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生まれ変わる決意

「二人とも、よく聞きなさい。」

 真っ白なドレスを纏い大きな羽を背中に生やした女性は言う。



「これからあなた達は幸運にも生まれ変われます。」

 小鳥遊華鈴(たかなしかりん)小杉涼(こすぎりょう)は顔を見合わせ奇跡に感謝するとともに笑みが零れる。



「ただし、二人が再び出会えるかどうかはわかりません。時期も小杉さんの方が先の予定です。あなた達が再び出会う確率ははっきり言って非常に低いでしょう…。」

 華鈴と涼を見つめる女性の深い青色の瞳の奥深くには、これから再び歩み出す二人の未来が見えているのだろうか…?



「それは…これで華鈴とはお別れという事ですか…?」

 涼はまた華鈴と人生を一からスタート出来ると一瞬でも思ってしまった自分の浅はかさを恨んだ。



「…あ、あの!私たち、今日結婚式だったんです。十年付き合ってきて、やっと…やっと夫婦になれるはずだったんです…!…お願いです…生まれ変わってもどうか私たちをもう一度一緒になれるように、なんとかしてもらえませんか?!」

 華鈴は天使のようなその女性に震える声ですがりつく。



「俺からもお願いします…!せっかく生まれ変われるのに華鈴の存在がなくなってしまうなんて、そんなの死んでしまうのと同じです!!」

 華鈴の後ろで必死に頭を下げる涼。


「それはできません。あなた達はまだやり残した事がたくさんある中で命を落としてしまった…。現状、成仏はできません。」

顔色一つ変えずに女性は言う。


「あなた達は再び人間として生まれ変われることが、どれほど幸せなことかまだお分かりでないようですね?人間への生まれ変わりを拒否する事も出来ますよ?他の動物や虫などに生まれ変わる事も出来ます。あとは…幽霊となって二人で永遠に彷徨う道もありますが…、遺された者の辛い現実を指を咥えてただ永遠とみているだけというのは…あまりオススメは出来ませんね。」

あっさりと別の選択肢を二人に提案する。



「……。」

 二人は次に発する正しい言葉が思い浮かばない…。






 なぜ二人が今この真っ白な世界にいるのか?


 そう、二人は今日、晴れて夫婦になるはずだった。

 式場に向かう華鈴と涼の乗った車と、大型トラックが正面衝突なんてしなければ…。



 初めて出逢ったのは中学一年生の入学式。

 同じクラスでたまたま席が隣同志になった二人が心の距離を縮めるまでに、そう時間はかからなかった。


 二人はまるでふたごのように、大好物がチョコレートケーキで好きな教科が国語。

 嫌いな先生は社会の富田先生。

 好きなアーティストから、極め付けは誕生日まで、運命を感じざるを得ない程の共通点にお互い意識しない理由がなかった。



 なんの障害もなければ、喧嘩をする事もない。

 順風満帆な二人の恋人生活を経て、いよいよ夫婦になろうとしていた矢先の出来事だった。



 初めて二人の前に立ちはだかる壁はあまりにも大きすぎた。



「お二人の気持ちがわからないわけではないんです。しかし私にはあなた達をまた引き合わせるという力は残念ながらありません。」

 悲しみに打ちひしがれる二人の姿を見下ろしながら、淡々と彼女は続ける。



「ただ、一日に数え切れないほどの魂がここを通過する中で、人間に生まれ変われる権利を手にする者は本当に僅かです。成仏するにはまだ早すぎる命にしかこの権利は与えられないのですよ?」

 表情の読み取れない天使のような女性の口元が涼は少しばかり緩んだように見えた。


「さて、そろそろ時間ですよ?どうされますか?」





 涼は華鈴を見つめ口を開く。

「生まれ変わらせてください、人間に!」

 強い決意を持った涼の瞳を華鈴はもう信じるしかないと思った。


「……あの、私も…。…私も人間に生まれ変わらせてください!!」

 涼の手をしっかりと握る。



「華鈴……。きっと、また逢える。俺たち、そんじょそこらの結びつきとはレベルが違うだろ?」

 にっこりと笑い華鈴を安心させる涼。



「涼…。私、絶対涼のこと探すから…!待っててね…!」

 華鈴のチャームポイントだった大きな目から涙が零れ落ちる。




 その瞬間、目も開けられないほどの光が二人を包み込んでいく。

 涼と華鈴はきつく抱きしめあいながら、これからの新しい人生に立ち向かう決心を誓いあう。



「華鈴!!」


「涼……!!」


 お互いの名前を呼び合う最期の瞬間を忘れたくないと、消え行く意識の中で心に刻みつけるのだった…。

また少しづつ更新していきますのでお付き合いください(*´-`)

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