13話 No.2の影
「お……お前は!」
荒川さんがそう言うと、謎の人物はニヤりと笑みを浮かべ去っていった。
「おい! 待て! くっ……」
荒川さんは傷が痛み立ち上がれなく、側の電柱に寄りかかった。
10分もするとエージェント全員が駆け付けた。
「な……なんだよ……これ。」
多田さんがこう言うと全員で手を合わせて目をつぶった。
「こんなに綺麗に首を切るなんて……
こう言っちゃあ申し訳ないけど、芸術的な刀さばきだわ。」
鈴木さんも警剣部隊だが、こんなに凄い刀さばきを見た事が無かった為、そういう表現をするしかなかった。
「こりゃあそうとう厄介な奴がこの立川にいるみたいだな。」
同じ警剣部隊の菅井さんも敵の凄さが分かっていた。
最近立川での事件が多く、エージェントも今まで以上に警備や捜索の強化が必要だと感じていた。
何より市民が犠牲になっては意味がない。
その日を境に警視庁、及びエージェントの警備強化運動が設けられた。
そして一般市民にも22時以降の外出を控えるよう呼び掛けを行った。
荒川さんは怪我で入院。
俺と工藤さんでお見舞いに向かった。
「荒川さん。怪我は大丈夫ですか?」
「ザックりやられちまった。」
荒川さんは服の中から今回負った傷を見せた。
その傷は真っ直ぐ綺麗な斜めの傷だった。
「俺はヤツとやり合った。やり合ったって言うか、一方的にやられちまったけどな。んまぁ不意打ちなんてする汚ねぇ野郎だ。」
「敵はどんな特徴でしたか?」
「もちろん刀を使うヤツだった。あの首切りや俺の傷を見る限りだと素人じゃねえ。
そしてもう1つ、俺はヤツの顔を見た。」
「何か分かったんですか!?」
「俺はヤツの顔を知っている。」
「本当ですか!?」
「あぁ。ちなみにもっと面白れぇ事教えてやるよ。
ヤツは……ヤツは元エージェントだ。」
俺と工藤さんに衝撃が走った。
エージェントは凶悪犯から市民を守るのが仕事なので、驚きを隠せなかった。
「殺人犯が元エージェントだとしたら、これは大問題ですよ! それにこれまでの事件と関係してるとしたらマズいですね……。ちなみにそのエージェントとは知り合いなんですか?」
「簡単に言えば同期だな。同じ寮で共に競い合った同士だ。何にせよ、これからは今まで以上に捜索を進めた方がいいな。」
『面倒な事になってきやがった。』
立川警察署エージェント部署はこの一連の騒動に動揺を隠せなかった。
「この1ヶ月で、小さい事件だと計7件。大きい事件だと爆破予告と首切り殺人事件の2件が上げられる。
流石に立川で事件が起こりすぎている。
これじゃあ立川市の評判も悪くなってエージェントとしてみっともなくて外も歩けない。」
工藤さんの表情で怒りを感じた。
もちろん他の一般警察やエージェントにもその重要性は分かっていたので、現場はピリついている。
すると署長の荒川さんが会議室に入ってきた。
「この犯行人には1つの共通点がある。なぜか全員が犯行動機が無いという事だ。」
「荒川さん! 病院にいなくていいんですか!」
多田さんが荒川さんを心配してそう言った。
「こんな時にいつまでも寝てられねぇよ。こんなん唾付けときゃ治るさ。
話しを元に戻すと、犯行動機が無いというよりも、犯行動機を話さないと言った方が正しいだろう。捕まえた犯行人は取り調べで犯行動機を聞いても全く口に出さないんだ。
そして皆も知っていると思うが、刀を持った男は間違いなく元エージェントだった。
ヤツは登坂という男だ。俺の同期で、警剣部隊だった。鈴木、菅井、お前らは知っているだろ。」
鈴木さんと菅井さんは登坂という男の名前を聞いて、とても動揺していた。
「あの人がそんなことする訳ありません!」
「そうです! 信じられません!」
「だが、俺はしっかりこの目で登坂の顔を見たんだ。」
登坂は荒川さんの同期で、警剣部隊の中でもトップクラスの実力の持ち主だった。だが、かつてNo.4とやり合った時に登坂の部隊は全員死亡。
登坂だけが奇跡的に生き延びることができ、皆が死んでしまったことに責任を感じエージェントを離職したのだ。これはエージェント界でも有名な話だった。
登坂は人一倍正義感の強かった男だった為、鈴木さんと菅井さんはとても受け入れることが出来なかった。
「噂によると、登坂はNo.4の弟子になったという情報もある。強さを追い求め、闇に走ったんだろうな。」
「登坂さんが相手だなんて……マジでヤバいっすね。」
「そしてここで出てくるのがNo.2だ。」
皆が耳を揃えてその言葉を聞いた。
「俺達は立川でNo.2を目撃している。そして登坂はNo.4の弟子だ。No.2とNo.4に何らかの関係性があるかもしれない。目的が何なのか。
俺的に1番考えられるのが、小原のアルファマインドだ。」
そう言って俺を見てきた。
俺は硬直してしまい、何も言えなかった。
他の皆も小原を守る用意は出来ていた。
「今がアイツらのしっぽを掴むチャンスだ。
今まで以上に捜査を厳重にしていくぞ。いいな。」
「はい!」
俺はとてつもない緊張感で心臓が破裂しそうだった。
すると皆が近くに来てくれた。
「気にすんな。それが運命だろうと俺たちは死ぬ気でお前を守る。お前はエージェントの未来だ。」
荒川さんにそう言われた時、俺はこんなに凄いエージェントの人達にそういうことを言ってもらえて感激していた。
「でも、守られてばっかじゃダメだぞ。
お前も一応エージェントなんだからな。」
「はい!」
工藤さんのその言葉でやる気が出た。
俺は足を引っ張らないように努力を続けると思った。
「ではこれから特別捜索を実施する!
夜間警備も人数を増やしていく!
なんとしてもNo.2と登坂の情報を集めるぞ!」
「はい!」
こうして、No.2と登坂を追う為の特別捜索、及び警備強化運動が実施された。




