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親友

「莉子、おはよ!」

 杏が莉子に声をかける。


「おはよ!」

 いつもの莉子より大人びた雰囲気をすぐに察知する杏。


「莉子、昨日何かあったでしょ〜!」

 図星を突かれる杏の言葉に、

「な、何にもないよ!何言ってんの!!」

 一生懸命平静を装う。


「なんかありましたって、顔に書いてあるけど?」

 からかうように杏は莉子の顔を覗き込む。


「…え?やだ…!」

 両手で頰を擦る莉子を見て、

「全く素直なんだか、素直じゃないんだか…!」

 呆れたようにため息をつく。



『という事は、斗真とようやく両思いになったか…。』

 大切な友達の恋を祝福したい気持ちと、終わりを迎えざるを得ない自分の恋心の狭間で、杏は一瞬笑顔の作り方を忘れそうになる。



 二人が繋がりの深い幼馴染で、自分がどれ程斗真に恋心を抱いたところで、入る隙間など全くなかったことくらいは当然分かっていた。


 斗真が莉子を想っている事も、ずっと彼を見てきた杏は誰よりも先に気づいていたのだ。




『いい加減、諦めなきゃ…だな。』

 杏は変化の見える莉子の様子を見て自分に言い聞かせていた。




 チャイムとともに、ガラッと教室の扉が開く。


 いつものように湊は教室に入り、

「おはよう!」

 と元気よく挨拶をする。


 渋々席に戻って行く生徒たちを見送りながら出席をとって行く。


 莉子は、湊が一人一人名前を呼びながら自分の番が来ることを意識し過ぎて心臓が痛くなる。


『いつもの出欠確認で何こんなに緊張してるの?私っ!!』

 コントロールできずにいる自分の感情にあたふたする。



「羽鳥莉子!」


 そう名前を呼ばれ、


「は、はい!」

 思わず声が裏返る。


 湊はいつもなら突っ込むところを、気になって仕方なかったが、どうにも意識しすぎてそのままスルーする。



「はぁ……。」

 なかなか鳴り止まない心臓の音を隠すかのようにうずくまり呼吸を整える。


 そんな莉子を斗真は複雑な表情で見つめるのだった。



 一限目が終わり、休み時間に杏が莉子の元へやってくる。



「ちょっと、莉子。今日なんかおかしいよ?なんかあった?」

 どうしても気になってしまい思い切って聞いてみた。



「杏…。杏は好きな人っているの?」

 今まで莉子の口から一度も出てこなかった恋愛の話に杏は耳を疑う。



「莉子…?やっぱり斗真くんと何かあったんだ…!」

 きっと莉子に何があったか聞いたところで永遠に返事は来ないだろうと自分から切り出す杏。



「えっ?あ、うん…。杏にはずっと黙っててごめん。斗真とも色々あって…。」

 莉子は重い口を開く。


『斗真とも…?』

 まるで斗真以外にも何かがあったかのように言う莉子に自分の知らないなにかがあるのだと察する。


「莉子、今日うちに泊まりに来る?最近ちゃんと話できてなかったし、ここじゃ言いづらいこともあるでしょ?」



「杏…。うん。でも私杏にも言えないこと、まだたくさんあって…。全部正直に話す事は多分出来ないんだけど…、それでも聞いてもらえるかな?」

 自分の中に溜め込んでいた想いを誰かに話して、ほんの少しでも心を解放したいくらいに気持ちがパンパンに膨れ上がっていた。


 親友の間で隠し事はNGだとは分かっていたが、それでも杏を信頼して少しでも相談に乗って欲しかった。



「大丈夫、安心して。莉子から恋愛の話聞けるなんて地球がひっくり返るくらいの事だと私思ってるから!」

 笑いながら杏は話す。


「ありがと…。」

 この時ほど親友がいてよかったと思う事はなかった。



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