表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
賢者様の仲人事情  作者: 冴條玲
第二章 カムラ帝国の混沌
21/93

2-5. お姫様は賢者様に聞いてみた

 あぁ、あぁ、あぁ、もう。

 そー言ってる間に、血が出てるんだってば!


「ああもう、わかったよ! 行かねーよ! オレはここにいるし、おまえも遊びに来ていいからっ。だから、頼むから手当てしてくれよぅ~……」


 どうしよう、泣きそうだ。

 だって痛そうだし。

 彼女を庇って受けた傷だとわかっているから、余計に痛い。


「……」

「レオン?」

「あ……ああ……」


 行かないと言われて満足したのか、レオンは思い出したように腕を押さえた。


「痛いな」

「当たり前だろ!?」

「おまえのせいで斬られた」


 痛いじゃないかとぶーぶー言う。こいつは……。


「悪かったな!」


 もちろん、自分のせいだと思っていたのだけれど。

 何か、レオンに言われると腹が立つ。助けてやったのに。

 正直、言うことを聞かせようとする時にも、そのことで一言も責めないレオンに感心していただけに、がくっときた。


「痛いぞ」

「見りゃわかるって。待ってろよ、すぐ、誰か呼んで来てやるからな」


 すると、レオンが大丈夫だとティリスを止めた。

 大丈夫じゃないだろ! とふり向きかけ、ティリスは心臓が止まるかと思った。

 いきなり飛んできた光弾が、レオンを打ち抜いたのだ。


「レオン!」


 しかし、レオンは平然としている。


「何だ?」

「い……今のは……? 平気なのか……?」


 レオンは少し不思議そうにティリスを見た。何のことだ? と。


「ロズの方術だ。この程度の傷ならすぐにも塞がる。ロズは偉大だと言っただろう」

「……」


 今、何つった?


「冗談……方術って言ったら、神聖魔法だぞ!? ゾンビに使えていいのかよっ!」

「偉大なるロズに不可能はない」


 ティリスは酷く疲れた。


 ……神様って、何考えてるんだ……。


 緊張が途切れると、どっと疲れが襲い、ティリスはそこに座り込んだ。そのティリスを案外あっさり放したレオンが、土砂の方へと踏み込んで行く。

 刺客を確認する気だろうか。

 こいつらも、片付けなきゃな~と、ティリスはぼんやりそれを見ていた。


「……ロズ、ありがとな」

「うん? こちらこそ。レオンを助けてくれてありがとう」

「んー、でも、どうなんだろう。やっぱ、オレが余計なことしたから、レオン、怪我したのかもしれないし。何か……レオンって、強いんだな。カタリーナ相手にした時は、何で、死霊術使わなかったんだろう」


 それは、彼女を殺す気がなかったからだろうねと、ロズが穏やかに言った。


「余計なことではないよ、姫。昨晩も、今日も、貴方が庇っていなければ、レオンは殺されていたと思う。私は見ての通りの死者だから、素早くは動けなくてね。時間を稼いでもらえて良かった」

「……そう?」


 ティリスがちょっと赤くなる。

 もっとも、ロズはもうちょっとは早く現場に到着していた。

 ピンチになるまで助けに入らなかったのは、ここだけの秘密だ。


「……あのさ、ロズ。レオンて、何が本気なのか、よくわかんないんだけど……オレのこと、何度も殺そうとしたのに、何で庇うのかな」

「それは、姫と同じだろうね」

「え……う……んー。でも、オレにとってはレオンて国賓だし、シグルドで不祥事があっちゃ困るんだよ。でもな~。レオンて、そーゆーの気にしなそうだし。あんま、オレが姫だからって庇ったようには見えないっつーか……」


 普段はきっぱりさっぱりしているティリスが、妙に慣れない理屈をこねる。

 ロズは「おや」という顔でティリスを見た。


「……キス、したのは? あいつ、普段から平気であーゆーことすんの……? なんか……自分は死んでもいいとか言ってさ。オレは別に、命まで張る気、なかったのにさ」


 言って欲しい答えがあるんだねと、ロズは微笑ましげにティリスを見た。


「そうだね……。姫には申し訳なく思う。けれど、レオンはあまり深く考えていないよ。女性に言うことを聞かせる時にはああするようにと、お爺様の教育でね。間違っているから、教育し直してくれるかい?」

「……は…………?」


 ちょっと待て、ジジイ。どーゆー教育だ。


「何だよ、それ!? じゃあ、相手構わずしてんのか!」


 何だろう、すごくムカつく。

 泣きそうだ。


「いや、初めてだよ。レオンに逆らう女性なんていなかったし、レオンが女性に何かを望むこと自体、なかったから。あの子は……少し心を病んでいてね。死者を受け入れない者は、拒むんだよ。『構うな』という以外のことは、女性に望まなかった」

「……」

「貴方に言うことを聞かせようと思った時に、慣れないことだから、お爺様に教わった方法しか、思いつかなかったんだろうね」


 何だか変に動揺して、ティリスは頭をふった。

 どうかしてる。

 特別扱いされたのは、特別だから。

 ロズと平気で話せる者がほとんどいないのは、夜会で証明済みだ。

 それだけだ。


「レオンが死んでもいいと言ったのは、少なくとも自分の命よりは、姫が大切だと思ったからだろう。多分……貴方が駆け込んできて、嬉しい反面、レオンは心底、怖かっただろうと思う」


 ロズが言った。

 ……えっ……。


「な……、何言ってんだよ。昨日の今日だぞ、そんなわけ……」


 ふいに、断末魔のような声がした。

 光景を見て、ティリスは息を呑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ