結婚への道
「湊くん……。学校ではどうだったかね?」
莉子の父は心配がなるべく顔に出ないように心がけてはいたが、心の内はこれからの二人の未来を案じる気持ちでいっぱいだった。
「お義父さん…。たしかに、沢山の先生方に厳しい意見をぶつけられましたが…、色々ご考慮頂いて、始業式の日にほかの生徒たちにも説明して……、納得してもらえたら、卒業まで担任を続けられることになりました。」
これが、いかに難しい事なのか、湊本人が一番分かっている事だったが、自分の浅はかな行動で沢山の人に心配や迷惑をかけてしまっている現実になかなか顔があげられないでいる。
「……そうか……。」
莉子の父の表情は固くなる。
静まり返った部屋の空気を和ませるかのように、莉子の母は温かい紅茶を二人に差し出した。
「色々…大変だったわね……。」
湊一人で抱え込む問題ではないと承知の上で、何もできない無力さに申し訳ない気持ちになる莉子の母。
「湊くん……。莉子から聞いたんだが……、結婚を考えているそうじゃないか?」
ゆっくりと口を開く。
「……はい、莉子さんには先日、正式にプロポーズさせて頂いて…。時期はもちろん卒業後の話にはなりますが……。私の方から先にご挨拶しなければならないのに……こんな形で伝わってしまって、申し訳ありませんでした……。」
湊は目の前のテーブルに額がつくほどに深々と頭を下げる。
「いや、そんなつもりで言ったんじゃないんだ。……もう、この際、莉子と籍を入れたらどうかね?もちろん、湊くんのご両親の了解があっての話だが……。ちゃんとした形であれば、説得力もあるだろう?」
「お義父さん……。」
湊はまさか莉子の父にそんな言葉をかけてもらえるなんて夢にも思っていなかった。
側でじっと聞いていた莉子を見遣り、彼女が頷くのを確認する。
「こんな形で…本当に申し訳ないです。お義父さん、お義母さん……、莉子さんを私にください!」
じっと頭を下げて動かない湊。
そんな湊を見て、莉子も隣に座り、一緒に頭を下げる。
「もう、改まらなくていいんだよ。私は君の事、最初から家族のように思って接してきたんだから。」
優しく微笑む莉子の父に、感謝の気持ちが途切れる事はない。
「莉子、年が明けたら、湊くんのご両親にも会いに行って来なさい。」
ポンと莉子の肩を叩き部屋を出る父。
「湊さん。暫く泊まって行ったらどう?学校もお休みでしょう?一緒にうちで年を越しましょう。」
優しく微笑む莉子の母に湊はなんて素敵な人達に支えられているんだろう…と頬を涙が伝う。
「ありがとうございます……。」
そう言葉にするのが精一杯だった。




