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そして、そしてそしてそして

次話、最終章!気づいたら4000文字という「うわっ!」

「ボクと…付き合ってください!」

気づけばボクの迷いは吹き飛んでいた。

ただ、こんなセリフ噛んでしまわないだろうかと、そう思っていた。

それを聞いて


……ゆっくりと微笑む彼女は


とても穏やかでいつもとはまったく違うような


そんな不思議な感じ


赤面したボクを見て…ただ…じっと見て…


そして……。


「      」






 「何で私が怒られなきゃいけないのさ」

「怒ってないけどせめてボクの家に送ってくれればって言ってるだけだよ」

「ほら怒ってるんじゃん…」

ボクは肩をすくめた。

口を尖らせながらボクをみるるっちゃん。

「じゃあ怒ってることにして…なんであそこでるっちゃん家になるのかなぁ…」

「う〜ん…ミヤん家が遠いからじゃない?」

「じゃあ何で起こしてくれなかったのさ」

「起きなかったのはミヤじゃない」

「何でるっちゃんのベッド…」

「だって気づいたらそこで寝てたんだもん」


片手で顔を隠す。

完全に負けた…っていうか全部ボクのせいみたいになってるし…。

いや100%ボクが悪いのか…?

ボクはふぅ、とため息をこぼした。

るっちゃんはニヤリと笑うとボクの背中をたたき出す。

「まー誰にでも間違いはあるって過ちだろうが失敗だろうが誰だってやるだしょう?」

「何のキャラ…それ…」

るっちゃんは上を見ながら苦笑いをした。

どうやら何のキャラでもないらしい。

「あははー……まぁいいじゃないか。そこらへんは厳しくとらなくても。

それにホラ、こんなにゴミがたくさんあるんだから掃除しないと帰れないでしょうよ?」

そして強調するように腕を横にのばす。

その両手の向こうに広がる朱色の空と燃え盛った太陽。

ボクの背後にはもう紺色の暗闇が広がりつつある。

風は太陽から月へ流れていっているかのように吹いていた。

「それにしてもこんなとこに何であの弧坂(こさか)先生が来るんだろうね」

「んーそれはやっぱり風が気持ちいいからじゃーないの?」

「まぁ確かに気持ちいいけど…」

「あの大人びた穏やか溢れる弧坂先生が風にあたっている姿かぁ〜。見てみたいもんだねぇ」

「来ればいいじゃない」

「無理無理、だって弧坂先生神出鬼没だから大体は授業中でしょ。放課は生徒が群れるだろうし」

と両手を軽く上げて言う。

確かに風にあたりに来るだけならとても気持ちいいかもしれない。

だけれど……。

るっちゃんがコンクリートの地面を見て言った。

「それにしてもこれはひどいよね、なんていうか……ゴミの溜まり場?」

「あはは…。確かにそれは言えるかもね…」

「こりゃあ出入禁止になるのもおかしくないわ」

「それで今は結構減ったけどね」ボクはホウキを動かしはじめる。

「ふぅ〜ん………」曖昧に納得したのかるっちゃんもホウキを持った。


………………さっさっ、というホウキの音だけが響き渡る。

一瞬るっちゃんのホウキが止まった。


「でも結構っておかしいと思わない?」

「でも弧坂先生以外誰も掃除してないワケなんだし…」

「『増えなければ』こんなの2日、3日で終わると思わない?」

「………………」沈黙するボクの返答は肯定。

「でもあの弧坂先生がゴミを出すとは思えない。ってことはだよ?」

「ってことは?」

「ここに誰かが忍び込んでるってこと」

「…………無理だと思うんだけど」

「確かに『生徒なら』ね」

「じゃあ何でこんなとこに教師が出入りするのさ」

ゴクリとつばをのんだるっちゃん。

そして…

「多分弧坂先生はこの高校の職員の誰かと付き合ってるんじゃない?もしくは既婚?。

あの弧坂先生だ。彼氏の1人や2人、二股だってかけてるかもしれないよ」

「あの律儀な人が…?とてもそうは見えないんだけどなぁ…」

「人は見た目によらないって言うじゃない?」

「でも逆にそれはかけ離れすぎ…」

「ぅぁぁぁ……おぅっと?掃除が遅れていては帰れまいてー!」

るっちゃん負けから逃亡。

逃げるが勝ちというけれど今のはかなり曖昧な負けだと思うよるっちゃん…。

愉快?に口笛を吹きながらホウキを動かしているるっちゃん。

これで「レレレー」なんて言ってたらまさしくレレレのおじさんなのだが…。

「……今のは失言」

掃除に集中することにしよう。

ボクはホウキを強くにぎった。


 

 2時間くらいの時間が経過していたとき。

「わーー来るなぁぁぁ!!!」

「るっちゃんこっち!柵の上柵の上!」

るっちゃんが柵にのったボクの隣に上がってきた。

そして冷や汗を拭く。

「ふぅー、危なかったぁ…」

「そうだね…。……それにしても何でこんな数…」

「やっぱし共食い?さすが古代から生きた生物だなぁ」

ボクたちは地面を四速歩行で這いずり回る『それら』を見ていた。

10、いや20。いや?30匹はいる!


カサカサカサカサ、その音は聞くだけでもう背筋が震えてしまう。


「まさかゴミ袋の中にあんな数のGがいたとは…」

Gとはもちろん重力gravitationのことではない。

もう分かっているとは思うけれどGとは頭文字である。

そしてそのGは柵と地面の接点を発見しそこから上り始めた。

「き!きたぁぁぁぁ!何だあれ!知能か!知能でももってるのか!え!?」

落ち着いてるっちゃん…。

「とりあえず何か対抗できる物は……」

とは言っているもののボクの視線はGの先頭しかとらえていない。

すると突然


ボクの背後でシュバッ!というライター点火音が聞こえてきた。


「え?」

思わず振り返るボク。

るっちゃんの片手にもたれた銀色のオイル点火のライター。

ボクの頭脳に電撃がはしる。

なぜはしったのかはよくわからないけれど。

こんなとこで火事はよくないよねぇ。

「るっちゃんそれは危ないからやめて…!」

「発射よぅーい!」

制しようとしたボクを懐へ抱いててライターを投げつけた。

目視では確認できなかったけれどボワッという音からどうやら飛び火したみたいだ。

飛び火したみたいだ?何をのんきな…。

ボクは一瞬自分を責める。

特に意味はないけれど。

「ぅぉぉぉっぉ……」

るっちゃんが何かに驚いているかのように声を出した。

燃えているGに対して?

それとも燃えて動き回っているGに対して?

それとも………ってどれにしても全部G関係じゃないか…。

「燃えるね〜うんナカナカ♪」

さきほどとは違い余裕のるっちゃん。

……今なんて言った?

燃えるね〜?

Gといえばテカテカだよね。

あれって何なんだろう。

体液?でなければ何なんだろう。

水とかも光の反射はするけれど。

あの光り方はどこかで見たような気がするんだよね。

アラブ?アラブの王様?灯油王?あーいや石油王か…。

石油…石油?訓読みにしていしあぶら?…アブラ?あぶら…あぶら…あぶら……。

……………。


油!?


さぁて『アラブ』という単語が何で出てきたかはおいといて……。

「あのさ、るっちゃん?」

ボクはるっちゃんの服にうもれながらも言った。

「ん?」

とたずね返するっちゃん。

「Gの背中に油がついてるっていうのは知ってた?」

「…………ぁー知ってたよ?」

「……………ウソ…だよね」

「…ウンうそ」

「……どうするの?」

「……どうしよう」

「………とりあえず手をはなしてくれない?」

「…………」

るっちゃんは黙ってボクを開放した。

………。

思わずボクはその景色を見て絶句。

Gたちの周りには火柱が上がっていた。

これはもう駆除とかそういうものではない。

火事だ。絶対消防車が来るよコレは。

尋常じゃないほどの炎がボクたちの目の前に広がっていた。

黒焦げのGたち。

まぁ茶色よりはマシだよね。

垂れ落ちる汗、これは純粋な熱いからの汗じゃない。

冷や汗、そう呼称するに相応しい呼び方だ。

見つかってどやされて、退学なんてことになったら…。

そんなボクの弱々しい心故の、汗。


ボゥゥゥっと炎は静まることなく



そんな決め込んでいる場合でじゃないよ!

あーーーどうするべきかーー。

「っていうかるっちゃんどうする気!?」

ボクが振り返ったそこにるっちゃんはいなかった。

あれ?

あたりを見回す。

「燃〜えろよ燃えろ〜よ炎よ燃〜え〜ろ♪」

炎のすぐそばでうちわをパタパタとさせていた。

のんきに「燃えろよ燃えろ」を歌いながら…。

ボクはるっちゃんの腕を引きずって少し遠いところへ運ぶ。

両頬を1度だけ交互にペシリとたたいた。

「ほんとにどうするのこれ…」

「よし一家心中だな」

「家族じゃないじゃん…」

「あーそっか。でもまぁいいんじゃない?停学ぐらいで済みそうだし」

「停学……」

停学とかならまだいいんだけれど…。

もし…。

もし退学にでもなったらどうなるんだろう…。

るっちゃんには。

るっちゃんには会えなくなってしまう。

地下鉄通学のボクと徒歩通学のるっちゃんとでは家が離れすぎている。

こんな大事起こして短期停学は難しいと思うし…。

仮に弧坂先生が仲介にはいったとしても…。

じゃあどうすればいい?

………………………。

…………そうだ………。

時は金なり…今しなければ後がない……んだよね…。

がんばれ…ボク…勇気をっ出せ!


「あのさ、るっちゃん」

「ん?」るっちゃんはいつものように応答する。

「……………」沈黙してしまうボク。

「何?」

「……………」何もいえない…口が開かない…。

「……ふぅ…」

るっちゃんはボクと同じ目線になるように膝を曲げた。

そんなことをされては余計言いにくくなるんだけど…。

真剣な眼差し。

ボクではない、るっちゃんだ。

ボクをただじっと…凝視する。

「まったく…もうちょっとがんばったら嬉しかったんだけどね」

と言ってボクのこめかみに手をそえて…。

ゆっくりと自分の方へ近づけた。

そして…。


「ぇっ?」

声になったのかさえ分からない驚き。


何が起こったのかを理解しようとしても理解ができなかった。


その静止した数秒のことなのに…。


本能である呼吸さえ忘れてしまうような。


退学するかもしれない火事のことさえ頭から離れてしまいそうな。


自分がここに来た理由さえ、吹き飛んでしまいそうな…。


そんな怖いほど、嬉しいほど、驚くほど…。


その時思考回路は多分停止をしていた。


考えることを忘れさせる甘い衝撃(スイートショック)


今思えば何であの時気絶しなかったんだろう…。

そう…思った。

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