30話 大化神・迦具土神
「洗脳!」
俺の頭の中に何かが入ってきた様な気がした。
意識が遠のいていく。
『よし! 小原の身体を洗脳した! これで残りのゴミ共を……なんだここは……』
今川は明るい世界に入ってしまった。そこには何も無い雲の上で浮いているいるかのような感じだった。居心地も良く気持ち良い場所。
『今まで洗脳してきた中でこんな世界にはいる人間は初めてだ……』
すると何人もの人間が奥から寄ってくるのが見えた。何人もいて、その人達がこちらを見て通り過ぎて行く。顔の感じだと多国籍の人ばかりで、皆金色の目をしていた。
『なんだ!? アルファマインドか!? 』
最後の1人が通り過ぎると白い髭を生やした大きい老爺が目の前に現れた。その姿に今川は圧倒されていた。
『な、なんだこれは……まるで"神"だ……美しい……』
その大きい老爺は手で今川を掴もうとした。
「やめろぉ……やめてくれぇぇ!」
老爺は今川を握り潰した。その瞬間現実に戻ると……
『パンッ!』
その音で俺は目が覚めた。
「なにがあった……」
今川を見ると、右目から血が吹き出していた。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! 俺の右目が破裂したぁぁ!
痛ぇぇぇ! まだ3つ目の能力が発現してないのによぉぉ!」
他の人達も何が起きていたか分からなかった。
「山ちゃん、後藤、今なにがあった!?」
「分からない。だが、今川が蓮を洗脳したら急に目が破裂したんだ。」
「目が破裂したらあんな音すんのかよ。痛々しいな。」
今川はずっともがいていた。
『あいつのせいだ。小原 蓮。お前を洗脳しようとしたらこうなった。殺してやる。殺して目を奪い取ってやる。』
「くそがっ! 右目の能力が無くたって自力でテメェらを殺してやる! 俺の力で!」
今川は血が吹き出した目を抑えて立ち上がった。
すると、今川の周りから大量の炎のが舞い上がった。
「これが俺の力だ!」
30メートル級の炎の化身が現れた。
「性質覚醒!大化神・迦具土神!」
『グヴァァァ!』
鬼のような顔が3つ。腕が4本で、全ての腕に炎の刀を持っている。4人はただ見ることしか出来なかった。
癒は絶望感で腰を抜かし膝を地面に着いてしまった。
『こ、これが……性質覚醒……』
「はっはっはっはっは! これを見た者で生きてた奴はいない! これは性質覚醒だ。コイツは自分で意志をもっている。俺が殺意の意志を与えた。お前らを殺すまで暴れ続ける! やれ! 迦具土神!」
迦具土神は4本の刀を振り回した。
「この大きさでこんなに早く動けるのか!」
4人は腕1本を相手にするのがやっとだ。
清水さんは腕をエスパー能力で固定した。
『くそっ! ウチの全力で腕1本止めるのがやっとか……』
『ぐぐぐっ』
それでも腕が動き始める。
『だめだ! 力が強すぎる!』
4人の中で唯一アルファマインドを持っていない清水さんには厳しい状況だった。
刀が清水さんに降り掛かる。
『やばい! 死ぬ!』
『ズバーンッ!』
だが、俺が清水さんを抱え救出した。
「大丈夫か!? 清水さん!」
「あぁ、すまない!」
4人は一斉に距離を取った。
「どうする!? 俺達じゃあ絶対に勝てない!」
「そうだ蓮! あの化身を中止させる能力で消せないのか!?」
「さっきやった。でも、この能力は中止させられる規模に限界があるみたいなんだ。あれは流石に能力が強すぎて今の俺には中止出来ない。」
「じゃあどうするんだ!? 近づこうったって、あの化け物は刀を一振しただけであんなに地形が削れる。」
すると山ちゃんが言い出した。
「本体を狙おう。あの化け物と戦いつつ今川を狙うんだ。今川を倒せばきっとあの化け物も消えるかもしれない。」
「よし、やってみよう。」
「良い作戦は立てたんだろうなぁ!」
4人は走り出した。
「だが、無駄だ!」
迦具土神も4人に向かって走り出した。
「行くぞ!」
俺と山ちゃんは上へ、後藤と清水さんは下から向かった。
清水さんは後藤の後ろへ下がった。
「俺から行くぞ! 貫通!」
迦具土神は2本の腕の刀で後藤に攻撃するがすり抜ける。
迦具土神の顎の下に行くと右腕にダイヤモンドを固めた。
「金剛石破壊!」
『バキンッ!』
顎の下からめいいっぱい殴ったが上を向かせただけだった。
だがその上には俺と山ちゃんがいた。
「大氷柱!」
山ちゃんは大きな氷柱を作り迦具土神に突き刺そうとするが、刀で氷柱は真っ二つ。2つの氷柱は地面に落ちたように見えた。
「まだよ!」
清水さんは2つの氷柱を浮かせ、また迦具土神に突き刺そうとした。だが、顔が3つもあり死角が無く、残りの2つの手で止められてしまった。
「今だ! 小原! 正面ががら空きだ!」
俺は右腕に風を溜めた。アルファマインドも発動した。この時何故か分からないがその右手に込めた風は黄金に輝いていた。
「想いが強ければ繋がるんだ。そして命も。それを俺は、このエージェント・ポリスで学ぶことが出来た!
大風豪波!」
その黄金の風は皆の想いを乗せて迦具土神の腹を貫いた。
「今川ぁぁ!」
「ドカッ!」
俺は今川に飛びつき、顔面を思い切り殴った。
「なぜ貴方みたいな人がこんなことするんだ! なぜNo.6と繋がっている! なぜ癒が狙いなんだ!」
「質問が多いな。No.6には借りがあってな、安斎家の者が欲しいと言われたから差し出そうとしただけだ。それと、その程度の攻撃じゃあ迦具土神はやられんよ。」
すると迦具土神は立ち上がろうとしていた。穴の空いた腹もどんどん修復していく。
「くそっ! No.6に何の借りがあるんだ!」
「俺の憎き兄を殺してくれたんだ。ただそれだけだ。」
「え!? 意味が分からない。あんたの実の兄だろ!? なんで殺してそれが借りになるんだよ!」
「恵まれた環境で過ごし、平和ボケしたお前らに俺の何が分かる! 俺は地獄に生まれたのだ! 血統だ? 宿命だ? そんなもんに縛られて、生きた心地がしなかったね!」
俺は自然と拳を下ろしていた。
「迦具土神! こいつらを殺してしまえ!」
迦具土神はまた暴れだした。
「俺はお前らと戦っているつもりは無い。現実と戦っているんだ。この現実を見下ろせば見下ろすほど、この世界の闇の部分が見えてくる。お前も俺に同情したから拳を下ろしたんじゃないのか?」
「正直、何が正義で何が悪だかは分からない。でも、何の罪も無い人を巻き込んでしまうのは正義では無いのは分かる。だから、この迦具土神を止めてください。お願いします。もう仲間が死ぬのは見たくないんです。」
俺は額を地面に付けて土下座をした。
「嫌だね。もう後戻りできない。潰れた右目も貰う!」
「やっぱり気持ちは変わんないのかよ!」
『スパンッ!』
俺と今川は拳同士を打ち付けた。
「最後に教えてやろう! 1度拳を交えたら勝敗が決まるまで戦い続けろ!」
『今川は迦具土神を使ったことによって体力が少なくなっているはずだ!ここでたたみかけるしかない!』
「小原! 早くしてくれ!」
3人は自分の能力を最大限に使って迦具土神の攻撃から逃れていた。
『やばい! このままだと3人が持たない!』
「どこを見ている! 火神拳掌!」
今川の両腕が燃え上がった。
「くそっ! 風神の拳!」
お互いの拳を交え続けたが、やはり完成度で言うと今川の方が上だった。
『くっ、押されてるか……』
『ドカッ!』「ぐはっ!」
腹に1発食らってしまった。
「今だ! お前の右目を……」
『スバーーンッ!』
「なんだ!?」
見てみると迦具土神が倒れている。辺りには大量の水が流れ込んでいた。
「助かった。でも誰が……」
すると誰かがここへ歩いてきていた。
「なんだ、せっかく2年ぶりくらいに見に来たのに、こんな騒ぎになっているとはな。迦具土神まで出しおって。」
今川の目には信じられない光景が。
「む、室田前署長……」




