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繋がり

 病室で片時も離れず莉子の手を握りしめる湊。


 莉子の母が静かに病室に入ってくるが湊は気がつかない。


 心配そうに莉子を見つめる湊の表情が母にはやっぱり二人は特別な関係なのではと想像させてしまう。


 もう少しで莉子の父親も来るので二人だけにしてあげようと病室を出る。




 莉子は夢をずっと見ていた。


『涼』という男性とウエディングドレスを選んだり、二人でチョコレートケーキを美味しそうに食べたり…。

 自分はその『涼』に『華鈴』と呼ばれるていて最高に幸せな気持ちで彼の側に寄り添っていた。



 ニコニコと微笑む莉子の表情を見て湊は安心したように手を握り締めたままウトウトと眠り込んでしまう。




 莉子の父も慌てて駆けつけ両親が揃い、病室の中に入っていく。


「あら…二人とも寝てるのね。」

 莉子と湊の寝顔を見ながら優しく眼差しを向ける母。


「おい、莉子の手、握ってんじゃないか!」

 教師のくせになんなんだコイツは!!と言いたげな顔をしながら起こそうと近づくが、莉子の母に制止される。


「なんだよ、こんなのおかしいだろ!」

 そうだんだんヒートアップしていく父に、

「別にいいじゃないの、手を繋いだくらい!莉子のこと本当に心配してくれてるみたいだし。」

 さっきの湊の莉子を見つめる表情を思い出す。



 莉子の表情が変わり、

「……涼!りょう!!!」

 そう叫んでガバッと起き上がる。

 大量にかいた汗で濡れて乱れた髪に涙が混じる。



「華鈴…、華鈴…!!」

 苦しそうに呻き、湊はまだ目覚めない。



 湊を見て、

「涼……?」

 息を切らしながら名前を呟く。


「涼……?先生…?」

 莉子は夢と現実の狭間で混乱していた。



「か…りん…。」

 口から絞り出るように出てきた名前がなんだか自分の事のようだった。



「…う…。」

 そう目覚めた湊はしっかりと莉子を見て、

「華鈴……。トラックは…?」


 そう自分で口に出しても今まで夢の中で見ていたことと、現実の風景が一致しない。



「………。」



 両親が来ている事にも気付かず二人は言葉を失う。




 ところがそれ以上に驚いているのは莉子の父だった。

「……今、涼って言ったか??莉子?」

 瞬きもせず莉子に近寄る。



「え?…うん、多分。よく覚えてないの。夢で出てくるんだけど。」

 食いつくように莉子の肩を握りしめる父。



「君…、名前は?」

 振り返り湊の顔を見る。



「…新井湊です。はじめまして。莉子さんの担任をしております。」

 湊は恐ろしい夢を見た後で、額にびっしょりと汗をかきながら自己紹介をする。



「あ、あぁ。莉子の父親です。いつも莉子がお世話になってます。」

 我に返り軽く会釈をする莉子の父。



「初めましてで、こんな質問するのは失礼かもしれないが…二人は付き合ってるのか?」

 さっきとは打って変わって穏やかに突然とんでもない質問をする夫に、莉子の母は慌ててしまう。



「あなた!こんな時に何言ってんの?!」

 その言葉を遮るように、

「いいから、本当の事を答えてくれないか?」

 意図の分からない父の質問だったが、いずれわかる事だと湊は、



「はい。こんな立場ですが…莉子さんとお付き合いさせていただいてます。」

 そうはっきりと答えた。



「ちょっと、先生!!」

 莉子はもう取り返しがつかない事をしたと、がっくりと項垂れる。




「湊くん…。本当の事を言ってくれてありがとう。

 君がさっき口に出していた『華鈴』という名前は心当たりはあるのかね?」




「いえ、彼女と出会ってからよく夢を見て…そこに出てくる女性が『華鈴』という名前なんです。

 でも不思議と莉子さんと同じ人物のように思えて…、たまに夢か現実か…今みたいに分からなくなる事があるんです。」

 うまく伝えられているだろうか…と心配になりながら莉子の父にゆくっりと話す。




「先生…、私もおんなじです。『涼』って人が出てきて顔は全然違うんだけど、その人は先生のような気持ちにもなるし…。」

 はぁ…と疲れたようにため息をつく莉子。



「莉子、もう少し横になってな。」

 湊は莉子を優しく支えて横にする。



 そんな二人を見てさぞかし莉子の父は怒っているだろうと、母が顔を覗き込むと目から大量涙を流していた。



「ちょっと!あなた?!どうしたの??」

 急いでハンカチを渡す母。



「……涼は…、二十年程前に亡くなった私の弟なんだ。」



「……え?」

 三人は信じられないと莉子の父を一斉に見る。



「涼は華鈴さんという恋人がいて、結婚式当日にトラックと正面衝突して二人とも亡くなったんだ。」

 思い返しては涙にむせ返る。



「みんな、二人の幸せを祝福してたんだよ…。沢山の人に愛されて…これから人生を二人で歩いて行こうって時に…死んじまった……。」



「生まれ変わりなんてな、俺の歳にもなって何言ってんだって思うだろうが…たとえ夢だったとしてもとても偶然だと思えないんだよ……。」




「お父さん……。」

 莉子も横になりながら枕を濡らす。




「最初はな、教師っていう立場でありながら人の娘に手を出すなんて、なんてふしだらな奴なんだって思ったが…涼は…誰に対しても真っ直ぐで、優しくて、真面目だった…。不思議なんだよ。君が涼に見えてきてね。全然別人のはずなのにな。」

 やっと表情が柔らかくなる父。



「莉子を泣かすことは許さんが、わたしには君たちを引き離すことなんて出来ない…。

 莉子のこと…よろしく頼むよ。」

 そっと湊に手を差し出す。




「ありがとうございます…!」

 湊はその手を取りきつく握手を交わす。



 莉子の母は一人会話には入れなかったが、この三人を見ていて深い絆で繋がっているように見え心から祝福していた。





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