25話 署長の謎
「金子さん!」
「おぉ、小原! どうしたんだそんなに急いで!」
「ちょっと話し聞いてもらってもいいですか?」
俺は金子さんと会い、誰にも聞かれないように人影がないような場所へと移動した。
「金子さん、俺、もしかしたら変なことを言うかもしれないですけど……」
「多分、俺と同じこと考えてると思う。」
「え?」
「署長の事だろ? 俺も最近の異常事態の仕業は署長じゃないかと考えているんだ。で、なんでお前がそんな事を?」
「さっき署長室に呼ばれて、アルファマインドを見せてくれというか……能力はなんだ?とか……。とにかくいつもの署長と違くて、ただの思い込みかもしれませんが、怪しい感じもして……」
「なるほどな。実は俺は最近署長の行動を監視して見張ってるんだ。だが、まだ証拠となるものが見つからないんだ。この話しは三井にもした。三井も俺と一緒に署長を監視している。」
「俺はどうすれば?」
「大丈夫だ。お前はいつも通りに任務をこなせばいい。もしお前が狙われても俺か三井や他のエージェントが助けてくれる。特に三井はそんな簡単にやられるような奴じゃない。心配するな。」
俺は自分が基本的には狙われる立場だというのは分かっていた。だからこそこんなに心強いエージェント達がそばにいるから安心できた。俺はこの事を相部屋の山ちゃんとツーマンセルコンビの後藤にも俺の部屋で話しをした。
「なるほどな。そんな事があったのか。」
「でもよ、どうすりゃいいんだ? 金子さんや三井さんは隊長、副隊長だからまだ署長には近いかもしんねぇけど、俺たちが署長を探るのは難しいと思うぞ。」
「そこなんだよ。どうやって探ろうか困ってるんだ。」
とその時、外から大きな声が聞こえた。
「俺はホントに知らねぇんだ! 何もやってねぇよ!」
3人は様子を確かめようと部屋のドアを開けると、1人のエージェントが目の前を走っていった。
「誰か! アイツを止めろ!」
そう言ったのは特別守護部隊の岩田さんだった。俺は何かあったんだと思い、アルファマインドを発動して逃げていったエージェントを一瞬で地面に叩きつけ動きを止めた。
「おぉ、小原か、すまないな。
この野郎、手間掛けさせやがってよ!」
『ドンッ!』
「ぐはっ!」
そう言って岩田さんは取り押さえたエージェントを踏みつけた。
「助けてくれ! 俺は何もしていない!」
「お前いい加減にしろよ? さっきも言ったろ? お前が天厳収に入って囚人を解放しようとした所を見た奴がいると!」
「確かに俺は天厳収にいました!でもなんで天厳収にいたか分かんないです! 気づいたら追われてて、もうなんかめちゃくちゃで……」
「お前、流石に笑えねぇぞ。お前はやったんだ!そして一連の事件の犯人はお前で確定だな!」
「俺は知りません! ホントに知りません!」
俺はここで考えていた事との矛盾点が生じていた。
『おかしい。署長がこの異常事態の犯人だとしたら署長が捕まるはずなのに、なんで関係の無いエージェントが犯行を犯したんだ?』
それは俺だけでなく山ちゃんと後藤も思っていた事だった。
「よし、こいつを天厳収にぶち込んでやる!」
「なんでですか! 俺は何もしてないんだぁぁ!」
岩田さんと一緒にいたエージェントが犯行したエージェントを拘束し、天厳収へと向かっていった。
「すまないな小原、助かったよ。」
「ほんとにあの人天厳収に入れてしまうんですか?」
「ん? どうしてだ? あいつが犯人だからな。そりゃあそうだろ。」
「でもあの人はやってないって……」
「実際に見た者がいるのにか? それは明らかな証拠だ。これから署長にも報告する。犯人が見つかったってな。そして取り調べをする。他の脱獄犯の確認がまだできていないからな。」
そう言うと岩田さんは署長室に向かっていった。
俺達3人は異様な違和感を感じていた。
「なぁ、おかしくないか? あの人はやってないって言ってるし、ただそれだけの事だけど何か違うような気がするな。」
「俺も後藤と同じ事を考えた。実際に目撃した人もいるみたいだけど、あまり考えられない。蓮は? どう思う?」
「俺は……署長のアルファマインドを見たんだ。」
「何色だった?」
「赤だった。もしかしたら、署長の何らかの能力なのかもしれない。」
「能力だとしても何を考えられる? どんな能力でこんな異常事態が起きるんだよ。」
「それは分からない。でも、金子さんと三井さんが言うには署長は怪しい行動は取っていない。でも異常事態が起きている。もう能力の他ありえない。」
「なら、もう署長の仕業じゃないんじゃないか? 蓮は署長の事を疑い過ぎなんだよ。」
「確かにな。本部の署長だぞ? そもそもそんなことすると考えられるか?」
「それは……」
「他を当たるしかないな。」
「そうだな。」
2人は俺を置いて言ってしまった。だが、俺は署長以外には考えられなかった。署長室に呼ばれた時のいつもと違う雰囲気、口調、そしてあの目。完全に裏がある人の様だった。
『山ちゃんと後藤がダメなら俺1人でも……』
俺はそう思うしかなかった。
一方その頃、三井さんと他の総合格闘部隊員4人はNo.6を見かけた国分寺市で捜索を続けていた。
「三井さん、こっちもNo.6がいた形跡はありませんでした。」
「そうか……このまま捜索を続けてくれ……」
「はい。」
「そういえば、加藤が報告に来てないな。」
14時に国分寺市中央の位置で報告をする予定だったが、4人の内の1人、加藤隊員が報告に来ていなかった。
「おかしいな……加藤は時間を守る奴だがな……
確かあいつは西の方だったな……行くか……」
三井さんは加藤が捜索をしていた国分寺市西方面へ向かった。すると……
「あ゛あ゛あ゛あ゛!」
と声が聞こえた。それは確かに加藤の声で、三井さんは急いでそこへ向かった。その先は森林のある場所でその中から聞こえていた。するとある人物が加藤の髪を右手で掴んでいた。加藤は左肩から右脇腹まで切り裂かれていて、下半身はその後ろに落ちていて、辺りは血まみれだった。
「お前は……No.6!?」




