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「では、お家の人が送り迎えできない日は、学校側でも可能な限りフォローしたいと思いますので、警察の方にはもう一度状況を伝えてお話しして頂いてもよろしいですか?」

 優の母の感謝の言葉を受け取り、湊は電話越しに頭を下げる。


 側で会話を聞いていた優は、

「本当にありがとうございます。」

 ここまで親身になってくれる湊の気持ちが本当に嬉しかった。



「取り敢えず親御さんの了承を頂けたし、予備校まで送ってくから。」

 湊は穏やかに声をかけた。



 二人は青々とした夏空の下をゆっくりと歩き出す。



 優はこんな風に湊と横に並んで二人で歩いていく姿を何度夢見ただろうか。

 不謹慎だと分かっていても、少しばかり付き纏いをしてきた男に感謝してしまう。



「先生、彼女いるのに私に時間遣っていてご迷惑じゃないですか?」

 優はさりげなく彼女の存在を伺った。



「……一緒にいたくても、なかなかいられない相手なんだ…。だから、そういう事はまぁ…気にするな!

 それよりも早く解決するように学校にも報告して動き出すからさ、安心して受験勉強しなさい!」

 一瞬見えた湊の寂しそうな瞳に優は彼女への愛情を感じざるを得なかった。



「私だったら、何があっても好きな人の側にいるために何だってするのになぁ…。」

 そう口に出してはっと口を抑える。



「そういう気持ちがあっても…どうにもならない恋もあるのだよ。」

 大人びた湊の表情に、優は自分の知らない世界が彼には見えているのだと急に突き放されたように遠くに感じてしまう。



「……そうなんですね…。」

 作り笑いの仕方を必死に思い出しながら、近づけば近づく程、湊を遠くに感じてしまう現実を認めざるを得ない。



「さあ、着いたな。今は特につけられてる感じはしなかったが…。帰りはお母さんが迎えに来てくれるそうだから、テスト頑張るんだぞ!」

 優の背中をポンと押して、足早にその場を立ち去る。


 去っていく湊の後ろ姿をずっと見つめながら、自分の入っていく隙間はないのだと思い知らされるのだった。







「杏………。」

 なかなか口を開こうとしない彼女の背中を優しくさすり、落ち着くのを待つ莉子。

 斗真との間に何があったのか、杏の様子を見ているとなんとなく予想はついたが、自分から先にその話を口に出す事はできなかった。



「……りこ……。」

 肩を震わせ一生懸命話そうとする杏。



「……ん?どうした?」

 杏と同じペースでゆっくりと次の言葉を待つ。



「……あたし……やっぱり、ふられちゃった。

 最初から……分かってたけど、やっぱりはっきり言われちゃうと、流石に堪えるわ……。」

 頑張って笑顔を作る杏を見て、莉子も大きな瞳から涙がこぼれ落ちる。



「……杏、私…何にもしてあげられなくてごめんね…。」

 斗真の自分への気持ちを分かっていながら、杏の気持ちだけを同調して聞いてあげられない立場に心が痛んだ。



「ねぇ…杏?心が通い合って一緒に時間共有出来ることって、本当にすごい事だよね。

 私は先生に気持ちを伝えて、それを受け取ってもらえたけど、その先を維持していくには我慢と危険ばっかり。」

 莉子は杏の心を包み込むように語りかける。



「でもさ、先を諦めちゃったら、そこで何もかも終わっちゃうから…、今はタイミングか悪いだけなんだよ。杏が斗真に気持ちを伝えるのも、今が良くなかっただけで、また時間が経てば変わるかもしれない。」

 莉子をすがるような目で見つめる杏。



「ねぇ、もうすこし、二人で幸せになるタイミング待ってみよう?

 ……きっと、神様が見ててくれるよ。」



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