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事の発端はコーヒーから

「やっぱり開かないなぁ…どうする?ミヤぁ」

「どうするもこうするも開かないんじゃボクたちには何もできないよぉ…」

「まぁ…そうか…」

「…………」

ボクの名前は白初宮戸(しらういみやと)

みんなからはミヤって呼ばれてるんだけど。

それで、戸のあたりで色々やってるのが鳥山瑠音(とりやまるね)、ボクとおんなじ学年。

だからボクはるっちゃんって呼んでる。

身長174cm、体重…聞けるワケないなぁ…。

3サイ……。

腰辺りまですらりと伸びている黒髪と本人の自慢はDカップだそうです。

ちなみにボクは女子の胸はみんなおんなじに見えるんだけどね。

でもるっちゃんはその胸を自慢したがるからちょっとわざと露出してる。

今でも胸元の服のすきまから谷間が見えなくもない。

でも意識するほど大きく見えないのは気のせいかな。

ま、本人の気にさわったら困るだろうしいいかな。


 さっきからるっちゃんは戸の前に立ってじっとしている。

戸が開かないことは分かってるんだけどね。

多分人影を見てるんだと思う。

でもまぁ多分通らないと思うけどね。

3階理科準備室。

今更理科準備室に忘れ物はまずないだろうし…。

ましてや、この教室の隣にあるのは理科室と音楽室だけ。

叫んだって意味はないと思うし、るっちゃんはまずやらない。

ボク個人の考えかもしれないけどるっちゃんは同級生って感じより姉、って印象が強い。

ちょっと大人びてるっていうのかな。

でもボクから見てはとても頼れる同級生(おねえさん)だ。

「ん〜もう無理かな…よしっ、ミヤ、コーヒーはブラックとマイルド、どっちが好き?」

るっちゃんは突然奥の部屋へはいっていくと、そうボクに聞いた。

一瞬思ったんだけど。

こんなところに…コーヒー…?

「何でこんなところにコーヒーが?」

とたずねようと思ったけどまぁ聞かなくてもいいかな、と自身に言い聞かせた。

「えっと…マイルドで」

「りょーかーい」

こちらからでは見えないけどるっちゃんが何か色々物色するような音が聞こえる。

ボクはちょっとビクビクしながらその音を聞いていた。

…………ピタン、と音が止んだ。

一体何をしているんだろぅ…。

ちょーっと気になったのでボクはその部屋の入り口から首を出すように中をのぞく。

るっちゃんは丸底フラスコとコップを両手に目で鉄製の棚をうろうろしていた。

「なにを探してるの?」

ボクの声に気づいたるっちゃんがこっちを振り向く。

「砂糖砂糖。長谷(はせ)先生また砂糖の場所変えちゃって…」

長谷先生というのは理科の先生で30代にしては老けてて、そんでもっておもしろい人。

長谷先生の一番の特徴は授業かな。

よく生徒が実験中に先生だけアルコールランプで魚とか肉焼いたり。

本気で作るときとかにはフライパンとガスバーナーが用意されている。

確か長谷先生はお店とかで料理できる免許をもってるんだっけ。

時々できた料理とか生徒にあげてたりね(授業中にも関わらず)。

何かとおもしろい先生である。

「あーあった。容器を変えるとは…なかなか…」

るっちゃんはボクをコップを持った手で手招きするとそれをとらせる。

円柱型の大きめの容器、でもボクが持てないほど重くない。

というか軽い。

るっちゃんは丸底フラスコとコップを窓に直結してある机に置いた。

その横にボクも砂糖を置く。

「あっ、ア、アルコールランプ…」

るっちゃんは再びその部屋に戻るとアルコールランプを両手の平にそっと置いて現れた。


トンッ


るっちゃんはその音と同時に、ふぅ、と一息つくと誰かさんが期待するような胸の谷間からマッチを、ではなく…。

「ミヤぁ、マッチある?」

普通に、当然のことのようにボクにたずねた。

ボクは首を振る。

いや、振るのが当然だろう。

マッチを携帯してる人なんてそうそういない。

「やっぱり…?」

るっちゃんは再び、ふぅ、とため息をついた。

そして!!



……………。

「えーっと、マッチマッチ…」

そして再びあの部屋へ。

一瞬誰かさんが何を期待したかはおいといてボクはるっちゃんと捜索を手伝う。

誰かさんはきっとるっちゃんがどこかのスキ間からマッチを出すとでも考えてたんだなー。

うん、やっぱりマッチを携帯してる人なんてそうそういない。

そういえばマッチってここにあるのかな。

と少し疑問に思いつつ捜索。

だがマッチはなかなか出てこない。

るっちゃんも少し捜索の仕方が荒くなっている。

「るっちゃん。ほんとにこんなところにあるの?」

「う〜ん自信はない」

「まえまで長谷先生は何で火つけてたっけ?マッチじゃなかった気がするんだけど」

「えっとね」

るっちゃんは少し考えるように手を組んだ。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 。

「ライター…だった…よね」

るっちゃんは少しボクから目をそらしつつ話す。

そう、つまりここにマッチはないってこと。

「火種がないんじゃコーヒーも何も…」

ボクが困ったように言う。

るっちゃんも万策尽きた、というか諦めかけている。

だがるっちゃんは突然何かひらめいたように言った。

「あっ!」

その声にボクも思わずるっちゃんを見る。

るっちゃんはボクを見ると、ニヤリ、と笑みをうかべた。

その笑みは喜び、というより怪しさを秘めている。

ボクは思わず背筋が震えた。

嫌な予感がする。

ボクにとって、嫌な予感が……。

「あのね?ミヤぁ…」

ボクの勘は当たったかもしれない。

るっちゃんの話し方がいつもと違う。

「な…なに…かな?」

ボクは恐る恐るたずねた。

いや、たずねなくても大体予想はできる。

るっちゃんがこの口調になるのは胸部関係のみだ。

それは中学3年で思い知らされた。

…………詳しく説明したくは…ない。

「見える?コレ」

「え?」

ボクはるっちゃんがわざとアプローチをかけてきている胸の間を見た。

よく見れば光る銀の物体。

角がとれた四角形。

今にも胸で隠れてしまいそうな、そんなもの。

「こ、コレ。ライター…ですか?」

「そぅ、ライター」

「………………」

「取りたければ取っていいよ…?ほら」

るっちゃんはさらに胸を強調した。

じわじわと下がるボク、じわじわと近づくるっちゃん。

とたんにボクの足は後ろへ下がらなくなった。

……壁!?

思いがけないことに動揺。

だがるっちゃんの足が止まることはない。

るっちゃんの発情はいつも突然だ。

突然で、圧迫で、強力で、それなのに理性を保ってる。

気づけばるっちゃんはボクの握り拳2つほどの距離まで迫っていた。

「っ………」

言葉を何も発せられない。

大体!何でこんなことに!?



そう、事の発端は6限終了後の帰り際だった。

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