事の発端は寒さから
小鳥のさえずり。
光る窓。
そして、太陽!
朝。
そう呼ぶに相応しい。
えーっとあーっとうーんと…。
…………。
思い出した…。
思い出したくもない…過去を…。
鬼畜悪魔瑠音により気絶したボクは朝までぐっすり。
訂正、朝までうなされていた。
きっとそうだろう。
背中の痛みは…なくなっている。
まさかるっちゃんはそういう「やり方」を知ってるのか!?
るっちゃんって…一体。
そう横になりながら思った。
「へっくし!」
鼻をすする。
風邪か…。
まぁそりゃあ当然か…。
床で寝てたワケだしね。
せめて毛布でも…。
あーここ理科準備室か…。
これが後々響かなければいいけれど…。
ふとボクの視界にるっちゃんがいないことに気づく。
机と回転椅子と窓、そしてそこから見える太陽。
そんな鼠視点にはるっちゃんは入っていなかった。
物音も聞こえない。
ちなみに今日(土)明日(日)は校長&教頭先生の誕生日なので部活はない。
何か自由な高校すぎて少し笑ってしまいたくなる。
誕生日とかどうでもいいと思ってしまうがあえて口には出さない。
口に出した生徒がどうなるか知っているからだ。
……………。
ボクはぶるるっと身震いした後1つ、手を伸ばし大きく背伸びをした。
こうすることで少しは睡魔対策になると思ったからだ。
あんまり意味はないんだけどね。
伸ばした手が何かに当たった。
指にあたる柔らかい感覚はなんともいえない柔らかさ。
スポンジとか、ボールとかとは違う、何か。
弾力性に優れているワケでもなく、表面は凹凸のないスラスラ。
見上げたボクは…。
「…!!」
慌てて手を下げた。
上げててはいけない…そんな状況だった。
大体なんでそんなところにそんなものがあったのかさえ不明だ。
そしてやっと気づく。
るっちゃんが一体どこにいるのかが。
確かにこの位置なら視界にはうつらない。
あまりにも死角だった。
いや死角というにはあまりにも広い範囲だったのだが。
なぜ気づかなかった?
死角であろうとも感覚で気づけたはずなんだ。
何故?
Why?
動揺するボクに追い討ちをかけにくる、るっちゃん。
ぎゅっと
その手は、ボクを締め付ける。
率直に言うと。
今のボクの役目。
それはるっちゃんにとってとても些細なものだった。
抱き枕。
否―
抱き人間、とでも言うべき存在でしかないようだ。
脇下からまわされた腕はがっちりとボクを捕らえて放さない。
ぐっすり眠るるっちゃんを見て一言、こう思った。
放してください!――――――