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14話 犠牲の代償

特別捜査及び警備強化運動が実施されてから2週間が経った。


「あれから何も起きませんね。」


工藤さんがこう言うと皆も頷いて同意していた。


「立川市内から出ていった可能性も高いな。34歳の勘だ。」


「またその話ですか。34歳の(くだり)はもういいです。」


荒川さんが何か言うと鈴木さんが言い返す。

何も無い日々が続いており、昔の平和だった時の様な会話が戻ってきていた。

すると1本の電話が……


「はい、こちら立川警察署エージェント部署の荒川です。はい、そうですか。分かりました。」


荒川さんは電話を切った。


「何かあったんですか?」


工藤さんが不思議に荒川さんに問いかけた。


「府中市で犠牲者が出た。しかもその犠牲者はエージェントらしい。応援要請が出ている。俺、菅井、小原は至急府中市に向かうぞ。」


「はい!」


その時俺は嫌な予感を感じていた。


『府中!? 待てよ、なんか嫌な感じがするな……』


3人はエージェント専用の車で府中市に向かった。

府中に着くと、人の姿は見られず、皆は外出を控えている様だった。まず事件現場に向かった。



「荒川さん、今回はどんな内容なんですか?」


「そうだな、前と同じ首が綺麗に切られちまったみたいだな。」


「え、エージェントがですか?」


「そうだ。さっきも言った通り被害者はエージェントだ。そして犯行は登坂で間違いないだろうな。」


荒川さんと俺でそう話していると犯行現場に着いた。


「立川警察署エージェント部署の者だ。応援要請でここへ来た。中に入らしてもらう。」


俺と荒川さんと工藤さんの3人は黄色いテープをくぐり、犠牲者の元へと行った。

辺りは血、そして水浸(みずびた)しになっていた。

そしてそこには首を切られた犠牲者のエージェントが寄りかかっていた。


「立川警察署エージェント部署の署長の荒川だ。この事件、そして犠牲者の詳細を教えてくれ。」


荒川さんが府中警察署エージェント部署の者に問いかけた。そして俺はその犠牲者がとても気になっていた。


「はい。犯行時刻は推定約3時間前、おそらく立川市でも目撃が確認された登坂の犯行と見て間違いないでしょう。エージェントの詳細についてですが……

名前は『高橋 翔』年齢23歳。今年からエージェントに配属された新人でした。

彼は正義感があり、エージェントとしての素質があったとても心強かった新人でした。本当に残念です。」


俺の勘は(するど)く的中してしまった。

府中市、エージェント、そして水、殺されたのは寮では相部屋、そして親友の翔だった。

俺は(ひざ)から崩れ落ちた。

何も考えることが出来ないし、そもそも信じられなかった。


「ま……待ってください……。首は……首は見つかったんですか?」


「首はもう回収した。間違いなく高橋 翔だったよ。」


俺は急に胸が苦しくなった。まるで誰かに心臓を握り潰されるような苦しさだった。

俺はそんな苦しさを吐き出そうと叫び声と悲しみの涙を大量に出した。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁ!」


荒川さんは年齢で俺の同期だと分かり、何も言わずに叫ばせてくれた。


「おぉ俺が……あ、あの夜に……ヤツを逃さなければ……こんな事にはならなかったぁぁ!

俺はなんて無力なんだぁぁ!

無力過ぎて……自分が(にく)いぃぃ!」


俺は地面を拳から血が出るほど殴り涙を流した。

そして翔の顔を思い浮かべていた。


翔はいつも一緒にいてくれて、困っている時は相談に乗ってくれた。分からないことは一緒に考えてくれた。嬉しい時は一緒に喜んでくれた。そして何より、そんな翔を心から信頼していた。


そんな事を思うともっと苦しくなる。死にそうなくらい苦しかった。その時俺は思ったことがある。


「絶対に……殺してやる……。

なんで翔が死ななきゃいけねぇんだ……。」


俺はアルファマインドを既にに発動していた。

凄まじい風圧を出してしまい現場が混乱している。


「あの子何してるんだ!」


俺は涙を浮かべながら高く飛び上がり登坂を探した。


「どこだぁ! どこに行ったぁ!」


建物の屋根に着地すると、目の前に荒川さんが現れ俺の肩を掴んだ。


「何してるんだ! やめろ!」


「なんで止めるんですか! 仲間が殺されたんですよ!」


「今動いてもしょうがないだろ。ヤツがどこにいるかも分からないっていうのに。」


「だからって犠牲を無駄にするんですか!」


『パシンッ!』


荒川さんは俺を殴った。俺は少し目が覚めた気がしたが、やはり納得は出来なかった。

アルファマインドも停止していた。


「犠牲を無駄とは絶対に言うな。

無駄な犠牲なんて、ありはしない!」


俺は涙が止まらなかった。


「現場では人が死ぬ。

これからエージェントとして生きていけば分かる。

俺だってお前くらいの歳の頃は仲間が死ぬと本当に苦しかった。

そして分かることもある。命は繋がるんだ。心の中でな。だからお前の命は今まで以上にもっと重いものになった。

そして登坂は絶対に許せない。絶対に仕留めるぞ。」


「はい……」


そう返事をした後、俺は気が済むまで涙を流し続けた。


数日後、府中警察署エージェント部署からの連絡が入った。そして直接話しをするようになった。

府中警察署エージェント部署の署長の門田(かどた)という人が立川まで来てくれた。


「君が高橋君の同期の小原君だね?」


「はい、そうです。」


「今回の事件、署長である私の責任だ。こんな言葉で済ませてはいけないが、本当に済まなかった。」


門田さんは深々と頭を下げた。


「いや、そんな! あいつは自分のやるべき事を(まっと)うしたのだと思います。

そんなに謝らないでください。」


門田さんはすぐに下げた頭を上げようとはしなかった。

すると荒川さんが言った。


「それでは本題に入りましょうか。」


「あぁ、すまない。

今回の事件で高橋君が犠牲になってしまったが、ある点が確信に変わったんだ。」


すると門田さんは1枚の写真を出した。


「こ、これは……」


「そう、No.2と登坂が落ち合っている写真だ。」


その写真にはNo.2と登坂が話しをしている姿が映し出されていた。


「こんな写真、どこから?」


「高橋君が所持していたスマホに入っていたんだ。

これは重要な証拠だ。高橋君は良くやってくれたよ。」


俺はこの時、翔がやっぱ凄いやつだと思った。

そして、無駄な犠牲は無いという言葉もなんだか分かってきた気がした。


「これでNo.2と登坂に繋がりがあるのが分かった。

あとは動機だな。なぜそこが繋がるかが分かれば……

でもこれは大きな1歩だ。府中警察署エージェント部署、高橋 翔に敬意を表そう。」


そして俺も翔に敬意を表し、目を閉じた。


「立川、府中と来た。次はどこに出没するか分からない。都内全域で警戒態勢を強める事を本部に連絡しよう。」


俺は翔への気持ちを胸に、1人のエージェントとしてNo.2と登坂の捜索に気持ちを向けた。


『絶対に捕まえる。見ててくれよな、翔……』

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