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華鈴

 莉子は思い出そうとしなくても自然と華鈴と涼の記憶が自分の物として蘇って来る。


 二人の結びつきがどれほどに深いものだったのか…それは自分たちのそれと勝にも劣らない深いものだと莉子は切なくも理解せざるを得なかった。



「莉子さん…。私と涼は…結婚式の直前に事故に遭って命を落として…、もう一度彼に出逢えることを信じて、人間に生まれ変わる選択をしたんです。」

 莉子の頭の中で穏やかに語り始める華鈴。


 華鈴が頭の中で見ている映像をそのまま共有出来るのか…、莉子は生まれ変わる直前の華鈴と涼の姿を静かに感じていた。



「莉子さんの中で…、私はずっと湊さんと出逢ってからの様子をあなたの感情と共に静観していました。

 だから、今の莉子さんの気持ち……あなたが口を開かなくても、手に取るように分かる……。



 私が生まれ変わる時、真っ白な羽の生えている女性に『やり残した事があるから成仏出来ない』そう言われて……それはなんなのか…ずっと考えていました。



 私は、涼と出逢ってから、障害になるものが一つもなくて…、当たり前のように幸せを掴み、結婚する予定でした…。だから、恥ずかしいけど、人を好きになった時の心の葛藤なんかを全く知らなかったんです。



 生まれ変わっても、涼と再び出逢う確率は物凄く低いものだと、そう宣告されていたので、最初に湊さんの姿を見た時、すぐに涼だとは思いませんでした。でも、莉子さん、あなたが湊さんを見る目が愛情のあるものだと気づきだしてから初めて、彼の中に涼がいる事を知りました。



 涼が、いつ莉子さんの中に私がいる事に気付いたのかは分かりませんが…、あなたが湊さんを愛したのは運命の力などではなく、純粋にあなた自身が彼に惹かれて想いが繋がったのだと、私はずっと莉子さんに伝えたかった…。



 莉子さんと湊さんの毎日は、私にとってとても刺激的で、切なくて…温かくて、幸せな感情をもたらしました。愛し合っていれば一緒に居られる事が当然の事だと思っていましたし、それが一番の幸せだとも思っていました。でも、あなたと湊さんの恋愛を覗かせていただいて…、こんなにも相手を求めあっていても側にいられない苦しさや、少しの時間でのそれが叶った幸せは計り知る事のできないものなのだと……、私は今までの恋愛がいかに浅いものだったのか…そう思うようになりました。」

 莉子の身体を借りて深呼吸する華鈴。



「やり残した事っていうのはきっとこの事なんだと……。」

 哀しく微笑む華鈴の顔が思い浮かぶ。


「私と涼は、深い運命で繋がっていた……。

 でもそれに甘えて愛とはもっともっと深い所にあるのに気づく事が出来なかった。


 莉子さんに出逢えて……私はそれを知る事が出来たんです。

 もう一度生き返って…涼とまた幸せを掴みたい……、もちろんそう思います。


 でも、運命よりも遥かに大きな愛を築き初めているあなたたちの仲を引き裂いてまで、私はもうやり直そうとは思いません…。


 きっと、もう成仏できると思うんです。あなたたちに大切なものを気付かせてもらったから…。


 涼が同じように考えていてくれてるかどうかは分からないけど…、天国で、もう一度彼に再会出来ることを…深い愛情を育てる試練だと思って…信じてみたいんです…。


 そして、あなた達は…まだまだきっとたくさん乗り越えるべき壁があるのでしょうが…、それにこれからも立ち向かい充実した人生を最後まで全うして欲しい……、私はそう願っています。」

 想いを全て吐き出した華鈴はホッとしたように覚悟を決めた。



「華鈴さん……。」

 莉子は華鈴の想いが心に突き刺さる。



「私、何があっても、絶対に諦めません。

 先生と一緒にこれからもずっと添い遂げたい…。

 華鈴さんの気持ち…、素直に受け取らせてください…。」

 莉子はドッと溢れ出す涙を隠すことなく、華鈴にこれからの幸せな未来を誓う。


 湊が肉体に戻ってきてくれることを信じて……。


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