっちだ。急ごう!」
5人は清水さんに指定された方へ進んだ。
『待ってろよ、"癒"』




