【シリアス】アリとキリギリスと僕
【お題:蟻、鬼 テーマ:特になし 文字数:493字】
木陰にしゃがみ込んで、じっと地面を見つめる。
蟻さん達は今日も忙しそうだ。キリギリスや僕とは大違い。来る日も来る日もエサを集めて、皆で協力しながら生きている。
協調性。学校で習ったばかりの言葉が頭をよぎる。
……僕に最も足りないものらしい。
「おーい蓮くーん、何してるのー?」
遠くから僕を呼ぶ声。あの走り方は……誰だっけ? 確か同じクラスの女の子だった気がする。
「今向こうでね、皆で鬼ごっこしようって。蓮くんも行こ?」
「……僕はいいよ」
「そう?」なんて首をかしげて、彼女は僕の隣に座りこんだ。
「どうして? 皆で遊んだ方が楽しいのに」
「……そうは思えないから」
「一人の方が落ち着くの?」
「まだマシ」
「ふーん」
そこで会話は途切れてしまう。
「じゃあ私行くね。蓮くんも気が向いたら来てね」
立ち上がって駆け出した彼女の姿は、笑顔の皆に溶け込んでいって。
僕に見せた表情よりも、はるかに輝いて見えた。
「……蟻さんってすごいね」
俯いて映った視界に、思わずポツリとこぼす。
蟻のように仲間と楽しく暮らすこともできず、
キリギリスのように一人を目一杯楽しむことすらできないのなら。
……僕は一体、どう生きればいいんだろうね。