愛し合う時
湊は莉子の大きな瞳を見つめながら瞼にキスをする。
微かに莉子の震えを感じやっぱり一線を越えるにはまだ早いか…と心配になる。
「無理すんなよ……?俺は莉子が本当に心の準備ができるまで待てるんだから……。」
優しく髪を撫でる。
「少しだけ…怖くなっちゃって……。」
湊を大好きに思う気持ちは今がピークな位に大きくなってはいるが、それがすぐに結ばれる行為に発展できるかと言ったらなかなか身体がついていかない。
「なぁ、莉子。別に今日急いでする事じゃないだろう?」
優しく微笑み莉子の心を包み込む。
「俺が莉子を愛してる気持ちだけ、今日は受け取ってくれるかな…?」
莉子の視線を離さずまっすぐ見つめる湊。
「それって…どういう…?」
莉子は言っている意味がわからなかったが、ふわりと莉子を抱きしめる湊の温かさが心地よくてもうどうでもいいや…という気持ちになる。
「莉子、目を閉じて…。」
湊の言葉を信じ瞼を閉じる。
愛でる様に重ねた湊の唇から、莉子を大切に思う気持ちが心にじんわり染み込んでいく。
いつもチョークで美しい文字を書く湊の長い指は、莉子の指先を確かめる様になぞり、柔らかな手のひらの上を滑らせていく。
その指は莉子の腕の内側を通り首筋にたどり着いた。
思わず漏れる莉子の吐息が、湊の耳を擽る。
彼女の頰をなぞりまた髪を撫でる。
湊が莉子に触れた部分は次第に熱くなり、もっと湊に触れてもらいたくて首に腕を絡ませる。
「莉子……。俺はずっとこうしてるだけで十分だ……。愛してるよ……。」
湊の瞳には莉子が幸せそうな表情で映り込んでいる。
愛されるという事はこんなにも心地よく、幸せなものなのかと、莉子の中の不安はとっくに消えていた。
そんな莉子の気持ちを、湊は彼女の様子を見ていればすぐに分かったが、大好きな莉子を大切にしたい気持ちは今も出会った頃も変わらない。
莉子の身体に隈なく触れてお互いの肌の温もりを感じ合うだけの時間が、ゆっくりと流れていく。
月明かりに照らされた莉子は見た事の無い妖艶な表情で湊の心をいっぱいにする。
空が白む頃には湊の腕の中に吸い込まれるよにスヤスヤと眠っていた。
そんな莉子をいつまでも見つめ続ける湊。
彼女を宝物の様に時を忘れて慈しむのだった。




