魅力
「俺はまだやる事あるから、莉子は先に風呂入って寝なさい。」
先生の口ぶりで諭される莉子は、もっと湊を見ていたいのになぁ…と思いながら渋々浴室に向かっていく。
「あ〜あ、せっかく先生来てくれるのになぁ…!」
頭からシャワーを浴びながら、本当は一時も離れたくないと思う欲も洗い流す。
『自分はまだ学生だし、立場が教師と生徒じゃ、先生のことだから、きっと何事もなく別々の部屋で一夜を過ごすに決まってる!』
そう安心よりも、がっかりする気持ちの方が断然大きかった。
『男の人なのに、好きな女の子を目の前にして何もしないってどうなんだろう……?
山小屋で下着は着てたけどあんなに肌が密着していたのに何もなかったし…。
本当は私に魅力がないのかも…。』
湯船に浸かりながらスタイル抜群の香奈美の姿を思い浮かべる。
『付き合って結婚だって考えた仲なら、もちろんそう言う関係にもなっているんだろうし…。
香奈美さんと比べたりなんかしたら、私なんかもう本当に身体も中身も超子供に見えるんだろうな…。』
モヤモヤとしながら自分の身体を見つめる。
『中身が子供でも、せめて見た目だけでも魅力的だったら、きっと先生も私に近づいてくれるのかな……?』
はぁとため息をつく。
莉子は思い浮かぶ事全てがマイナスな事ばかりで、なかなか気持ちに整理がつけられない。
「あぁ、もう出よう。」
考えすぎてのぼせかかった頭は、クラクラとしながら脱衣所の冷気を求め、足が勝手に動き出す。
『暑い……。』
身体中から湯気が立ち上り、暗くなりつつある目の前から手探りでタオルを探す。
『やばい……。倒れそう……。』
酷い立ちくらみに襲われながら、濡れた身体に必死にタオルを巻きつける。
その途端『どしん!』大きな音とともに意識がなくなり脱衣所の床に崩れ落ちる莉子。
授業の準備をしていた湊は何事かと音のする方に駆け出す。
「莉子!莉子!」
激しくノックをするが応答がない。
「莉子、入るぞ!!」
そう一声かけて扉を開けるとタオルこそ巻いてはいたが際どい姿で身体を濡らして倒れていた。
「莉子!!莉子!!」
必死で名前を呼ぶが意識は戻らない。
湊は一瞬ためらったが、そのままにしておくことなど当然出来ず、なるべく見ないように抱き上げる。
莉子の部屋を必死に探しながら二階を彷徨う。
扉を開けてやっと見つけたと、ベットに下ろす。
濡れてる髪や身体を拭きながら、高鳴る鼓動を必死に抑える湊。
『莉子が大変な時に何考えてんだ!俺!!』
莉子の胸元や足に目が行きそうになっては必死に逸らす。
着替えさせてやりたいは山々だったが、みずみずしい彼女の身体にこれ以上触れたら、もう自分が止められなくなると思い、布団をかけて見えないようにした後濡れたタオルを抜き取った。
しばらくすると、心配そうに覗きこむ湊が少しづつ開いていく莉子の瞼の向こうに飛び込んできた。
「……う…、先生……?」
ゆらゆらした視界の中で状況を確認しようとゆっくり起き上がる。
「お、おい!!ちょっと待て!!」
慌てて視線を隠す湊を見た後、自分の身体に目を向けると、一糸纏わぬ姿で起き上がっている事に初めて気がついた。
「や、やだ!!先生、見たんですか?!」
のぼせて倒れた時よりも顔を真っ赤にして叫ぶ莉子。
「い、いや、見てない!!莉子が倒れたんだからそれどころじゃなかったよ!!信じてくれ!!」
必死の弁解に、複雑な気持ちで湊を見遣る。
見てないなら見てないで、それほど魅力のない身体だったかな…とヘコんでしまう。
「莉子大丈夫なら、俺も風呂いただくから…!早く着替えて寝ろよ!!」
そう言って逃げるように部屋を出て行く。
そんな湊の後ろ姿を見送り、乱れた心に蓋をするようにそのまま布団をかぶるのだった…。




