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そうして出会った私たち

 


 一通りの話が終わると、ベルナールたちは公務に戻っていった。部屋に残されたのはアンリとシリルだけである。


ーーーこれ、無理ゲーではなくて!?


 心の中でもお嬢様言葉になるくらいにはアンリは動揺している。


 目線だけをチラリと動かしシリルの方を見ると、シリルは頭を抱え、真っ白になっていた。


「だ、大丈夫でございますか!?シリル様!」


 アンリは慌ててシリルの側に近づいたが、返答はない。ただ、ぶつぶつと何かを呟いていることが分かった。


「あ、あの…シリル様…?」


 アンリがその肩に触れようとした時、


「ああああ!!…もうほんと、意味わかんねぇ!!」


 突然シリルは頭を掻き毟り顔を上げた。


 アンリは目をぱちくりさせ、たっぷり間を開けてからそれでも理解が追いつかず、


「え?」


 素の声で言った。


 その声で室内に自分以外の人間が居たことを思い出したのか、シリルは申し訳なさそうに言う。


「あ、すまねぇ。俺以外にも人がいたんだったな…。あーなんだ、俺たち、これからお国の存亡を掛けて、一蓮托生な訳だから言っちまうけど、コッチが素だ」


「え、えぇ…と…?」


 あまりの豹変振りと何処か聞き覚えのある話し方がアンリの脳を揺さぶる。


「貴族のご令嬢には、少しキツかったか?まあ、アンリ嬢がさっきまでの話し方の方がいいって言うんなら、戻すけど…」


 シリルは頬をかき、罰が悪そうに言う。

 

 困ると頬をかく癖。視線を斜め下にずらし、下唇を僅かに噛むその仕草。そして、あの計算され尽くしたような笑顔…。それらは、この世界でもう二度と会えない人物にそっくりで…。


 アンリの脳裏に1人の悪友の顔が浮かぶ。目や髪の色は勿論、顔の造りも全く異なる彼を、アンリはなんとなく呼んでしまった。


「けーくん…?」


「は?」


 シリルが頬をかいていた手をそのままに時が止まったかのように静止する。


ーーーまさか…


「え、今…なんて…?」


 瞬きもせず、徐々にその瞳に驚愕の色を灯してながら聞き返してくる。


ーーーまさか、まさか、まさか!!


 アンリの脳に浮かんだ1つの予想がどんどんと真実味を帯びていく。ドクドクと心臓が脈打つのを感じる。言葉にしようとすると、喉が酷く乾くような気がして、つっかえながらゆっくりと告げた。


「けー、くん。…代田、圭。私の、唯一無二の親友であり、最高の、悪友」


 シリルは驚きで目を見開きつつ、叫ぶように聞き返した。


「まさか…お前は、すーちゃん!?…笹川すず!?」


 そのまま2人は瞬きすら忘れ、互いに見つめ合った。




 そして、数十秒後、同時に吹き出す。


「ふっ…あっひゃひゃひゃひゃ!!おま、なーにが『笑顔がとても似合いますね』だ、あざと過ぎて片腹痛いわ!!」

「お前が『わたくし、病床に伏していて』!?ふひっ…あはははは!…駄目だ、笑い過ぎて涙出る」


 互いを指差し、目に涙を浮かべるほど笑い合う。


「あ!お前、言いやがったな!!今世の俺はスーパーモテモテボーイだぞ!?いいのか?俺のファンがお前んとこ殴り込みに行くぞ!?」


「うっさいわ!私の病気だって今世は病弱だったんです〜紛れもない事実を言っただけなんですけど〜?」


 流れるように反論フェーズに移り、2人のテンションはますますヒートアップしていく。


「病弱って言ったって、病気の原因、闇属性の魔力だろ?え、まさか前世思い出した瞬間、魔力馴染んだのか!?」


「そーよ!だったら悪いですか〜!?」


 その返答聞き、シリルは耐え切れないといった様子で半笑いで答える。


「いや、さすが過ぎて言葉が出ねぇ…。ふっ、ふふふふっ、じゃあ、すーちゃんに教えたげるよ…ふっ」


 うざったらしい笑みを浮かべて答える。


「この国では昔から、魔力はその人の内面を表すって言うんだ。まぁ、つまりそう言うことだな!!ぷっ」


 アンリは、その小馬鹿にしたような言い方にイラッとしつつも冷静に自分を振り返ると強く否定出来ないことに気づいた。


「つ、つよく否定できない自分が嫌だわ。それ、割と当たってるかも…。って、そう言うけーくんは何属性なのさ!?」


「ぐっ…」


 シリルは痛い所を突かれたと、自身の心臓に手を当て、半歩下がる。

 そんな様子のシリルをアンリが逃す訳がない。


「ほれほれ、シリルさ〜ん?自身の属性はなんなんですかねぇ〜?」


 一歩一歩シリルとの距離をつめながら言う。

 じりじりと壁際まで追い詰められたシリルは観念したように、か細い声で言った。


「や、闇……」


 その答えを聞き、満足そうにアンリは笑った。


「ふっ、あっははははは!!さっすが!さっすがだわ〜。けーくん、期待裏切らないわ〜」


 自分がしたことをそのままやりかえされてしまったシリルは悔しそうに、しかし楽しそうに言い返す。


「うっせ。どうせ腹黒ですよ〜。俺も、お前も」


「違いないわ」


 顔を見合わせ、2人でにんまりと悪どい笑みを作った。



「さぁて、いっちょやったりますか」

「『悪役令嬢大作戦』、とやらを!!」




***



「と、思っていた時期もありましたっ!!」


「な、なんで半ギレ?」


 困惑した様子でシリルが尋ねる。

 今日は、作戦会議の為にアンリの家でお茶会が開かれている。


「聞いてくれ…。けーくんよ。私が殿下と婚約しに行った時の話を…」


 アンリは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、話し出した。






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