12話 恩人
「荒川さん! あなた、10年前に川で溺れた少年を助けましたか!?」
俺は勢いだけでそう聞いた。
「10年も前のこと覚えてるわけないだろ?
それより今はこの被害だ。まだ怪我人や逃げきれなかった人達もいるかもしれない。話しはそれからだ。」
「あ、はい。すみません。」
「よぉうし、お前ら行くぞ。」
「はい!」
俺を含め4人のエージェントは怪我人はいないか、まだ手榴弾が残っていないかの捜索に当たった。
1時間ほど経ち被害者が見受けられなかったので7人は立川警察署に戻った。
「皆、一仕事ご苦労さん。
今日の夜間警備は工藤だ。よろしくな。」
「はい。」
「んじゃあ、またなぁ。」
工藤さんと玉田さん以外は9時で勤務を終えた。
夜に何かあるかもしれないので、基本は夜間警備は一般警察と1人ずつ着いている。
だが、水曜日は一般警察が2人、土曜日はエージェントが2人だった。
夜間警備を行った者は次の日は朝に帰って勤務は休みという仕組みで、水曜日の夜間警備がエージェントは0人なので木曜日の今日は、唯一1週間で全員が揃う日だった。
凶悪な事件が起きる可能性もある為、夜勤の人からの情報をスマホで取得出来るので、夜間警備が無いからと言って気が抜けない。
俺は家へ帰ると今日の事を母さんに話した。
「やっぱりそうだったの! 今日テレビ観てたらニュースでやってたんだから! それで、原因は何だったの!?」
「それが犯人は全く口を割らなかったんだ。」
「そうなの。あ、職場の雰囲気はどうなの!?」
「めちゃくちゃ良い所だよ! 今日だって署長の荒川さんが爆破予告の現場に行くって言わなかったら対応に遅れていたんだ。
あ、そう言えば、署長の荒川さん、もしかしたら10年前に俺を助けてくれた人かもしれないんだ。」
「え、そうだったの!?」
「それが荒川さんは覚えてなくて……」
俺は荒川さんが覚えていないと答えた時は少しガッカリした気分だった。
せっかく命の恩人にお礼を言えると思っていたのに、荒川さんだと確信出来なかった為だった。
そして土曜日になった。
土曜日は夜間警備がエージェントの2人で、俺と荒川さんが務めることになった。
「よぉし、寒ぃけど外回りしにいくか。」
「はい。」
ライトを持ち2人で外に出た。
4月は風が冷たく、外も寒かった為厚着をしていた。
「最近は立川での事件が色々と多いからな。怪しい人物を見つけたらすぐに教えろよ。」
「あ、はい。 」
俺は荒川さんの後ろをついて行った。
「なぁ、お前金のアルファマインド持ってるんだろ?」
「はい。」
「本部の奴らが騒いでたぜ? 金のアルファマインドを持つ奴が現れた。しかもこの日本に、ってな。
お前は紛れもなく逸材だ。
実力的には本部の人間だが、本部は危ない。
敵に狙われることだってある。
だから安全な立川警察署に派遣されたんだ。
俺のいる立川にな。」
金のアルファマインドは世界で1人しかいないとは知っていたが、その重要さか価値が全く分かっていなかった。
「だが、最近はその立川に事件が多発している。
もしかしたらお前がここにいるという情報が何らかの影響でバレているのかもしれない。」
「逸材って言っても、寮では自分より強い奴なんて何人もいました。力を持っても、素質が無かったらダメですよね。試験に合格ではなく推薦されてエージェントになれたわけですし……」
「お前は自分に素質が無いと思うのか?」
「自分に素質があるとは思ったことはありません。」
「皆そうだろ、まず素質なんて見つけるな。
素質なんか見つけたら迷っちまう。
俺はもう34歳だから分かるけど、人生迷ってる暇なんてないぞ。んまぁ、こんなこと言ってるけど俺も迷っちまってたけどな。」
荒川さんは笑顔でそう言った。
俺は10年前に助けてくれたエージェントが荒川さんだったらいいなと思った。
「お前はこれからだからな。」
「はい!」
すると前の通りを走って駆け抜けた人がいた。
「おい、こんな時間に何やってるんだ。」
返事が無くらそのまま走り去った。
「怪しいな。」
荒川さんは瞬時に怪しい人物の前に移動した。
怪しい人物は荒川さんにぶつかって倒れてしまった。
「お前、何してんだ。」
男性だった。しかも震えていて目を見開いている。
「おい! なんなんだよ!」
男性は走ってきた方向を指刺し、男性は口を開いた。
「あ……あ……あっちから……か……刀を……」
その瞬間、
『スパンッ!』
男性の首が一瞬にして飛んだ。
血も飛ばない程綺麗に真っ直ぐ、そして早く。
俺と荒川さんはそれを見ていたが、あっという間過ぎて首が飛ぶのをゆっくり見ている様だった。
「小原! 今の見えたか!」
「何かが来たのは分かりました。でもなんで首が飛んだか分かりません。」
今更になって男性の首から血が吹き出した。
「殺人事件だ! 他のエージェントに連絡しろ!
あと救急隊員も! 俺はヤツを追う!」
「はい!」
俺はエージェントに応援要請をした後に救急車を呼んだ。荒川さんは見知らぬ人物を追うが、特徴が全く分からずにいた。
「くそっ、これじゃあ探し用が無い。」
『分かっているのは、殺された男の言っていた「刀」だけか。首を切られたのもおそらく刀だろう。
……上から何か来る!』
咄嗟に避けたが間に合わず左肩から右腹まで斜めにザックり切られた。
「ぐはっ!」
謎の人物が地面に着地する瞬間、荒川さんは確かにヤツの顔を見た。
「お……お前は!」




