第7話
賢者 ノエル=サドクリフ様
身長はおおよそ180くらい 中性的な顔にかかるシルバーの髪は腰まであるのではないだろうか
女性と見間違うほどの美しさだが声は低い
誰もを魅了する翡翠の瞳はただ一点、リンフィアを見ていた
エントランスで賢者様を待っていたはずなのになぜ彼は私の後ろにいるのだろう
気配に気づいて振り返ったが最後、侍女も執事も私でさえも言葉を発することができなかった
あるものは見とれ、あるのもは驚きで、誰も動くことができなかった
「…っノエルよ、いきなり転移してくるのはやめないか!」
真っ先に我に返ったお父様
「驚かそうと思ってね 逆に驚くことになるとは思わなかったよ」
なぜ驚いているのだろう 振り返ったらイケメンが後ろに立ってるほうが驚くだろう
いや、今は驚いている場合じゃなかった
私が頭を下げるのを合図に慌てて侍女や執事が頭を下げる さすが侯爵位に使える者たちだ惚けていても遅れはしない
「お初にお目にかかります。リンフィア=ローズカティスにございます」
カーテシーで頭を下げてから名乗る これがこの国の挨拶の仕方
けして立場が上の方に先に名乗らせてはいけない
お父様は侯爵家ではあるが、私はその子供というだけ。立場はノエル様の方が圧倒的に上だろう
「頭を上げて」
ノエル様の一言で私が頭を上げその後に続くように使用人が頭を上げる
「うん、思ったよりいい子だ。君だけだよ、慌てずに対応したのは流石は次期王妃候補」
「いえ、決してそのようなことはありません
対応が遅れてしまい申し訳ございません」
「まぁ、それは僕が後ろから登場したのが原因だから」
「ノエル、私の娘で遊ぶんじゃない」
お父様、軽く睨んでるけどいいの?賢者様なんだけど相手は
「まあまあ、ルークは相変わらず厳しいなぁ」
「全く、悪戯がすぎるのだ。お前はほんとに変わらない」
お父様、ノエル様をお前だなんて…
「だから番にも逃げられるのだ」
…………………
「今それ言う!?てか!逃げられてないし!
番だから戻ってくるし!どこにいるかもわかるし!」
「お前、したのか」
ボンッ
ノエル様のお顔が一瞬で真っ赤に…
「いや、その、まだ…だけど…
でも、だいたいは匂いでわかるし…番だし…」
ノエル様、もにょもにょ言っても聞こえませんわ…
「なんだ、まだなのか。ミリアがやきもきするはずだ」
「……」
お父様、ノエル様が黙ってしまいましたよ
というか、ノエル様は私のために来てくださったはずよね…
「お父様…」
「うむ、わかっておる。ノエル、今回呼んだのは話した通り、リンの魔力のことでだ。」
いつの間に立ち直ったのか、ノエル様は誰もが見とれるような微笑みを作っていた
「あぁ、わかっているよ。主体は闇、サブが光か
こりゃ王族が欲しがるわけだ」
王族の婚約者になるには地位か魔力のどちらかが必要で、私の場合は侯爵家の子供で女の子は私一人だったから選ばれたはず
逆にヒロインの場合は全属性解放したからなれたのだ。
常々疑問だったのだ ヒロインが婚約者候補になるのはわかる。でも、ヒロインは平民だし、いくら全属性を持っていようとリンフィアの方が地位は上、正妃はリンフィアでヒロインが側妃のはずだ。ヒロインを正妃にするためだけに侯爵家であるローズカティス家を敵にまわすだろうか。
頭に?を浮かべているとお父様が説明してくれた
「王族は代々、光の魔力を持つとされるが副属性は基本五属性のどれかになる。
まれに闇の魔力を副属性に持つ王族が生まれる時、その王の代は栄えるとされている。
だから、リンのような闇属性と光属性、両方を持ったものを欲しがるわけだ」
なるほど、地位より魔力の方がうえなのか
それはリンフィアを陥れてヒロインを正式な王妃にするだろう。貴族の特に女性からの支持は圧倒的にリンフィアが上だ。ヒロインが正妃では納得しなかっただろう。
そのため卒業パーティー断罪イベントか
卒業生の保護者も来るパーティーで王の決めた婚約者であるリンフィアを追放すれば全属性持ちで王子のお気に入りであるヒロインが正妃の座につけるという訳だ
「リンフィアちゃん、光属性が目覚めたことは誰にも言っちゃダメだよ?特に王家の人には」
なぜ王家の人間に言ってはダメなんだろう
貴族なら王家との繋がりを持てば地位も発言力も増すので願ってもないだろう
「ローズカティス家はこれ以上、王家との繋がりを持ってもしょうがないからね。特にこの父親は王家なんぞ入って欲しくないだろう」
王家に入れば安泰だろうに…なぜ??
「あんなバカに私の大事なリンをなぜ差し出さねばならん。王は賢王だがあれは愚王になるぞ」
どうやらアイデル様は既にバカの本領を発揮しているようだ…
それで私を王家にいれたくないのか
「おっと、そろそろ行こうかリンフィアちゃん」
「何処へ?」
「僕の屋敷へさ!」
そう言ってノエル様は転移の魔法を発動した