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事の発端は完璧故から

「いや〜ほんと悪かった」

「む〜〜〜…」

「だから悪かったって」

「む〜〜〜…」

「この通り!」

「…むぅ…」

「…借はいつか返すさ。あぁもちろんだとも」

「………」

「……………」

るっちゃん強行作戦始動。

頬へ直接攻撃!

「いいででででで…」

「いい加減許しなさい?分かった?ねぇ分かった!?」

「はいはいわかいあいは!!」

「よし、それでいい」

ぷにょんと戻る頬。

あれ?いつのまに流れを取られた?

何かボクが悪いみたいになってるんだけど。

悪いの…ボクだったっけ?

あっれぇ?るっちゃんが悪かったような気がするんだけど…。


 るっちゃんが軽く自分でうなづきながら話す。

「まぁいいさ、若いうちは様々なミスを犯すものだ」

「そっかー…。よし!これからはミスを――――って!」

ボクは再び流れを取り戻した。

久々のノリ突っ込みだったがまぁそれはおいておこう。

「何かるっちゃん自分の罪から逃れようとしてない!?

ボクを抱き人間にしたのはるっちゃんでしょ?」

「う〜ん、あながち間違いではない」

と腕を組んで考えるように答える。

考えなくても分かるでしょうよ。

「あながち、というより『確実に』ですよ!だいたい――」

「あーはいはい。用は私が悪かったんでしょ。分かりましたよ、悪ぅござんした」

軽く手を振ってあしらわれてしまった。

何なんだこの人は。

人の話を最後まで聞く気がないのか。

それともコミュニケーションそのものが嫌なのだろうか。

ボクを男として見てくれないし…。

ましてや人としてみているかも危うい。


「はぁ、もういいですよ」

ボクも少々嫌になってきたので床にポンと座る。

るっちゃんは椅子に座って両肘を机にのせて窓の外の景色を眺めていた。

窓一面に広がる、暗雲。

るっちゃんの表情。


また、あの顔だ。

時々見せる、憂鬱な表情。

生きる目的を失った人のような。

何事にも無感情で、無関心で、自分にも興味の沸かないような。

…。


そんな顔…しないで・・・。

でも、そう願ったところで、るっちゃんの表情が変わるワケじゃない。

意思疎通でもしない限り、そんなことは起こらない。

変わらないるっちゃんの表情を、ただボクは見つめていることしかできないのだろうか。

ボク自身、なんとかしてあげたいとは思う。

だけれど、話しかけることもできなければ触れることもできない。

そんなるっちゃんをどうやって…『救え』というの?

分からない、分かるワケがない。

るっちゃんでないボクに、そのやり方を知る方法はない。

先の見えない道を歩き続けるのは正直つらい。

だけれどボクはそうしてずっとその道を歩き続けなければならない。

歩き………続けなければならない……。

永遠に、永久に。


 立ち込める暗雲。

そして一瞬――光を放った。

それも目の前で。

雷!?


 あたりが真っ白に染まる中轟音が響く。

その音はあまりにも豪快で、轟快。

こんな季節に、珍しいな…。

それにこんな場所で。


「それにしても、大きな音だったね」

ボクは苦笑いしながらもるっちゃんに話しかけてみた。

これでも勇気を出したつもり。

「………」

あー返事さえしてくれませぬか…。

ボクは改めてるっちゃんを見た。

「る…ちゃん?」

るっちゃんは微笑ながら手を痙攣(けいれん)している。

それに表情さえ、何かに驚き、怯えるような、そんな表情。

…………まさか!!

さっきので感電した!?

「るっちゃん!」

ボクはるっちゃんに近づこうと立ち上がった。


あーあ、不幸続きはまったく御免だよ。

なんてことだ。


その瞬間。

雷雲から2発目の(いかずち)が、

地上へ突き刺さる。


そしてさらにその瞬間。


「きゃっ!」

と乙女チックな声が聞こえたかと思うとボクは窓付近から戸側に吹き飛ばされた。

雷ってこんなじゃないはずなんだけどなぁ。

人を吹き飛ばす雷っておかしくない!?

それは自然現象ではない!雷のテロだ!

でなければ……。

そう、当然意思を持たないだろう雷がテロを起こせるワケがない。

これは明らかに人為的な、作為的な、行為的な。


 思い切り背中をうって(ふたたび)激痛が走る。

下唇を噛んで、思いっ切り我慢。

我慢の末、我慢の末、我慢の末!!

「ふぅ」と一息。

そして下を見る。

ふぅ、今度は良い(?)意味でのため息。

「えーあーうーんとえーあーぁぁぁ………」

こんなことには慣れているつもりだった。

だけどいつもの違って。

何か違って、何か新しくて。

新鮮で、初めて見た、1人の少女の恐怖する姿。

慣れているつもりだった。

いや、ハッキリ言えばウソだね。

悪戯とかとは違うんだよねコレは。

弱みを握った、って言ったら悪いけど。

こんな秘密、誰にもいえないのは当然だよ、るっちゃん。


成績優秀、スポーツ万能、泣く子もある程度黙らせる

艶美で、完璧。


そんな完璧だからこその欠点なんだ…よね!?


ぎゅっと


ボクの胸に顔を押し付けて何かに怯え泣くのを我慢している、とても可愛い姿。

しがみつこうとする手は彼女の意思無しでははずすこともできないだろう。


そしてピシャーン、という唐突な轟音。


一度ピクンとはねた後動かなくなるるっちゃん。

完璧だからこその欠点。

ボクは今までのこともかねて、からかってみる。

「雷、ダメなんだ。」

「ぅ…ぅるさい!」

目に雫をためながら必死にボクを睨む。

一体いつからるっちゃんはツンキャラになったのやら。

はてさて。


でも


そう言いながらボクから離れないるっちゃんのその姿も、可愛く、見えてしまった―――。

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