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魅力

 翌朝、いつものように始まるHR。


 昨日の夜の出来事が頭から消えず、湊はどうしても莉子が気になって仕方がない。


 じっと見つめて様子を伺いたい心境に駆られるがそうもいかない。


 一見何も変わららない莉子はマイペースに窓の外を見ている。


 最近では視線も合わないな…と湊はより不安を募らせていく。


 どうにか莉子とコンタクトを自然に取りたいが上手い口実が見つからない。


 結局HRは終わり、一限目が始まっていく。



「はぁ…。」

 職員室でため息をつく湊。



 莉子の事を考えるとすぐこれだ。

 気になりすぎて他のことが手につかなくなってしまう。


 パンパン!と頰を叩いて授業に向かう。






「莉子!新しい塾、どう?」

 杏はあれからどうなったか様子を伺いに来る。



「すごく分かりやすいし、親切だし、最高だよー。勉強がめっちゃ捗る!!」

 自分でも実感できるくらい力がつき始めている莉子は次のテストが楽しみになる位だ。



「そっかー。それじゃ愛しい先生の事も忘れるくらいのめりこめてるって事ね!」

 安心したように莉子の目の前の椅子に座る。



「まぁ、起きてる時はね。」

 ん?と杏は莉子の顔を見る。


「布団に入るとさ…あの病院での二人の時間の事思い出して急に寂しくなるんだよね…。」

 表情が一気に暗くなる莉子。



「……まぁ、誰も入り込めないくらい、ラブラブなオーラ放ちまくりだったもんね…。」

 呆れたようにあの日目撃した事を思い出しては赤面する杏。


「まぁ、我慢もいいけどさ?先生は逢いたいって言ってこないの??先生と生徒とは言えどもあんた達恋人同士でしょ??」

 今の離れている二人の関係をどうしても理解できない。



「……うん。信じてるから…いいんだけど、うちに来てもいいよってお父さんにも言ってもらえてるんだし、少しくらい来てくれてもいいのになぁ…とは思う。」

 つい本音が溢れる。


「そうだよねー!連絡してみれば?うちに来てって!」

 ニヤニヤと莉子を見つめる。


「ダメだよ!私からは連絡しないって自分の中で決めてるんだから!!……こうして毎日顔を見れるだけでも…十分なんだから……。」

 なんだか莉子が可哀想になる杏。


 なんとか出来ないか斗真に相談してみようと思った。





 放課後いつものように塾の自習室に向かう。


 悠太は莉子を見かけるとすぐに、

「こんにちは!」

 と声をかける。



「あぁ、先生こんにちは!昨日は送っていただいてありがとうございました。」

 丁寧に頭を下げる。



「別に帰り道だし、帰りの時間さえ合えばいつでも送ってくよ!」

 そう言って手を振って莉子に背を向ける。






 あぁ…これが湊だったらどんなにいいか……と悲しくなる。


 二時間程自習室で参考書と向き合っていたが、今日は気がつくと湊のことが頭に浮かんでしまってどうも身に入らない。

 一度逢いたくなった気持ちが顔を出すと、なかなか引っ込んではくれないのだ。



 早々に切り上げて少し休もうと莉子は気持ちを切り替え帰り支度をする。



「もう帰るの?」

 莉子を待っていたかのように目の前に現れる悠太。



「はい、今日はなんか疲れてしまって…。帰って早めに寝ます。」

 軽く会釈して通り過ぎる莉子の残り香を感じ思わず莉子の手を掴む。



「先生…?」

 莉子は驚き振り返る。



「ち、ちょっと待って!俺も今終わりだから!一緒に行こう!」

 なんだか挙動不審な悠太の姿が面白くてふふと笑ってしまう莉子。


「…別に大丈夫ですよ、まだ七時だし。」

 そのまま背を向け歩き出す。



「おい、佐々木!今日の鍵閉め当番お前だろ!」

 同僚の講師に呼びとめられ、我に返る。



「すみません…。」

 莉子の事が気になっている事を自覚した悠太は莉子に近づく事を躊躇わない。

 それだけの自分に対する自信と莉子に対する感情が大きなものだった。



 莉子は何も知らずに帰宅する。


 今夜も布団に入って湊を想うのだった…。


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