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【ファンタジー】本物の中二病
【お題:炎、ミカン、中学校 テーマ:最期の善行 文字数:500字】
“箱の中の腐ったミカンは他のミカンをも腐らせる”
とある先生の名言だそうだ。
だがその模倣者までもが、正しい認識をするとは限らない。
「トキ君早く! 私たちも逃げないと!」
黒煙に包まれた教室の中で、少女が叫ぶ。
少年は動こうとしない。火の手はそこまで迫っている。
もう校舎に彼ら以外の人はいない。教師も、生徒も、我先にと逃げ出した。
逃げ遅れた者は、炎に退路を断たれ取り残された少女と、
そこへ姿を見せた、教師に“腐ったミカン”と称されていた少年だった。
「お前だけでも行けよ。俺はここに留まる」
「……何言ってるの? このままじゃ!」
「お前にはコレが見えないんだろう?」
虚空を指差す少年に、少女は答えることができない。
だが彼の目には映る。
この火事は、ただの炎ではない。
《魔結界》から流れる《黒炎》。
――魔界からの侵略だ。
「ここは俺が止める。お前はさっさと逃げろ」
「でも!」
「いいから行けっ!」
少年は少女を抱えると、人ならざる力で窓に向け投げる。
ガシャン! と三階の窓から少女が落ちる。
消防隊が用意したマットに軟着陸する。
「トキ君っ!」
大人達に保護されながら、少女は叫ぶ。
数時間後、炎は跡形もなく消滅した。
少年の姿とともに。




