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作り愛スピリット  作者: まい
拠点を確保する
8/13

今度は採掘だ

 石器からいきなり、鉄器時代へ急成長する回。

「今日は4月8日の種蒔き日か」


 ゲーム表現で言えば1年目、そして日中である。


 主人公であるシオン・クロプダはゲームでこの世界を満喫(まんきつ)していた頃は、カレンダーなぞほとんど見なかった。


 なぜなら常に何かを生産していた御仁であるからして、村民イベントや行商人の来る日やら、季節が変わるまであと何日か……などの大雑把な事を気が向いた時にしか確認しないのだ。


「畑仕事は終わってるし、今日は何を作ろうかな?」


 ほらね?




 シオンはどうでも良いと思っているが、彼女が幼気(いたいけ)で可愛いクリエイト精霊としてこの世界へ降り立ったのは、ゲームのスタート日と同じ4月1日。


 この世界の曜日は独特のもので、休耕日(日曜日)種蒔き日(月曜日)芽吹きの日(火曜日)水やり日(水曜日)開花日(木曜日)収穫日(金曜日)となる。 土曜日に当たる日は無い。


 つまり、このゲームと似た世界へ降り立っておよそ一週間。


 その間に何をしていたかと訊かれれば、初日は現状把握や変化して幼気(いたいけ)で可愛くなった自身の体に慣れる作業。


 次にシオンの拠点となる、小屋周辺の敷地整備と農作業で3日。 敷地となる荒れ地にデデンと置かれた、ひとつの巨大な石はオブジェ気分で中央に置いてみた。


 残りの内2日で森にある物の採集、そしてこの世界へ降り立ったスタート地点である丘周辺で、石を拾って回った。


 更に最後の1日で、今後の重要設備を建設。


 それで今日は何をしようかと考え、その準備をしていた。


 が。




 準備の途中で、生産物をシオンの目の前に浮かせて、当人は浮かない顔をしていた。


「石のツルハシは使い捨てにして、すぐ鉄のツルハシに持ち替えかなぁ」


 今日は丘で採掘して【鍛冶】をすると決めたようだが、その採掘道具に不満が有るらしい。



名称:石のツルハシ

耐久:70/70

付与:頑丈(小) 採掘力強化(微)

解説:有るだけマシ。 壊れやすい。 場繋(ばつな)ぎ、間に合わせ、その場しのぎに最適なツルハシ。



 ……まあ【職人の眼】でこう出てしまえば、使い道は決まってしまう。


 今日の採掘で、今後の生活に必需となる鉄をかき集める気でいる様で、それに耐えられる物では無いと確信できる。


「集めた石で鍛冶用の炉を備えた、新しい石造りの小屋を建てたし、ツルハシを使い潰して採掘。 それから本格的な鍛冶……だな」


 そうスケジュールを、ハッキリ決めた様だ。



 ~~~~~~


 ツルハシを2本【職人の(ふところ)】へ抱え、早速やって来た丘の採取ポイント。


 この地は昔、鉱物等が採れていた。 しかしある日を境にぱったりと採れなくなり、寂れてしまった地下へと続く坑道。


 むき出しの岩肌や木で組まれた落盤防止がまだ効いているとは言え、放置されてからそれなりに時間が経っている為かそこそこに荒れており、寂れた印象は強い。


 そんな坑道でも、もし何かがまた採れる様になるかもしれない。 そうなった時に掘り返すのは手間だから、こうやって手入れや閉鎖はせず当時のまま放置されている。


 ……と言う設定の坑道である。



 いや。 鉱石等が採れなくなったのは事実。 その辺は転移の際に貰ったチュートリアルブックで書かれていた所から、疑う余地も無い。


 しかし。 しかしなのだ。



 カーン! カーン!


 と力を込めて、ゲームシステムの恩恵を受けたには光って見える場所へ“採掘する”又は“何か鉱物が欲しい”と願いを込めて、ツルハシをぶつけてやると。


「……どっかに有ったな、ツルハシでいくら叩いても、壁が崩れないのにポロポロと鉱物が出てくるの」


 そう、素晴らしき(恐ろしき)かなゲーム仕様。


 普通は土の中に埋まっている物を掘り出して入手するはずの鉱物が、土で出来た壁に傷ひとつつける事なく、ツルハシで叩かれた所から産み出されるのだ。


 あと【農業】みたいにチャージアタックはしないのか? と疑問を持つだろうが、そこは技能欄に無い行為。

 よってチャージアタックをしようにも、そもそも発動しない。 なぜ技能として採用されなかったのか? それはシオンを呼んだ何者かへ質問してください。


「ゲームだと鍛冶屋からいくらでも鉱石を買えたけど、現実ではそんなの無理だからって、システムに追加してくれた要素らしいけど」


 時折【職人の眼】で素材を見極めながら、鉱物を懐に入れてきた頑丈さ重視の背負いカゴへ拾って放り込む。 あ、こっそり岩塩なんてのも混ざってる。



 ――――この森で集めた(つた)で編んだカゴに鉱石を限界まで詰め込んでも【懐】にはひとつのアイテムとして認識されるので、カゴをいくつも用意しておけばそれはもう反則みたいな量を持ち運べる。



 そんなカゴへ採掘で得た物を放り込み終えて、ツルハシを構えながら独り言として彼女が愚痴る。


「ゲームだと鍛冶場で燃料は要らなかったんだよなぁ。 今は石炭とか木炭とか必要で、出来れば石炭を加工してコークスも作りたい」


 カーン! カーン!


「んー、でもコークスを使わないでも、石炭に付与すれば相応の火力を出せる?」


 カーン! カーン!



 愚痴ってたかと思えば、再び生産へと思考が横滑りする。


 こいつどれだけもの作りへの執着が強いんだ。


 そんな呆れた声が、どこかで誰かが見ていれば、聞こえたかもしれない。


 ガィン!


「……あ~、ツルハシが折れた」


 異音で気付いたのだろう。 物思いにふけっていた頭を現実へと戻したシオンは、もう一本のツルハシを出そうとして、有ることに思い至る。


 ……いやいや待て待て。 採掘するって気持ちを込めなきゃならんとさっき言ったばかりなのに、他の考えをしながらなぜ掘れた?

 まさか無意識でか? コイツはどれだけ…………。


「スタミナが切れかかってる。 何か食べなきゃ」


 そして食への情熱が薄過ぎる。


 そう感じるのも無理はない。 なぜなら、そこにも理由は有るからだ。


 懐から取り出したのは、(つた)などで編んだカゴ。 そこに乗っているのは、畑から収穫した野菜。


「はぁ。 調味料とかがまだ作れないから、味付けが出来なくてつまらないんだよなぁ」


 カンストした【農業】技能により、普通の農業では叩き出せない異常な成長スピードと言う恩恵で、収穫されたのは赤カブである。


 元々成長が早い野菜だが、そこらの野生(原生)種からとって来た野菜やハーブもそこそこに早いが、それより何より早かった。


 そんな赤カブだが、物置小屋に眠っていた種のひとつがコレであった。


 そう、カブなのだ。 だがカブの信者や奴隷(どれい)ではありません。 そこはご了承願います。


 なにせカブと言ってもハツカダイコンであるからして「ご託はいい、とにかくカブだ。 カブを植え、育て、増やして(みつ)ぐのだ」と、天の声を聞いた訳でもない。 そしてシオンは、カブの酢漬けだって作って食べたいのだから。


 美味しいでしょ? カブの漬物。 酢が嫌いなの? 酢で漬けられるのが嫌なの? 訳がわからないよ。




 ……失礼、カブで熱くなりすぎました。


 とにかく当人は、まともに料理を作れる環境が整っていないために【料理】技能は伸ばせるだけ伸ばすつもりだが、実際に料理する気分では無いようだ。


 それでカゴからひとつ赤カブをつまみ上げて、ちょっと嫌な顔をして、そのちっちゃな口だとどうにか通る位太い赤カブを思いきって突き込む。


 切り分けて小さくせず、一本丸々をなんとか(くわ)えこみ、涙目になりながらバリボリかじり続けるのは、元男としての意地だろうか?



 やがて汁も含めて全部をこぼさず「んくっ」となんとか飲み込むと、我慢していた物を全て吐き出すかの様に、全力で叫ぶ。


辛苦(からにが)~~~~~いっ!!」


 …………相変わらずの、良薬は口に苦しコンボでもって、苦しんでいるらしい。


 いや、違うか。


 当初より【錬金術】技能が上がり、付与したものが(微)や(小)ではなく、成長して(中)を一部で付けられるようになればむべなるかな。


 あの頃より酷い味にて、悶えたりのたうち回る時間が延びている。 その苦しみは、普段タクアンな眉毛も一緒にゲジゲジしている所から、とても良く伝わる。


 だが、こんな苦境を耐え抜く日々も、そろそろ終わる。 そう確信している彼女は、意思を強く持つ。


「鉄で調理器具を作れれば、こんなのもすぐオサラバ。 あと少し、あと少しなんだ」


 それだけを支えとして、食の劣悪な環境に耐える精霊が、そこにいた。



 ~~~~~~



「げふっ……満腹にならない我が身がつらい。 でもだからこそ、いっぱい採掘出来たのも事実。 うーん、一長一短」


 あの後もある程度掘っては物をかじる、その行為を繰り返し、ツルハシが壊れると同時に満足出来る量の鉱物を採れたシオンは現在鍛冶小屋に居る。


 これから大好きな生産行為だと言うのに、度重(たびかさ)なる刺激物の喫食(きっしょく)で心が疲れ果てていた。 涙目にもなってるし。


 なので鍛冶をする気にもなれず、小屋に置いた金床(かなとこ)代わりの石に腰かけ、うなだれている。


「まずは鉄のインゴットを作るのに、石のハンマーで叩き、鉄と木の枝を作業台で合わせてハンマー。

 それから金床を作って……って、金床は本来なら鋳造(ちゅうぞう)なのに、ゲーム仕様だと叩くのか……まあいいや」


 どうやら、これからする楽しい事を思い浮かべてやる気を無理矢理引き出そうとしている様だ。


「出来たら木材集めにノコギリと、調理器具と……って、まだあのニガニガ野菜()がまだ残ってるんだよなぁ。 料理以外だと、どう処分するかな?

 生産者として捨てるのは論外だし、そうなると畑肥料? そんなの勿体ないし……」



 * おおっと *



 シオン は こころに ダメージをうけた!


 自身を応援する策略に、自身で大失敗(ファンブル)判定を出している。


 折角やる気が出そうだったのに【鍛冶】で調理器具を作り終わるまで、あの不味い野菜を食べ続けねばならない懸念(けねん)へ思考が横滑りして、泥沼化。


 上がりかけたモチベーションが、いつの間にやら急転直下。


 なんと言う凶悪なセルフトラップか。



「いやいやいやいや、今はニガニガ野菜はどっかへ置いとこう。 とにかく鍛冶だ、鍛冶をするんだ。 うへへへ、やる気がみなぎるぜ」


 なんとかトラップのダメージから立ち直り、自身を誤魔化しモチベーションを持ち上げる。


「俺はやるぞ俺はやるぞ俺はやるぞ。 とにかく鍛冶をやるんだ」


 自己暗示までして。






「ニガニガ野菜を絞り汁にしても、キッッッツーーーーイッ!!!」


 鍛冶の途中で切らしたスタミナを、見ない様にしていたニガニガ野菜で回復させながら、()()も寝ずにいられる種族の特性を悪用して貫徹する。

 鉄を作ったし、少量の鉄で防具を作る……となれば、ビキニアーマーか?

 全部薄い鉄板でおおう? アマゾネス風にワイルドさをイメージしてスケイル式か? そもそもビキニアーマーで肌に当たる下地は何を使う?

 等と、シオンは微妙に残念な思考をしている様だ。



少しの間、シオンのステータスをこちらで。

(前話と今話での変動表示)


シオン・クロプダ

クリエイト精霊・女性型


装備 :初期衣装

装飾品:なし


ステータス


【職人の体つき】:67→101(主要因 体を動かしまくった)

【職人の魂】  :61→92(生産への渇望かつぼう

【職人の知識】 :55→60(実験)

【職人の眼】  :53→74(実験の結果を沢山鑑定した)

【職人の腕】  :65→89(肉体労働)

【職人の指先】 :49→63(丁寧な農作業)

【職人のふところ】 :125→201(生産欲をなんとか仕舞い込み続けた)


 ステータスの具体的な意味は上から順に、

 スタミナ・MP・知性・鑑定力・腕力・器用さ・収納可能アイテム枠数

 初期値はオール10(懐だけ100)だが、種族ボーナスで全てにプラス10。


 現在のカンストは300(懐は999)



技能


【農業】   :100(カンスト)

【布・皮革】 :5

【酪農】   :5

【鍛治】   :5→9(始まったばかり)

【調合・調薬】:5→7(薬と化した野菜を美味しく食べようと頑張った)

【料理】   :15→31(不味いの……助けて)

【木工】   :7→12(木製の生活用品を細々と)

【錬金術】  :17→42(とにかく魔法を使いまくってる)

【装飾加工】 :6→9(木の加工になんどか失敗して、芸術作品が完成している)


 技能のカンストは現在100

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[一言] カブ、カブ、カブ、 小屋の近くにお墓のようなものないよね?
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