事の発端は体育倉庫から
太陽が橙色になり、教室の中は橙色に埋め尽くされん状態となっていた。
教室に残っているのはボクとうっさーと純君。
ちなみにボクが残っている理由は、人を待っているため。
窓側に座っているボクと廊下側で話している2人。
「これとかどう思う?千恵」
「ん?どれどれ?純クン」
純君が雑誌片手に……。
何の会話をしているかはともかく…。
………………。
ふとあの男女2人を見て思う。
純君とうっさー。
前より仲良くなったよう気がする。
気のせい…じゃないと思うんだけど。
前も結構仲よかったけど最近一言も話してなかった。
かと思うと突然親密な関係に戻ってる。
う〜ん……不思議だ。
そして新たに変わったこともある。
呼び方。
何でどっちも『名前』で読んでるんだろう?
前まで苗字だったんだけどなぁ。
前原クン、から、純クン。
宇佐凪、から、千恵。
苗字から名前へ呼ぶようになった。
………つまり…あの『体育倉庫事件』で何かあったんだ。
一部始終を見てたワケじゃないけどボクが見てたあたりではうっさーは純君が好き。
純君もうっさーが好きみたいだったけど。
…………ってことは…!?
えーっ!?まさかまさかまさかまさかまさかまさかまさか!?
いやでもそんなことって…そんなことって……そんなことって!?
疑心暗鬼になっているボクが見ているさなか、2人はとんでもない行動をとった。
「…ん」
「…!?」あまりに唐突なので純君も驚いている。
気づけばボクの頬は、ポッと赤くなっていた。
目を逸らしたい一心でありながらじーっと見つめてしまうボク。
あーボクって情けない…そう思ってはいるものの目がそれから離れることはなかった。
すると純君がボクの視線に気づいたのかうっさーを少し離す。
純君がこっちに近づきながら恐る恐る聞いてきた。
「今…見た?」
それは聞いて当然の質問である。
純君がボクに答えを確認するようにたずねてきた。
ボクは当然隠しはしない。
でも少しだけ、ほんのちょっとだけ、いじわるに言おうかな。
「いや?別にうっさーと純君が教室でキスしてたなんてボクは見ておりませんよ?」
ちょっといじわるに言ったつもりだけどどうだろう。
と確認するまでもなく純君は、はぁ、とため息をついた。
どうやら少し効果はあったみたい。
「誰にも言っちゃダメだよ!?」
一体いつ近づいていたのかうっさーはボクの両肩をつかんでいた。
軽く…痛い。
そう、今これはお願い、というより脅しに近い。
断ったら肩でも粉砕されちゃうんだろうか。
「うんだいじょぶ。言わないよ。そこまで友情浅くないからね。信頼してくれていいよ」
あまり深い意味で言ったつもりはなかったんだけどうっさーはそれにひどく感激したようだ。
突然ボクを抱きしめると
「うん。ぃぃ子ぃぃ子」
と…。
胸があたり、一瞬動揺した…が…そんなことより……。
ってボクは同級生っだー!と…言いいたいところだったけど説得力に欠けると思うのでやめとく。
純君も少し苦笑いしながら「ありがとう」と言った。
「それじゃ私たちは帰るから」
うっさーが軽く手をふりながらそう言う。
そして純君の腕に強引に手をくませた。
「ぉわっ!」
純君が驚くもうっさーは手をくませつづける。
少々恥ずかしがっている純君ではあったが天然うっさーに敵うワケもなく。
ひきずられるように教室を出て行った。
えーっと…あういうのを…「バカップル」…っていうのかな?
場所、環境にまったく関係せず、イチャイチャする。
いや、純君はちょっとシャイだから違うか…。
単純にバカップルぶりになってしまうのはうっさーのせいなのかな〜。
純君も苦労しそうだなぁ…。
………………。
ま、純君ならだいじょぶだろう。
もともとうっさーと仲よかったしね。
「……ぅ」
………………ふらっ…。
突如迫り来る眠気。
睡魔め〜…こんなときにボクを眠らせにやってきたのか…!
くそ〜、そういえば昨日は夜更かししちゃったんだっけ…。
そのままパタリとほっぺを机に密着させる。
手は、たらりと椅子の下に伸びていた。
せめて手でも枕代わりに置きたいなぁ…。
でももうその行動力すら…でない。
「ね…ねちゃだめだ…ねちゃだめだ…ねちゃだめ……だ」
言葉の励ましを自分にかけてみるが効果なし。
閉じていくまぶた。
遠のいていく意識。
こんなことなら昨日もっと寝ておけばよかったなぁ…。
「寝ちゃ………らめら………」
言葉になっていない呟きと共に、ボクは、眠りに………。
落ち…………た……………。