夜の病室
目を覚まして診察してもらった莉子は、大事をとって一晩入院して、翌朝帰ることになった。
「本当にいいのかね?湊くんも明日学校だろう……?」
あれから莉子の父は二人に『涼』と『華鈴』の話を懐かしそうにしていたが、消灯の時間になり湊が一人付き添いで残って莉子の両親は帰宅する話になった。
「はい、むしろありがたいです。保護者であるお父さんにこんな事を言うのもおかしな話ですが、普段堂々と二人になれる機会が殆どないものですから…。」
湊は莉子と頷きあう。
「まぁ、そうだろうな。これからはうちにいつでも来なさい。私もなんだか弟と話をしているようで、君と話しているのが嬉しいんだ。」
照れ臭そうに笑顔になる莉子の父。
「本当にありがとうございます。莉子さんの受験勉強に差し支えないない程度に今度お邪魔させて頂きます。」
丁寧に頭を下げる。
「明日は莉子さんの様子を見て無理そうならご自宅まで責任持って送り届けますので…。」
そう伝えると「任せたよ。」と一言言って、莉子の両親は手を振って病室を出て行った。
「………。」
二人きりの空間になり、今日一日起こった出来事があまりにも濃厚すぎて二人とも暫く言葉を失くす。
湊はベットに横になる莉子の頭を優しく撫でながらじっと見つめる。
莉子はなんだか恥ずかしくなり、
「先生…そんなに見ないでください………。」
頰を赤らめながら、それでもしっかりと絡み合った視線は湊から逃げられない。
ただただ微笑みながら愛おしそうに……。
言葉のない空間が暫く続いたが、ようやく湊が口を開く。
「なぁ、莉子。俺たち誰がなんと言おうと離れられないように、もう運命で最初から繋がってたんだな…。」
感慨深い表情を見せて優しくため息をつく。
「……うん。」
今まで謎めいていた事が全て紐解かれるように二人の心に馴染んでいく。
「そういえば、田中さん…大丈夫だった?私記憶が無くて…。」
莉子は殴られた後の事が全く耳に入ってこなかった為、ずっと心配をしていた。
「あぁ。莉子、本当にありがとな。ほんとは俺が守らなきゃいけなかったのに…。」
不甲斐ない自分が嫌になる湊。
「きっと、田中さんも先生の事が好きだったんだろうな…。」
天井を見つめながら彼女の心境を察する莉子。
「えっ?そんな事ないだろ??」
意外そうに湊は莉子を見る。
「もう!ほんと鈍感なんだから!!」
呆れた顔をして湊の手を小さく叩く。
「…そう…だったのか?…だったとしたらなんか悪いことしちゃったかな…。」
不安そうに呟く。
「先生の事が好きな女子はたくさんいますよ。でも彼女はその中でも真剣だったと思いますよ?
私だって、先生の事大好きだから分かります。だからって…譲ったりは出来ないけど…。」
モジモジしながら小声になる莉子。
「莉子は俺の心の中、全部独り占めしてるぞ?どこ切っても莉子しか出てこないよ。」
クスクス笑いながら湊は心が温かくなるのを感じる。
「……本当に…?」
赤く染まった顔を布団で半分隠しながら湊を見る。
「当たり前だろ?……じゃ、のぞいて見るか?」
冗談ぽく言うと隠れていた莉子の布団をほんの少しだけ剥がして頰にキスをする。
耳元で、
「莉子…俺を見つけてくれてありがとう…。」
そう囁き額を合わせる。
微笑み合う二人はまた唇を重ねるのだった。




