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【ファンタジー】始まりの日
【お題:獣、剣 テーマ:夜明け 文字数:500字】
荷車の上で身を揺すられ、少年はうっすらと目を覚ました。
毛布から顔を出し、眠気を払うように頭を振る。
平原の向こう、地平線からは光がこぼれ、徐々に夜闇が薄まっていく。
夜明けだ。
「よう、ぐっすり眠れたか?」
馬を引く商人の声。少年は困ったように頷いた。
本当は緊張と乗り心地の悪さで寝不足だ。
だが乗せてもらっている以上、文句は言えない。
空は黒から青へ、瞬く間に変わっていく。
眠っていた人や魔物も、次期に活動を始めるだろう。
明るくなった視界に、目的地の街の外門が見えてきた。
「小僧、街に入るのは初めてか?」
「……うん」
「なら被っていけ」
と、商人の手から少年へ、フード付きマントが投げられる。
「この街の連中は排他的だ。種族は隠しとけ。頭の耳は人間社会じゃ目立つしな」
「……ありがと」
やはりこの街でも“人間”が支配的なのかと、一族を襲われた身の少年は目を伏せる。
正直、怖い。でも立ち止まるわけにはいかない。
たとえその腰に剣はなくとも、進まなくては。
「着いたぞ。さて……覚悟はいいか?」
商人の問いに、少年は力強く頷く。
荷車から降りると、一陣の風がマントを揺らした。
少年の旅はここから始まる。
獣人族の日常を取り戻す旅が。




