事の発端は性格から
………宇宙でしょうか。
息ができません。
正確に言うと大きく呼吸できません。
真っ暗闇の中すごく息苦しくてつらい。
暴れる気力すら…出てはきません。
暴れるのは…苦手……だから。
「んーーーっ!!」
ボクはそう言ってゆっくりと目を開けた。
鼻と口は誰かの指でふさがれている。
その手の主は指を離すとこちらを見た。
「起こして悪かったかな」いかにもわざとらしく。
「いやいいよ、だって今日約束してたしね」
「そっか。んじゃあ行こうか」
早急にボクの腕をつかみひきずりながら移動。
ぁぅぅとボクは声を出しつつ、しかし逆らうことなく、流るままに。
今日実は約束があったのだ。
何か長谷先生が理科準備室の片付けよろしく。
あーでも言われたのはボクではなく。
今ボクを引っ張っているこのお方。
「るっちゃん…!もういいから自分で歩ける」
「あーうんそだね」
るっちゃんは手を離すとそのままスタスタとボクの前を歩いていった。
ボクは焦ってるっちゃんの横にならぶ。
そう、長谷先生に厄介事を頼まれたのはるっちゃんだ。
もともとるっちゃんは普段真面目だから先生たちからの信頼は薄くもない。
そのためよく厄介事を頼まれる。
その度るっちゃんはボクを連れて行く。
もう慣れたこと。
だけどほんとは慣れちゃいけない。
いちをこっちはちょっと迷惑してるワケであり…。
とは言っても「迷惑なんだ!」なんて女の子に言えるほどボクは強くないワケでもあり…。
「はぁ…」と毎度ため息をついてしまう。
「嫌なら帰ってもいいけど…?」
るっちゃんの意外な一言。
いや、毎回この一言を言われるがボクは毎回
「いや、だいじょぶ。手伝うよ」
と軽く微笑んでこたえることしかしない。
るっちゃんに1人でやらせると大変なことになりかねないワケじゃないんだけど。
心配…っていうのかな…怖い…とも現せるような。
とにかくるっちゃんに1人で片付けさせたら何か危険な気がする。
そう、例えるならば大火事とか、放電とか、沈没?とか…。
いや、るっちゃんならそれはないか…。
と思うが、るっちゃんだからこそやりかねないとも考えれてしまう…。
頭が混乱。
「ぁぁぁぁ…」思わず口に出たつぶやき。
一瞬るっちゃんがこっちを見かけたような気がした。
『理科準備室』という張り板を見つけ入り口に立つ。
戸のガラスはボケるようになっていて中は見えなかった。
ただ……ボクの勘だけど。
ほんとに……勘なんだけど。
何か入りたくない。
理由は…ない…勘だから。
だがそんなボクの気持ちをおかまいなしにるっちゃんは鍵を開けた。
そして戸を開ける。
まず最初の標的は煙だ。
煙草、のような白めの煙が戸から漏れ出した。
反射的に後退するボク。
反射的にボクをつかみ身代わりにするるっちゃん。
「…………え?」
煙はボクの顔に覆いかぶさった。
息をとめろ、目をとじろ、匂いをかぐな、肌で感じるなぁぁぁぁ!!!
煙は容赦なく…………。
「………………」
「よし、さすがミヤだ」
「………………」
「…ミヤぁ?怒ってたりする?」
「…………いいえ?」
怒ってないワケない。
でも強引に否定。
わざと、気づかせるように。
でもるっちゃんは反省することなくボクから手をはなすと理科準備室へと足を運んでいった。
………罪悪感のない人だなぁるっちゃんは。
まぁそこが一種の特徴というものでもあったりする。
とボクは諦め気味にるっちゃんの背中を追った。
「えーっと」
「…………ここは理科…準備室…だよね?」
「そう。理科準備室」
「るっちゃん…この光景を見てよく言えるね…」
「まぁあのホコリからして何ヶ月も使われてないみたいだし」
「たしかにそうだけどさ…」
ボクとるっちゃんが見ている光景。
理科準備室なのに理科の準備のためには必要ないもの。
っていうかあからさまに外れてる。
理科とどうつなげればいいのかすら分からない品々。
普通こんなとこにおいておくのかな…。
ベッドの下とかさぁ…色々あるじゃない…。
るっちゃんはそんなことを何も思ってないようで。
成人用雑誌を次々に拾っていくとちょっと小さめのゴミ箱に筒状にしてポーイ。
ボクは、
ゴクリ
とツバを飲んだ。
果たしてちゃんと捨てられるのだろうか。
小さい(チビではないぞ)とはいえ、いちを高校生なワケだし。
「はーやくミヤも手伝って」
「う…うん…」
恐る恐る雑誌を拾っていくボク。
ポイポイほかっていくるっちゃん。
やっぱり…真面目なんだなぁ〜。
とボクは雑誌から目をそらしながら、ふと思った。