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危機

 教室を出る二人。


 学校の外にでると、もう真っ暗になっていた。


 静かに見上げれば秋風に揺れる木々の間からキラキラと星が散りばめられている。


 こうやって文化祭で遅くなった事を口実に湊と堂々と外を歩けることがとても新鮮だった。



「いつかこんな風に…毎日一緒に堂々と手を繋いで歩きたいね。」

 莉子は普通の恋人同士の未来を思い描きながら微笑む。



「そうだな…。叶うよ、すぐにさ。」

 湊は夢なんかで終わらせまいと決意するかの様に自分に言い聞かせる。



「ねぇ、卒業したら4人でまたどっか遊びに行こうよ!」

 莉子は湊に身体を寄せながらおねだりした。



「みんな、無事卒業したらだぞ!」

 軽く莉子の頭を小突いて微笑む。



 冷たい秋の夜風がヒューっと通り抜ける。



「うぅ…寒い…!」

 莉子は両腕を掴んで震える。



「ほら、これ着ろ。」

 そっと自分の上着を莉子に羽織らせる。



「ダメだよ、先生風邪ひいちゃう…!」

 コートを返そうと脱ぐ仕草を見せると、

「いいんだよ。莉子にはいつも特別なこと、俺は何もしてやれないから…。

 それに、莉子といれば寒くないよ。」

 照れ臭そうに言う。



「先生…ありがと。」

 ふふと嬉しさが表情から滲み出る莉子を愛おしく見つめる。



「なんかさ、俺たちこう言う寒いシュチュエーション、多いな。」

 思い出し笑いをしながら湊は懐かしく振り返る。



「そうだね。でも私いつも先生の温もり分けてもらってる。

 私の体温、半分は先生からもらったものだね。」

 見えないようにそっと手を繋ぐ莉子。



「莉子……。」

 湊は幸せだった。

 彼女の柔らかい手のひらを握り閉め、感触を刻みこむ。

 またいつ…こうして彼女に触れることが出来るだろうか…?

 この2人だけの時間が永遠に終わらないで欲しいと夜空の星に願った。








「……先生…、さっきからつけられてるような気がしない?」

 暫く言葉も交わさず二人は歩いていたが、何やら人の気配を感じていた。


 莉子は気になって振り返る。


「あれ…?田中さん……?」

 見覚えのある彼女の顔が視界に入ってきた途端、優の背後から棒の様な物を振りかざしている大きな人影が見えた。




「あ、危ない!!」

 思わず莉子は優のもとに走り出す。


 思いっきり振りかざされた金属の棒が優を間一髪で守りきった莉子の背中に激しく振り下ろされる。


「……うっ…」

 そのまま気を失う莉子。


 湊は逃げ出だそうとしていた男の手を掴み背負い投げをする。

 地面に打ち付けられた男は背後に手を拘束され身動きが取れなくなった。


 息を切らしながら、

「…田中さん…!!救急車呼んで!」

 優は震えながら、

「…は、はい!」

 とスマホを取り出すl


 あまりの恐怖にうまく操作できない優に、

「田中さん、大丈夫。落ち着いて。」

 穏やかな声で落ち着かせる。


 通りすがりの男性が心配して駆け寄ってくる。



「すみません、こいつ、抑えててもらっていいですか?」

 そう言って、急いで莉子に駆け寄る。



「莉子…!莉子…!!」

 湊は意識の戻らない莉子の身体を抱く。



「…田中さん、すぐに親御さんに連絡して、迎えに来てもらって!

 俺はこのまま莉子に着いていくから。」


 到着する救急車付き添いで乗り込む。


 取り押さえられた男はパトカーに乗り連行されていく。




「……あの…、彼女は大丈夫でしょうか……?」

 救急隊員に恐る恐る聞く湊。



「詳しく検査してみないとなんとも言えないですが…、脈も血圧も安定してますし、まぁ背中は打ってますが外傷も殆どないのでおそらく恐怖で気絶してるだけだとは思いますけどね。」


 その言葉にひとまずホッと胸をなでおろす湊。




 処置も終わり、莉子の両親や、学校への連絡警察の対応に追われて、ようやく莉子の病室に戻る。



「莉子…守ってやれなくてごめんな…。」

 頬を涙が伝う。



 結局検査の結果も特に異常はなく、暫くして目が覚めたら帰ってもいいと言う医者の話に、湊はひたすら莉子の目が覚めるのを静かに待つのだった。




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