32話 新署長就任
今回今川が逃がした4人の囚人は無事に確保されていた。
そのうちの1人は、同期の鳳が捉えたという。今川の死体は後日火葬される予定だ。そして室田前署長は本部の各部隊の隊長を集め、今回の今川のことを話した。
「そういうことでしたか。私は今川さん直属の部下だったのでとても残念です。」
「まさかあの今川さんが……」
金子さん以外の4人は残念そうな顔をしていた。
「今回わしがここに来たのはNo.1の情報が入ってな、本部の署長の補佐をしようとしたんだが、まさかこんな事になっていたとはな。」
「本当にすみません。室田さんにまで迷惑をかけてしまって。」
すると金子さんが口を開いた。
「じゃあ室田さんが署長に戻るということで!」
「おい! それは室田さんが決めることだ!」
「わしもそのつもりだ。」
「え!? 本当に大丈夫なんですか?」
「わしを老いぼれジジイだと思ってるのか!? まだまだ現役だぞ!?」
各隊長5人は室田さんが署長に戻る事は賛成だった。室田さんは元々信頼の熱い人だったので反対をする人など誰一人いなかったのだ。その話しは各部隊でも話され、新署長就任会が本部最上階で開かれた。
「皆さん、久方ぶりの人もいれば初めましての人もいると思います。私が新署長の室田 魁心だ。よろしくお願いします。」
「室田さんが帰ってきた!」
「これでひとまず安心だな!」
「犯罪件数が減るな!」
俺は周りの声からも室田さんへの信頼、憧れ、そして強さが伝わってきていた。
「最近はNo.1やNo.2の動きも見られる。私たちエージェントはこのような凶悪犯から一般市民を守らなくてはならない。全身全霊、ここにいる一人一人が自分のやるべき事を全うしよう!」
「はい!」
新署長就任会も終わり、各自自分の部署に戻る時、後ろから金子さんが声をかけた。
「おぉーい! 小原ぁー!」
「はい。なんでしょう。」
「俺と一緒に今から署長室に行くぞ。」
俺はそう言われると金子さんと一緒に署長室に向かった。今川とはまた違った緊張感が走った。
『トントンッ』
「失礼します。」
「おお、来たか! そこに座りなさい!」
俺と金子さんは署長のデスクの前に置いてあった椅子に座った。
「署長、彼が金のアルファマインドの小原 蓮です。」
「そうか、じゃあ1度見せてくれるか?」
「はい。」
緊張しながらも俺は身体の力を抜き、アルファマインドを発動させた。すると署長は目を見開いていた。
「おぉ、こりゃあ凄い! 死ぬまでに金のアルファマインドが見れるとはな! 長生きはするもんだ!」
「62歳じゃないですか!署長もまだまだこれからですよ!」
俺は緊張して全く話す事が出来なかった。
「小原、お前も分かっている通りその目は特別だ。これからはその目を狙う信じられないような能力を持った強い敵と戦わなければならない。」
「……」
「強くなれ。お前は皆から守られるべき存在だが、1人のエージェントだ。お前は人を、いや、この人類を守り抜き世界を変える力がある。そんな気がするんだ。」
「はい。」
「話しはそれだけだ。期待しているぞ。小原 蓮。」
俺と金子さんは署長室を後にした。あんな凄い人に期待をされた俺は今もまだ緊張が解けなく、手汗もかいていた。
「なんだ、お前緊張したのか?」
「いや、そりゃあ緊張しますよ! あの室田さんですよ!? しかもあんな事言われたら余計緊張しちゃいますよ!」
「でも、あれはガチだったぜ。」
「え!?」
「室田さんは本当にお前が世界を変える逸材だと思っているぞ。この世界は能力のせいで腐りかけている。それを変えるのは相当の事をしないといけないと思うけどな!はっはっはっはっは!」
『うわっ、出たよ。この人の他人任せな所。』
「でも、俺も期待してるぜ。一緒に頑張ろうな。」
「はい。」
俺は部屋に戻ると山ちゃん、後藤、鳳、清水さん、癒もいた。
「おいおいどうしたんだよ! こんなに皆揃って!」
「俺達5人は今回の件で今日から5日の休養をいただいたんだ。ケガもしたしな。」
「まじ? それは初めて聞いた!」
「あと、癒が言いたい事あるんだってさ!」
癒はいつもどうりモジモジしていた。
「あの……小原君……」
「ん?」『やべ、可愛い。』
「この前は……ありがとうね。」
「あぁ! それはいいんだ! 皆傷も癒えた事だし、気にすんなよ!」
癒は顔を真っ赤にしていた。それを見て俺も赤面してしまった。
『やばい! もしかして好感度上がっちゃった!?』
「でも癒って可愛いよな!」
「っ!?」
そう言ったのは鳳だった。すると清水さんはとてつもなく嫌な顔をしていた。
「アンタってさ、そういう所ありそうだよな! なんていうか、すぐ女に手を出す感じ!?」
「え、それってヤリチ……」
山ちゃんがアルファマインドを使い一瞬で鳳の口を閉ざし、小声で訴えかけた。
「癒は純粋なんだ。そういう言葉を使うのはやめろ……」
「お前アルファマインドの使い方あってる?」
俺は話しを逸らすかのように話題を変えた。
「あぁ! そう言えば鳳! お前囚人を1人捕まえたんだってな! すげぇな!」
「凶悪犯っていっても楽勝だったな。女の子ってのは強い男に引かれるんだ。癒、ちょっとは俺の事好きになった!?
もし良かったら今晩俺の部屋でエッ……」
次は咄嗟に後藤がアルファマインドを使って鳳の口を塞いで小さい声で訴えた。
「お前、さっきの意味が分かるか!? 次癒の前でそんなはしたない言葉使ったら殺す!」
「だからアルファマインド使い方あってる?」
「本当に男ってくだらないよなぁ。なぁ癒。」
「う、うん……」
「清水は顔は良いし体もエロいけど、性格が悪すぎるからダメなんだよ。今まで彼氏出来たことないでしょっ……」
清水さんは獣の様な目で鳳を睨みつけた。そして俺と山ちゃんと後藤は全員でこう思った。
『あ、こいつ死んだ……』
「ぎゃああああ!」
『ドカッ!バコッ!ズキャッ!バシンっ!』
気づくと鳳はボコボコにされていた。
「なあ山ちゃん、鳳ってこんなキャラなのか!?」
「あぁ。残念だが、こんなキャラだ。お調子者ってところだな。」
すると鳳をボコボコにして気分が良くなった清水さんはここに集まった意味を話し始めた。
「あ、そうだ! 3日後、癒の誕生日なんだ! 皆でお祝いしないか!」
「おぉ! いいね!」
すると癒は立ち上がった。
「いいや、大丈夫だよ。そんなこと……」
「いや、いいんだ! 楽しい思い出作ろうぜ!」
俺は癒が狙われてたのも知っていたし癒自身も分かっていると思う。今回の今川の件でもそうだった。今川の言い回しだとNo.6が癒を狙っているという感じにも聞こえた。そんな癒に少しでも楽しい思いをしてほしかったからこの誕生日パーティーは良い案だと思った。
「それじゃあ今から誕生日ケーキ予約しとかないとな!」
「おぉ! 頼んでいいのか?」
「任せろ!」
俺は誕生日ケーキを予約したり、他の皆も誕生日プレゼントを買ったり、各々癒の誕生日パーティーの準備を始めた。
室田 魁心
身長189センチ 体重80キロ
出身 東京都 墨田区 血液型 A型
30歳から30年間新宿エージェント部署署長を務めたエージェント界のレジェンド。歴代エージェントの中でも圧倒的な強さだが、未だNo.1には勝利したことがない。アメリカ最強のキングエージェントとも親しい仲だ。




