33話 追憶
「すみません、このホールケーキを誕生日ケーキで予約したいんですけど! 名前は癒 (いやし)でお願いします!」
俺は新宿のケーキ屋さんで癒の誕生日ケーキを予約した。それから誕生日プレゼントを買いに行った。
「こんなパーカーいいなぁ。」
俺はパーカーを来た癒の姿を想像してしまった。
『やっば、可愛っ!』
「これにするか!」
俺は誕生日プレゼントのパーカーを購入して新宿本部部署の寮へ帰っていった。すると俺の部屋にまた皆がいた。
「げっ! なんで毎回俺の部屋にいるんだよ! 騒がしいな! 山ちゃんは同部屋だから仕方ないとして、他の奴らはいる必要あるか!?」
「そんなに俺たちがいるのが嫌なのか!? はっはっはっはっは!」
「ちげぇよ! 前回なんてお菓子のゴミは片付けない、ペットボトルの飲みかけもそのまま! 全部俺と山ちゃんで処理したんだからな! 特に鳳! お前が1番酷かった!」
「そんくらい気にしないでくれよ! そんで、癒の誕生日ケーキ予約したんだろうな?」
「もちろんだ! ちょーでっけぇのにしたんだ! それなりの値段もしたんだし後で割り勘な!」
「その袋は誕生日プレゼントか? 何買ったんだよ?」
「ぎくーっ! これは安斎さんに直接上げる誕生日プレゼントだ! お前らには見せねぇよ!」
その日はまた俺と山ちゃんの部屋で集まり色んな話しをした。もちろん、部屋は汚くなった。癒は特別医療部隊隊長であり、母である治美と実家へ帰っていた。そして癒の誕生日当日の夜が来た。
「皆、準備は出来てるな!」
「おう!」
「じゃあ入ってもいいぞ!」
俺は部屋の外にいる癒に声をかけ、ドアを開けて清水さんと一緒に入ってきた。
「誕生日おめでとー!」
『パンッ! パンッ! パンッ! パンッ!』
部屋ではクラッカーの音が鳴り響いた。癒はとても照れくさそうな顔をして赤面していた。
「皆さん、ありがとうございます。」
すると鳳が前へ出てきた。
「今日は癒の誕生日だ! 俺が一緒の思い出にしてやるよ!」
鳳は右手を癒しの方へ向け、頭を下げた。
「俺と付き合ってください!」
「お、お前! な、何言ってんだ! 安斎さんはな、誰のものでもないんだぞ! み、皆のものなんだぞ!」
「蓮、お前こそ何言ってんだ?」
俺は鳳のこの発言にビックリして思わず変なことを口にしてしまった。すると癒は……
「ご、ごめんなさい……」
鳳はその体制のまま岩の様にカチカチに固まってしまった。
「よっしゃー! ざまぁ見やがれってんだ!」
「んまぁとりあえず、ちゃんとパーティーやろ!」
というと山ちゃんと後藤が部屋の冷蔵庫にあった大きな誕生日ケーキを持ってきてくれた。
「おぉ、結構デカイな。」
俺はこの光景を見て6歳の頃の記憶が蘇った。あの事件が起こる前の、あの記憶が……
「蓮、ロウソク付けたら部屋を暗くしてくれ!」
「お、おう。」
「そうだ、鳳、お前火の属性だろ? 火をつけてくれよ!」
「俺はそれどころじゃないんだ……」
鳳は癒に振られたショックで部屋の隅で体育座りをしていた。すると清水さんが口を開いた。
「なんだよ情けないな。これだから男は使えないんだ。」
清水さんは用意していたライターでロウソクに火をつけた。
「蓮、いいぞ!」
俺は部屋の電気を消した。部屋は真っ暗でロウソクの火がとても綺麗だった。そして俺はまたあの日の事を思い出していた。
『あの頃は、本当に幸せだったな……』
癒が火を消すと部屋は真っ暗になった。その感じは、あの時と全く同じ。綺麗な景色から何も見えない真っ暗な景色に変わった。幸せが地獄に変わった時のように……
「蓮、何やってんだ。早く電気付けろよ。」
「あ、わりぃ。」
『パチッ』
電気を付けると皆がいた。その瞬間ホッとした気分になった。
「何ボーッとしてんだよ。」
「あぁ、わりぃ!」
その後、皆でケーキを分け合って話しをしながら食べた。俺はこの時も考えさせられる事があった。
『あぁ、楽しいな。あの時も、"アレ"が無かったらこんな幸せな時間を過ごせていたんだ……。父さん……兄さん……』
俺は無意識で涙を浮かべていた。
「え、蓮、なんで泣いてんの?」
「あれ? ほんとだ! なんで俺泣いてんだ? はっはっは!」
俺はこの時笑って誤魔化していたが、癒は心配そうな眼差しでこちらを見ていた。
「そうだ! 皆プレゼントを買ったんだ!」
「え、そこまでしてくれなくても……」
「いいんだよ! じゃあ皆で出し合うか!」
「え!? 見せるのか!?」
「当たり前だろ? 皆がどんなセンスしてるのか気になるしな!」
各々、癒の為に買ったプレゼントを出し始めた。俺は皆が出すのを伺っていた。そして分析をした。
『このプレゼントで癒の心を掴むと言っても過言ではない! 山ちゃんはイケメンだけど、真面目だからきっとつまらない物しか買わないだろう! 後藤は女に好かれるタイプじゃねえな! 鳳も顔はカッコイイけど振られたばかりだから大丈夫! 清水はそもそも女だ! なら俺が1番好感を持てるだろう!』
そして皆プレゼントを出しあった。
まず、清水さんは化粧品セットを買っていた。
『女の子はこういうの買うよな!』
山ちゃんは健康食品の詰め合わせ。
『やっぱ山ちゃんはつまんねぇー!』
後藤はレディースのキャップ。
『意外とセンスあるんだな……』
鳳は……
「どうだ! ネックレスだ! しかも俺とペアルック!
さぁ! 俺と付き合ってくれ!」
「ほ、本当にごめんなさい……」
「がーーんっ!」
『うわぁ、付き合う前提でこんなの買ってんの!あいつ本当に馬鹿だな!』
そして最後の俺は買ったパーカーを出した。
「はい! 安斎さんに似合うと思って!」
癒はパーカーを受け取った。
「蓮、お前それはセンスねぇな!」
「ネックレスのお前に言われたくねぇよ!」
その場は笑いと幸せな空間で溢れていた。
「皆さん、プレゼントまでくれて、本当にありがとう。」
「いや、いいんだよ! 俺たちがしたくてやったことなんだ! 気にすんな!」
そしてパーティーも終え、各自自分の部屋に帰ろうとしていた。
「おい! ちゃんと片付けて帰れよな!」
「分かってるよ。あれ、鳳は?」
皆が片付けている隙に鳳は片付けてをすっぽかして部屋へ帰ってしまった。
「鳳の野郎! 次会ったら覚えておけ!」
「はっはっはっはっは!」
本当に笑いの耐えな1日だった。癒の誕生日だったけど、俺まで幸せな気分になった。そして癒の微笑んでいる顔を見るだけで、何故か自分もその笑顔に救われていた。
「じゃあな! おやすみ!」
「おやすみ!」
夜も更け、ベットに入るとまたあの時の事を思い出していた。何度も、何度も。
『なんでだろう。今日はやけにあの時のことを思い出しちゃうな。』
そして眠りに付くと俺は夢を見た。
「ハッピーバースデートゥーユー」
『あれ、これは6歳の時の……』
俺は夢の中であの時の光景を見ていた。まだ小さかった俺。若かった母さん。生きている父さんと兄さん。
すると、あの時のように光が差し込んだ。
「うわっ!」
そして、辺りが真っ暗になった。そこは何も無い世界。
「ここは……」
すると奥から誰かが歩いてくる。
「誰だ!」
返事はなく、無言でこちらへ歩いてきている姿はとても不気味だった。逃げても逃げてもどんどん近ずいてきている。そしてついに俺の目の前まで来た。そいつは男で黒い服を来ていた。
『な、なんだコイツは。外国人か? 刺青みたいなのが入っている。っ!?』
するとその男の目は真っ黒だった。その目は本当に不気味で恐怖すら感じた。
「なんだよコイツ! 目が真っ黒だ!」
俺は腰を抜かしてしまい、俺の目に手を出てきた。
勝手にアルファマインドも発動している。
「あれ、なんで!?」
「その目を……よこせ!!」
『グシャ!』
無理矢理に指を突っ込んで俺の目を取ってしまった。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
「蓮! どうしたんだ! 蓮!」
気づくと相部屋の山ちゃんが俺の肩を掴み起こしてくれた。
俺は一気に身体の力が抜けた。
「はぁはぁはぁ……」
「嫌な夢でも見たのか?」
「あぁ、すまねぇな。山ちゃん起こしちまった。」
「いや、いいんだ。蓮もまだ疲れてるんだ。ゆっくり休め。」
そういうと山ちゃんは自分のベットに戻っていった。そして俺も1つの疑問が残った。
「あれは一体、何だったんだ……」




