買い出し
10月も後半になり文化祭の準備にみんな励んでいた。
杏と斗真の勧めで文化祭の実行委員を三人でやることになった莉子。
「ほらさ、何かしら実行委員だと担任と絡む事あるっしょ??」
ニヤニヤしながら面白そうにほくそ笑む杏に結局感謝してしまう。
「クラスの出し物はメイド喫茶店に決まったんで、みんなで相談したものを今日買い出しに行こうと思うんだけど、先生も誘おっか!!」
杏はすぐに湊を捕まえて事情を話す。
莉子をチラッと見ていたが、遠目に頷く姿が見えたので始めてこの四人で行動する事にドキドキしてしまう。
『そういえば、杏も斗真も私と先生が付き合っているってことを知ってるってまだ伝えてないんだった…。』
莉子どうしようと慌てふためく。
放課後教室に残った三人は湊が来るのを待つ。
「ごめんごめん、会議が長引いちゃって。お待たせ!」
そう言って教室に入ってくる湊。
「んじゃ、行きましょうか?センセ!」
斗真の掛け声とともに四人は学校を出る。
「今日は無理に誘っちゃってすみませんでした。」
杏は湊の表情を伺いながら頭を下げる。
「いや、いいよ。こういうの楽しいし。」
ふわりと微笑む湊。
杏は莉子を肘でつついて耳元で、
「やっぱりイケメンだよねっ。」
そう興奮しながら話す。
チラッと湊に目をやるとバチっと目が合ってしまう。
ハッと驚き目をそらす莉子。
「ちょっとちょっと。羽鳥さんと、新井センセ?
僕たちはもう二人の事は知ってるんで、ご安心ください!」
斗真が茶化すように湊に伝える。
ギョッとした顔で莉子に顔を向けると、湊の心境を受け止めつつゆっくりと頷く莉子。
「え?ほんとに?」
湊は杏と斗真に再び確認する。
「はい!」
声を合わせて満面の笑みで答える二人に、
「ちょっと、いつから知ってたの?」
生徒である二人にどういう心境でこの話をすればいいのか戸惑いながら聞いていく。
「あぁ、合宿の時はもう知ってましたよ!」
杏はムフフと答える。
「嘘でしょ?まさか…!」
あの山小屋事件を思い出す。
「そのまさかです…!まさか土砂崩れになるとは思わなかったけど!」
顔を真っ赤にして莉子を見る湊。
『何があったか…詳しくは言ってないよ。』
という意味で手を横に振る。
ホッとする湊を見て、
「やっぱりなんかあったんだな!」
斗真が食いついてくる。
「俺はあの時から莉子を諦めるのに必死だったんだから、絶対に大切にしろよ!!」
笑いながらも目が本気の斗真の迫力に、湊は今の彼の気持ちをようやく理解する。
「あぁ…。一生かけて大切にする。必ず約束するから。」
完全に教師ではなくて、ひとりの女性を思う男としての言葉に斗真は納得せざるを得なかった。
「先生、顔が先生じゃ無くなってるよ!」
杏が笑いながら茶々を入れる。
「俺はそれだけ彼女に本気だって事、伝えたかっただけだよ。」
斗真を見て湊は微笑む。
「俺はずーっと莉子に片思いしてたんだからさ、泣かしたら絶対許さないからな!」
斗真の瞳もようやく穏やかになる。
「莉子はいいなー!モテモテで!」
杏がぷうと頰を膨らます。
「杏はこれから俺のこと落とすんだろ?」
斗真の呼び方が名前に変わっている事に気付き、
「うん!」
と嬉しそうに頷く杏。
「なるほど、そういう事か!」
湊は笑顔になる。
買い物を一通り終えて沢山の荷物を持って学校に向かう。
「莉子、持とうか?」
そう言って莉子の荷物も持つ湊。
「うん、ありがと!」
にっこり笑い会う二人を一歩離れた所から見ていた斗真と杏は、
「ちょっとちょっと、先生莉子って呼んでるよ?ヤバイ、ラブラブじゃん!」
初めて見る二人の恋人同士の空気に興奮する二人。
「おい!絶対言うなよ!卒業まで隠し通すのに必死なんだから!」
慌てて杏と斗真に釘をさす。
「はーい!」
ぐふふと笑いながら莉子と湊の背中を眺める二人。
「やっぱ、恋人同士っていいな?」
斗真がボソッと呟く。
「私はいつでも立候補してるからね!」
ニコッと笑う杏をみて斗真も釣られて微笑むのだった。




