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祭りの後

 楽しい時間は瞬く間に過ぎて行く。


 湊のクラスは大好評で終わりを迎えた。




「なんだかあっという間だったね…。」

 生徒達は名残惜しそうに片付けを進める。


 


文化祭が終わったら、いよいよ受験が目の前に見えてくる。

 高校生活で盛り上がれる最後の行事に生徒達は全力で楽しめた充実感でいっぱいだった。





 だいたい片付け終わったところで徐々に解散し、実行委員と優を含めた数名の生徒達は最後に教室の掃除をしてようやく帰る準備をする。







「お、終わったか!おつかれ!」

 湊が教室に様子を伺いにくる。



「先生、色々協力ありがとうございました。」

 残った生徒たちが一斉に頭を下げる。



「何言ってんだよ、ほとんど自分たちの力で成功させたんだろ?よく頑張ったな!」

 にっこりと微笑む湊。



「じゃ、お疲れのとこ申し訳ないけど、最後に実行委員、反省会やるから残って!」

 斗真の肩をポンと叩く。




「え〜!まだあんの??」

 うなだれながらイスにどしんと座り込む斗真。



「いいじゃん、あとちょっとなんだから!」

 杏が斗真をなだめながら、莉子と笑い合う。



「じゃ、その他の生徒は、気をつけて帰ること!」

 そう言って席に着く湊。


 他の生徒達は

「じゃあ、お先に!」

 と散り散りに教室を出て行く。



 その中で優だけは莉子と湊の様子が気になって、帰ったふりをしながら廊下で会話を聞いていた。




「今回の文化祭、反省点いくつか上げなきゃなんないんだけど、何かあるか?」

 湊は色々出る意見をメモして行く。


 出し切れないほどの意見が出るくらい、四人は今回一つの事を成し遂げるために、自分たちの内面もお互いに曝け出し、ぐんと距離が縮まっていた。


「まぁ、色々トラブルもあったけど大成功だったよな!」

 斗真の言葉を最後に一同納得しながら文化祭を締めくくる。




「なんか、寂しくなるなぁ〜。この四人結構息合ってたじゃん?」

 杏は寂しそうに言う。



「ちょっと待て、俺もその中に入ってんのかよ。先生だぞ?」

 おいおいと、冗談混じりに手元にあったファイルで杏の頭ポンと叩く。



「だってさ、なんかそういう先生と生徒の関係とか越えてた瞬間いっぱいあったよね。」

 しみじみと振り返る。



「確かになぁ…。ちょっと特殊だったもんな、この組み合わせ。」

 ふふと笑いながら話す斗真。



「そうだね。こんな風に四人で笑ってられることが、私からすればなんだか奇跡みたいだもん。」

 莉子は今までの複雑に絡み合った赤い糸がようやく解けた気がしていた。



「確かにな…。俺だけジジイだけどな。」

 四人は湊の自虐的な冗談に笑い合う。



「まあ、いいじゃん。年とか立場とか、そんなのに捉われて大切なものを見逃すよりさ。」

 斗真の言葉にみんなで頷きあう。




「……じゃ、帰ろっか!」

 杏の声と共に一斉に立ち上がる。


「俺は、杏送ってくから、先生は莉子送ってってな!」

 斗真は莉子の背中を湊のいる方に押し出した。



 見つめ合い、微笑む莉子と湊の姿を見て、

「やっぱり二人の間に入れる奴は誰もいないな。」

 茶化すように斗真と杏も顔を見合わせる。



「当たり前だろ!なぁ、莉子…!」

 名前で呼んでしまった後に、しまったという顔をする湊。


「はいはい!大丈夫、俺ら以外誰もいないから!!ご馳走さま!」

 やれやれと呆れながら杏と斗真は教室を出て行く。



 息を潜めじっと教室の中を覗いている優。



 二人になったと思っている莉子と湊は急に静かになった教室の空気に戸惑う。


「莉子。俺楽しかったよ、久々に。ありがとな。」

 湊のあんなに優しい眼差しを優は初めて見る。



「私も楽しかったよ。」

 ずっと距離を置いていた時間が埋まって行くような毎日だった。



「また…しばらく教師と生徒に戻るけど…。卒業したら一緒に住む約束、叶えような。」

 莉子の頭を優しくなでる。



「うん……私頑張るから……。絶対待っててね…!」

 莉子は瞳を潤ませる。





 湊はすぐ側にあった教室の電気を消し、静かに莉子を抱きしめキスをする。




「先生…ここじゃ誰かに見つかっちゃうかも…。」

 莉子は心では苦しいほどに湊を求めているのに教室であるこの場所が、まるで裸にされたような恥ずかしさに襲われる。



「なぁ、莉子…。今だけでいいから…湊って呼んでくれ…。」

 教師である事を莉子の前では忘れたかった。



 そっと湊の頰に手を当て、

「……湊…。」

 莉子は愛おしそうに微笑む。




 湊の首に手を回し、身体を密着させた二人は再び唇を重ね合わせる。

 いつまでも、時を忘れたかの様に…。





 優は二人を目の当たりにして、最初から湊の心に自分の入る隙間など全くなかった事を思い知る。


「バカみたい……。」


 息を殺しながら涙を流すのだった。




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