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王国事情 その2

 支援要請が届くまで、知識がない俺たちにはどうする事も出来ない。


 いや、動く事はできる。⋯⋯が、動いたとしても自分たちも含めて、皆もまだ困惑状態であり、王がいなくなったこの街は⋯⋯ただ、なんとなくいつも通りの行動を取るだけなのであった。


「やはり、貴族側に買われた生徒は殆どが一緒に行ってしまったらしいな」


 俺たちは午前中に街を一通りまわって、元生徒達を確認していく。


 それ以外の人達にも話を聞いていくと、やはり召喚された人達が大半であり、この領域が世界の全てだと疑わなかった者が多かったのである。


 要するに、森に駆り出されなかった人達は安全圏の中で飼われていたと同じらしい。その中で才能を開花した場合、再び貴族達に飼われていく者達もいたとの事である。


 疑問に思わなかったのかと聞いてみたら、『格の違う生活を想像できるか? できないだろうし、この街から出ていたなんて思えれる訳がない⋯』との事。


「ふむ。やはり、生徒数はかなり減っているな。まぁ、実際は貴族の生活は元の世界より良かったのだろうな。実際、中庭に集められた時には数十人はいなかったのだが、亡くなった先生や生徒数も合わせると半分近くはいないようだ」


 先輩が作った名簿を見て、即座に判断していた。


「王様が魔法技術の為に実験台にしてたとかはあるんですか?」


「私が見る限りそれはなかったと思う。どちらかというと才能のある人間を伸ばして出荷して資金を集めていたと思う」


「中庭に集まらなかった生徒って⋯⋯どうなったんですかね⋯」


「考えたくはないんだが、死んでいる可能性は高い。だが、その中でも生きている者もいるかもしれないな」


「そういえば、学校の場所って分かるんですか?」


「残念だが⋯⋯不明だ。君を捜索している時に何度か高い所に上がって見たが、それらしいのはなかったよ」


「そっか⋯⋯」


「さて、とりあえず現状把握は済んだし。午後からはエルフの村にいくのだろう? その為に巡回しながらエルフの事を聞いていたのだろうし」


「そうですね。(しがらみ)がなくなったので、ぜひエルフ達もこの街に住んでもらいたいです」


 いままで王といた研究者達が消えた事で、屋敷の大半に空きができたのである。


『この街の人達に住まないか?』と、一応聞いてみたが、大きい屋敷に住むと責任感を負わされる意識が強く、現状のままいいと言われた為、エルフ達にも聞いてみようと思ったのであった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「おにぃちゃーん」


 エルフの村に入ると否や、双子の天使が抱きついてくる。


「また⋯大きくなったか?」


「うん! お兄ちゃんの事をずっと想ってたら大っきくなったよ!」


「そうか⋯そんなに想ってくれて嬉しいよ」

(小学生から中学生になった感じか⋯)

 美少女は更に成長していた。

(てか、想いの強さで成長するというのも面白いけど⋯⋯中学生⋯⋯これ以上成長したら⋯)


「それでね、お兄ちゃんにお客さんが来てるよ。本当は倒した方がいいかなって思ったんだけど、お兄ちゃんの匂いする服をもっていたから、待ってもらってた」


「うん? お客さん?」

 誰だろう? 服って⋯⋯。


 案内されると、あの時別れた数体のゴブリンがいた。


「おヒサシです、ノ⋯アさマ」


「喋った!!!」


「そうなの。この村に来た時はゴブリンの襲来かと思ってたんだけど、両手をあげてお兄ちゃんの事を言っていたから話を聞いてみたら、返したいものがあるから待たしてほしいって」


 どうやら、敵に敬意を払った姿に憧れを抱き、言葉も勉強して覚えていったらしい。持ってきた服は制服であり、破けている箇所などはモンスターの糸を使い綺麗に縫われていた。


「⋯ありがとうな。なんかかなり綺麗になってビックリだよ」


「おホメにあズかりコウエイ」


「新しい住居は見つかったのか?」


「イや⋯今はテンてんとイドウしてル」


「そうか⋯⋯」

 少し考える。エルフ達も話ができるゴブリンなら攻撃をしなかったのなら⋯⋯街に連れて行く事はできるかも?


「丁度いいか。サラとティヤ、村長を呼んできてもらっていいか?」


 集まると、早速本題に入る。


「⋯⋯そういうわけで、この領域は形として俺が代表となったんだ」


 大まかな説明すると、エルフ達は本来なら戦争をして自由を勝ち取るしか道は無かったが、争いの可能性も消え現状が変わる事に大いに喜んでくれていた。


「だから、もし良ければ街に行って住まないか? 今はみんなで協力していくのが最善だと思う。残された殆どは召喚された者だからね」


「お兄ちゃんと住めるなら賛成ー! それにお姉ちゃんからはお兄ちゃんの匂いがす⋯⋯」

「うわぁぁ!」

 先輩が2人の口を押さえる。


「一緒に寝ただけだと説明をしてくるから、私達の事は気にしないで進めてくれ」


 そう言いながら何処かにいってしまい、エルフ達は何事も無かったようにスルーして同意してくれた。


「ワタシたちはヤメテおク」


 ゴブリンは拒否をした。


「ゴブリン、ヒトではない、森でイキテく。それニ、この森たくさんタカラある。それサガス楽シイ。⋯⋯コレなどガ、そノタカラ」


 ゴソゴソと出したのはシャーペンだった。


「シャーペン⋯これって、どこで発見したんだ?」


「オオきなハコのなか。アナいっぱいアイてる、ハイリヤスイ」


「⋯悪いが、そこまで案内してもらえるか?」


「? わかリマシた」


 その間にエルフ達は引越しの用意をしてもらい、ゴブリンに案内されながら学校と思わしき場所に行く。


「⋯⋯⋯⋯」


 懐かしの校舎が見える。見えたが、それはもうかつての形が、かろうじて保っている程度であった。


 中に入り、グルリとまわると疑問が浮上する。


「⋯先輩どう思います?」


「私もノア君が考えている事と同じだと思う」


 物品は王国が持っていった可能性は大いにあるが、細かな物は分解、もしくは解体されていってると感じた。校舎の屋上は既にないが、その崩れて見えている鉄筋などが綺麗に切断されており、鉄やガラスなども壊れてなく外せる場所は無くなっていた。


「この森って他の種族はいるのか?」


「わからナイ。ココ、ずっとミテいたコトもある。外からクルものいない」


 見張りをしたことはあるが、外からの様子はないと⋯⋯。


「とりあえず場所は分かったんだ。調べるのも大事だが、まずはやるべき事をやってからにしよう。今日まで生きているなら、何か生きる手立てがあるだろうし大丈夫だと思う」


 食べ物関係ではなく、鉄などを取る余裕があるって事は生きていく過程で必要になったからだと考える。


「そうですね」


 学校の黒板がまだ残っていた教室に、チョークの粉を使い伝言メッセージを書いておく。


「ソレは?」

 ゴブリンが不思議そうに見る


「伝言だよ。もし、生き残りがいるならここに何か書かれると思う。ここに何か探しに来るなら、その度に見てもらっても良いか?」


「⋯ワカった」



 こうして伝言だけを残し、エルフの村に帰るとすっかりと準備は整っていた。


「ノアさマ、ここツカワシてもらってヨイか?」


 ゴブリン達は俺とのやりとりを考慮してくれて、ここを拠点にして動くように考えてくれていた。


 拠点を作ると自然にゴブリンの数は増えていくが、他の種族を襲ったりはせず、素材を加工したり、タカラを探したり、この領域の地図を作ってくれると言ってくれたのである。


 エルフ達も村を明け渡す事は同意してくれて、荒地になってモンスターが来ないように結界魔法の維持や作物が実るように、大地の加護はそのままにしてくれた。


(落ち着いたらゴブリン達にもお礼しないとな⋯)



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 街に戻り、屋敷に案内する。


 使い方を教えると、大変嬉しそうではあったけど、その分戸惑いを感じていた。


「街のみんなもビックリしてましたね⋯」


「それはそうだろう⋯。エルフといっても見た者はいなかったんだろうし。容姿も目立つからな⋯」


 すぐ戻ると言って、一旦お城に帰ると中庭の方がとても騒がしく、行ってみると大量の人が集まっていた。


「お待ちしておりました。新剣王様」


「⋯⋯⋯」

「ノア君、君の事だぞ」

 先輩につつかれて気づく。

(慣れねぇ⋯⋯)


「申し訳ない。剣王ではないので⋯普通にノアとでも呼んでください」


「分かりました、ノア様。支援要請をうけ参りましたフィリックと申します。以後、お見知り置きを」


 昨日の今日で支援要請が来るとは⋯⋯流石は速の王なのかイオさんだからなのか⋯有難いこの上なかった。


 長身のイケメン眼鏡男子が頭を下げてくるので、こちらも慌てて合わせる。


「ま、待ってください。代表とか王とか思わなくて普通に接してほしいんですが⋯」


「残念ですが、それはできかねません。ノア様の心構え次第では、調子に乗る輩も出てくるはずですので、立場としての重要性は理解はしていただきたい」


「わ⋯分かりました」


「少ししたら慣れてくると思うので、あまり深くは考えなくてよろしいと思いますよ。個人的には恩をお返ししたい所存ですので」


「恩ですか? 会うのは初めてだと思いますが」


「そうですね。会うのは初めてですが、同族がお世話になったと聞きましたよ」

 そういって耳を見せると、ピンッととんがっていた。


「エルフだったんですね」


「そうです。ですので支援要請の話を受け、まとめ役として働かせて頂きますのでよろしくお願いします」


「自分たちでは何から動いて良かったのか分からなかったので、午前中に住民の名簿を作り、たった今、村からエルフ達を連れて来たところで⋯⋯家とか勝手に渡したんですが⋯⋯まずかったですかね?」

 名簿を渡す。


 フィリックさんが、それを見て少し考えている。


「名簿は、仕事の手間が省けとても助かりますので、このまま私がもっていてもよろしいですか?」


「えぇ、大丈夫です」


「ありがとうございます。あと、家の件は問題ないのですが⋯⋯ノア様さえ宜しければ、エルフ達も王城の部屋を提供されてはどうでしょうか? 王城は見ての通り広いですから、掃除や炊事の管理やサポートでエルフ達と共同生活をするのもありだと思います」


 今までの掃除などは魔法で済ましていたらしく、その恩恵がなくなった状態で少人数で住むには勿体無いとの事。


「俺は特に問題はないんですが⋯。街のみんなはどうなんでしょう? 屋敷は特に興味なさそうにしてましたが⋯」


「問題ないと思いますよ。これから街の皆さんには色々と伝えて行く予定ですので、むしろそれどころではないと思われます。そして、エルフ達は引越しなど外に動く事は基本はなく、現状の生活改善を最優先に致しますので、ノア様のサポートなど出来るようにしておいた方が後々が楽になると思います」


 中には外に出るエルフもいるが、転々と引越しするような習性はもっておらず、生活拠点を潤して、その場で静かに生活いくのを優先とする種族だそうだ。


「では、私の方は最終確認を致しておきますので、エルフの方はよろしくお願いします」


 もう一度、屋敷に向かいエルフ達に話すと問題なく了承してくれて王城に向かう。


 既に最終確認をすましたフィリックさんは、教育係達の屋敷配分を書類にして渡してくれた。


 今日はひとます、街の監査、状態などを見た上で、明日から他国の話やこの世界のルールなどを個々に聞いて対応していくらしい。


 まとめ役のフィリックさんは王城でエルフ達と一緒に過ごして、人間の生活や習慣などを教えていってくれる事になった。

【その夜の話】


「フィリックさんは信用できそうだな。いや⋯⋯領域外の世界は普通と変わらないのだと思わされたよ」


 先輩がフィリックさんと会話をした率直な感想がそれであり、ここはやはり箱庭の世界だと痛感させられていた。


 そしてその夜⋯現在、俺は自分のベットで正座をしている。


 隣からはシャワーの音が聞こえる。


 サラとティヤの天使が入浴しており、先輩も一緒に入っておりガールズトークが聞こえていた。


 先輩の言葉が、頭の中をグルグルと駈けている。


『双子と私とイオさんは了承済だ』


 どうなんだ⋯⋯? キッカケってどうやって作んの? 肉食系ならヤッホイ! かもしれないが、初心者にはハードルが高すぎる。


 その場面(シチュエーション)を想像しながら悶々と繰り返す。


「あっ! まて! 身体をちゃんと拭かないと風邪をひくぞ」


 ガチャリと扉が開き、サラとティヤがパンツ一丁でこちらに走るその奥で、先輩の濡れた身体がとても妖艶に感じた俺はすっかり眼を奪われた。


「こら⋯⋯流石に、そこまで凝視されると恥ずかしいのだが⋯」

 そう言いながら、扉は自然としまっていく。


 双子がそのまま俺に向かってダイブする。


『お兄ちゃん、顔が真っ赤っかだよ? 大丈夫?」

「あ⋯⋯あぁ、大丈夫だ」


 双子にダイブされて、押し倒された形になった俺に映し出されたのは双子の白い肌に濡れた髪。


 その雫が俺に落ちた瞬間に蒸発したんじゃないかと思うほど、意識が覚醒するのと同時に顔が熱いのがわかった。


 ひとまず起き上がり、タオルで双子を拭いていくが、白い肌は触れると指を離さないぐらいにモチモチとしており、その髪は一本一本宝石の様に綺麗であった。


「んっ! 気持ちいい。お兄ちゃんの手⋯熱くて、大きくて気持ちいいにゃぁ〜」

 ティヤもサラも猫みたいに蕩けている。


 先輩が着替えを終えて出てくると、入れ替わり俺も風呂に入ろうとする。


(右が私で、真ん中がティヤ、左がサラのだ)

「??」

 ボソリと何かを言われる。


 中に入ると、3つの桶には水が入っていた。

「なんぞこれ⋯」

 飲めという事なのか身体にかけろなのか、いまいちよく分からなかったが⋯たった今、この場にはあの3人が入っていた事だけは実感させられる。


「てか、まずはコレをどうにかせんと不味いよな」


 朝は賢者モードに入っていたが、夜には再び猛々モードである。年頃の男なのでしょうがないが⋯⋯1人になる時間がない異世界では死活問題だと知る。


(1人になる時間を確保しないとな)


 そう思いながら、俺は鎮める為に冷水かぶったのである。


 風呂から出ると、3人とも既に寝ていた。


「早いな⋯⋯まぁ⋯助かるけど」

 3人ともお風呂上がりで薄着でいい匂いがするので、起きていたら正直に鎮める事は不可能だと感じていた。


 ベットは4人で寝てもまだゆとりがあるけど、そこに行く勇気はなく、ソファで寝ようとすると紙が貼られていた。


【ここは寝る場所ではない。ここで寝る=喰べてもいい】


「⋯⋯⋯」

 他の場所を探すもやはり同じように書かれていた為、ベットで寝るしか選択肢はないのであった。


「にしても、眠りやすいのは認めるけど、そんなに早く寝たら朝目覚めるのが早そうだけど、何かやってんのかな?」


 少し疑問を感じたのだが、そもそも早く寝る習慣はない俺には無縁の話なので、フィスと少し遊んだ後ベットに入りそのまま就寝した。

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