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事の発端は逃走計画から

そして過去から現実へ戻ってこようではないか?

戻りたくはないんだけど。

胸の谷間のライター…とるべきか、取らざるべきか…。

取りたくは…ない…。

というより…。


取れないよ…無理だし…何をどうしたらあれをとれる?


万策(万策でもないけど)尽きる…。

だがしかし、るっちゃんのアプローチ攻撃は続く。

楽しむため、ボクの反応を見て楽しむため…。

るっちゃんは自分の暇潰しのためならば友達さえもネタにする。

ちなみに。

こういうのは2度目です…。

1度目はというと……。

いや…これ以上は深入り禁止だね、うん、深入り禁止!

「あーのさぁ?るっちゃん?」

「ん?どうしたのミヤぁ」

いやらしげな微笑をしながら応答するるっちゃん。

「火種…探さない?」

ボクが視界を外し、逃げるように話した。

「あー。なぁにぃ?これが見えないとでもぉ?」

るっちゃんは更に悪魔的に胸を強調する。

見えてます。

というか見せてるよねるっちゃん!?

背後と前方はふさがれ、残る逃げ道は2つ。

右か、左か。

だが右は窓、左は多少奥行きがあるもののすぐ開かずの戸だ。

さっき閉められただけだけど。

観察しろ…そして…思考しろ…。

真実はいつも1つ、だけど結末はいつも1つじゃないよね?

うん当然。

手が届くもの…。

鉄製机、そしてライター。

さぁどっち…なんて聞く余裕ありません?

ボクは早々と決断するとピョンと机の下へダイブした。

そして机をちょっと浮かせて回転。

半回転させて再び壁に密着させる。

それによりボクの死角はなくなったワケだ。

ボクだからこそ、椅子をいれる机の下の部分に入れた。

それは今本当に良い結末だったと思う。

んーでもよくよく考えてみてもいいかなぁ?

ここからどうやって出るんだ?

出ればるっちゃんの餌食だぞ?いろんな意味で。

それにここ真っ暗だ…。

暗いのは正直苦手なんだなぁこれが。

目に見えない壁っていうのが何かね。

でも今そんな恐怖感を出すより別の意味での恐怖感を出さなきゃ。

あー恐怖感じゃなくてとりあえず集中しようか。

暗くない、怖くない、暗くない、怖くない、暗くない、怖くない。


「うあーここじゃあ暗くて下手にライターつけられないなぁ」

……………え?

ボクは、思わず息を飲んだまま30秒ほど停止してしまった。

まったく気づかなかった。

何で?

何で、

何でるっちゃんがここにいるんだあぁぁぁ!!?

「る、るるるるる、るっちゃん?」

「ん〜?何〜?可愛い子羊ちゃん♪」

暗闇に慣れた目が思いもよらぬ光景を映し出す。

気づけば、ボクはるっちゃんの上半身にもたれかかっていたのだ!


ぎゅっ…


るっちゃんはボクに抱きつく。

思考のさえぎりと、底知れぬ弾圧と密着感。

背中に何が当たっているかはボクでも理解できた。

思わず暴れたくなってしまいたい気分。

いや、暴れよう。

暴れてなんとかしよう。


そう思ったボクは早速バタ足。

いやしかし、自分が今どこにいるか、すっかり忘れてしまっていた。

こんな狭い範囲でバタ足など、危険そのものではないか。

そして案の定。


ガンッという物音の後にボクの親指に激痛が走った。


「ッ〜〜〜〜〜〜!!」

どうやら机を思い切り蹴ったらしい、かなり痛い。

るっちゃんも軽く笑った。

「あはは。ミヤも暴れん坊将軍だなぁ」

「ぁぁあぁぁぁあ…………」

久々だ。

こんなに後悔するのは。

こんなに痛い思いするのは。

まぁどっちにしてもるっちゃんのアームから逃れるのは不可能だったかな。

はぁ…とりあえず今は体力温存。

今の状況を保つこと最優先でいこう。

とは言うものの。

とりあえず……。

「るっちゃん。このボクを拘束している腕をはなしてくれないかな?」

お願いに近いお願い。

友達として、離して欲しい。

トモダチトシテ、ハナシテホシイ。

そう願ったのだがどうやら逆効果だったらしい。

「だーめ、ミヤにまた暴れてもらったら困るかーら」

一度失った信頼を取り戻すのには数分かかるらしい。

るっちゃんの拘束が強くなった。

腕の締め付けも。

指1本でも動かせばるっちゃんの華麗な皮膚に触れる。

その度一時的に腕の力が一瞬緩むが、すぐに、また強く、ボクを圧迫する。

といった精神攻撃(?)を何度も繰り返す。

そして新たに拘束された身体部位があった。


ぎゅっ…


ピクリとも動かせない足。

ボクの両足はるっちゃんの足によってがっちり固定されていた。

るっちゃんのふとももの内側でまったく動けなくなっているボクの足。

これも、ボクがちっちゃいからこそである。

長所短所あるなぁ…そう思った。

ってそんな優雅に考えている場合じゃない!

これじゃあ…身動きとれない…。

…机の下にはいったのが失敗だったなぁ。


 わざとらしく、ふふ、と笑うるっちゃん。

あなたは悪魔ですか…?

とどうしても聞きたくなるようなそんな笑い。

長い間一緒にいるけどこの『悪魔癖』だけは治ってない。

まぁ簡単に言ってしまえばるっちゃんはSなのである。

「どうしてほしぃ?」

選択の自由。

そう。

その質問にボクの考えは適用されない。

なんて答えようとされることは同じなのである。

つまり。

選択肢は1つしかないということ。

選べない……自由。

選択権のない…選択肢。

「…………」

だがしかし、ボクはあえて、無言。

選択肢が1つしかないならば、それすら選択しなければいい。

ムダに姑息なやり方。

でもボクができる唯一2つ目の選択肢。

『選ばない』だ。

だがボクの考えはるっちゃんにとって、いつも逆効果でしかなかった。

「何も言わないのは…OKと、とっていいワケだね?」

ありえない解釈の仕方。

いや、暗黙の了解というものもあるがそれとこれとはワケが違う!

あーこれ以上誤解を招くワケにはいかない…!

「OKじゃな――――」

誤解を解くため振り返ろうとしたワケなんだけど。

手の拘束は強引に解いたよ?

でも足も拘束されてたこと、すっかり忘れてた…。

「うわっ!」

ボクは体勢を崩し、うつぶせに倒れこんだ。

一瞬痛みを覚悟したけれど、それはなかった。

だがしかし

「ひあっ…!」

るっちゃんの少し高めの声。

今気づいたワケじゃないけど。

ボクは何も言わない。

言いたくない。

言ってしまったら。

……………………。

いや、言いたくないんじゃなくて。

今普通に言えるほどボクは落ち着いてなんてなかったんだ。

ボクはあまりの驚きに、声を発することも、できなかったんだ。

それは当然だろう。

ボクは高校生、であって。

まず前提に、男なんだから………。


「……!!」


 ボクは


るっちゃんの


胸に


沈み込むように


もたれかかっていた。

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