18話 短い習い
「今日からお前は本部のエージェントだ。」
「え!?」
そう言われた時、言っている意味が分からなかった。
今回のNo.2との戦いで1番何も出来なかったのは間違いなく俺なのに。
「今回お前が本部のエージェントになった理由はだな、んまぁ簡単に言うと本部が1番安全ということだ。
No.2が狙ったのはお前のアルファマインドだ。これからお前は数々の強者を相手にしなきゃいけなくなる。
その為に1番自分を高められるのは本部だ。」
「でも、立川でまだ何も……」
「立川は俺に任せろ。今回はこんなになっちまったけどな。俺たちを見縊ってんのか?」
「いいやそんな事は!」
「いづれはお前も、遅かれ早かれ本部に行く力は持っているからな。前向きに考えろ。あと、荷物あるから立川に行って荷物持ってけよ。本部は基本住み込みだからな。」
「はい。分かりました。」
俺は皆より軽傷で済んだので、早く退院出来た。
工藤さんは怪我は無く今も立川に務めている。
玉田さんと荒川さんも退院したが、鈴木さん、菅井さん、多田さんは重傷でまだ入院している。
俺が立川を出る時部署には3人しかいなかった。
「短い間でしたが、ありがとうございました。」
「本当に短かったな。半年くらいだったか?
んまぁ、本部で頑張れよ。あそこは世界が違く見えるはずだ。すげぇヤツらがいっぱいいるぜ。」
俺は立川の皆が大好きだったし尊敬していた。
ここを離れるのは寂しかった半面、本部でこんな自分が着いて行けるか心配だった。
「とりあえず、鈴木と菅井と多田にもちゃんと挨拶しとけよ。」
『俺はあの時、小原を助けて本当に良かった。
お前がエージェントの未来になってくれよ。』
「はい。今までありがとうございました。」
荒川さんと工藤さんと玉田さんは笑顔で送ってくれた。
そして俺は他の3人に会う為に病院に行った。
「今まで本当にありがとうございました。」
「頑張りなさいよ。」
「期待しているぞ。」
「また今度な。」
俺は包帯に巻かれた3人を見て、自分だけが本当に本部に行っていいのだろうかと考えた。
特に鈴木さんは左腕を無くしている。
あの時もっと出来る事があったんじゃないかと毎回考えさせられる。
「失礼します。」
俺は部屋を後にした。そして俺は家に帰る為に電車に乗り、家に着くと母さんがいた。
「蓮、本部に行って頑張ってね。今回の事はこれからの糧にしなさい。」
「うん。」
母さんの為にエージェントになったのに、いつまでたっても母さんに助けられてばかりだと思った。
俺は一晩で荷造りをし、翌日新宿本部へと向かった。
新宿本部へ着くととてつもない大きさの警察署だった。
「小原 蓮だね。」
「あ、はい今日から本部に配属となりま……」
そこには金子さんの姿があった。
「か、金子さん!?」
「おぉ、俺の名前知ってるのか!? なら話しは早いな!俺がお前の所属する総合格闘部隊の隊長、金子 亮平だ。よろしくな!」
「よろしくお願いします。立川の事件の時は災難だったな。とりあえず生きててよかったな。」
「はい。立川の皆さんのおかげで。」
金子は会った時からそうだが、エージェントと言うには少し馬鹿そうっていうか、それに隊長ってなると本当に疑いを持ってしまう程だった。
でも隊長というくらいだからとても強い人なんだと俺は自分に言い聞かせていた。
「よし、じゃあ今日からお前は俺の部下だ。これから本部の事を色々説明しながら部屋に行くぞ。」
「はい。よろしくお願いします。」
「本部には他の部署と違って設備が充実しているんだ。皆ここに住んでいるだからこれくらいの事はしてくれねぇと困るって話しだけどな!あぁっはっはっは!」
『やっぱりこの人バカそうだな……』
「本部には演習場、シャワー室、食堂、医療部隊の医療機関、そして出会いもある!」
「…………」
「おい、ここは笑う所だぞ?」
「あ、あはははは。」
俺は金子さんのそういうノリは嫌でも笑って乗り切ると心に決めた。
「そしてここがお前の部屋だ。1年目の寮と同じで2人部屋になっている。お前は1人だった山本と同じ部屋だ。」
「え、山本って……」
「そうか、山本とお前は同い年だったな。寮で話した事あるのか?」
「はい! 知り合いです!」
「なら心配いらねぇな! 山本は特殊格闘部隊だ。もうすぐ昼休憩で帰ってくるかもな。ほら! 来たぞ!」
「ん? 蓮じゃないか! どうしてここに!」
「やっぱり山ちゃんだったか! 俺、今日から本部のエージェントになったんだ!」
「そういう事か! あ、翔の事は残念だったな。」
「あいつは立派にやり遂げたんだ。俺たちに託してくれたんだ。きっと天国で見てくれてるよ。」
「そうだな。あいつの分まで俺達が頑張らないとな。
んまぁとりあえず相部屋だ! よろしくな!」
「よろしく! そういえば後藤もいたよな?
あいつは何してんだ?」
「あいつは総合格闘部隊で頑張ってる! でもあいつは仕事に運が無いんだ。まだ活躍が無いみたいなんだ。」
「そうなのか。」
「お二人さんは仲がいいみたいだし良かった。
それじゃあ俺は仕事があるから、またな!」
「金子さん、ありがとうございました!」
俺と山ちゃんは深く頭を下げた。
「山ちゃん、金子さんってどんな人なんだ?」
「一言で言うなら呑気な人だ。」
「やっぱりそうだったんだ。」
「でもあの人は蓮も知っていると思うが、総合格闘部隊の隊長だ。めちゃくちゃ強いらしいぞ。」
「じゃあもしかしたら署長になるかもしれないのか?」
「いいや、皆の中ではあの頭じゃ署長は無理って言われているよ。はっはっはっ!」
「そんなに馬鹿なのか?」
「あの人は本当にただ強いだけさ。あともう1つあって、昨年署長が変わったらしいんだ。それまで30年続けていた室田 魁心署長が退任して新しい署長に変わったんだ。だから当分は変わることは無いね。」
「へぇー、そうなのか。で、今の署長はどうなの?」
「今川 純一郎さんって人が署長になったんだ。元々特殊格闘部隊の隊長で俺達が寮に入る前の歳は記録的犯罪数だったろ? その過半数を今川さんが処理したんだ。その数は年間処理数は歴代断トツのNo.1の成績だった。」
「そんな凄い人がいるのかよ!」
「お前も今日から本部で働くんだから、今川署長に挨拶する機会があると思うからその時は失礼無いようにしろよ?」
「流石に本部の署長に失礼な事はしないさ!」
そして俺は部屋に入って荷物の整理をした。
すると1人のエージェントが俺を呼びに来た。
「おい、小原はいるか?」
「はい! 小原です!」
「おぉ! 鳳!」
「なんだ山本と同じ部屋か!」
「蓮、鳳は俺らと同い年のエージェントだ。警剣部隊のエージェントなんだ。」
「小原! よろしくな! 同い年だからタメ口でいいぞ!」
「よろしく鳳! 蓮でいいよ! それでどうしたんだ?」
「蓮、署長に挨拶に行くぞ。」
「署長に!?」
俺は一気に緊張感が走った。
本部の署長ということは日本で1番のエージェントということ。そんな人と会えるなんて光栄な事だと思った。
とても広い本部で10分は歩いたところでやっと署長室が見えてきた。
「ここが署長室だ。あとは1人でな。俺も入ったら緊張しちまうからな。」
鳳は苦笑いをしてそう言った。
「1人かよ……」
俺はそう言いながらもノックをして部屋に入った。
「失礼します。今日から本部に配属となりました。
小原 蓮と申します。よろしくおね……」
目の前に居たのは署長、だけでなく守護警部5人もいた。
その中には金子さんも居たがさっきと雰囲気が全く違う。
『やべっ……何だこの威圧感……心臓が潰されそうだ。これがトップのエージェント……』
「君が小原 蓮だね? 本部署長の今川 純一郎だ。よろしく。」
新宿警察署エージェント部署 「本部」
・・・この部署ではエージェント界のトップが揃う部署で将来有望なエージェントは新入隊員でも本部に配属される。もちろん新宿での犯罪件数は毎年日本で1番少ない。
日本でのエージェント部署のトップの階級は、新宿部署→大阪部署→名古屋部署→博多部署→仙台部署の順で、この5つを日本5大エージェント部署とも言われている。




