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【ファンタジー】密かに仕込まれた暗殺の刃
【お題:悪魔、先例のない主従関係 テーマ:反逆 文字数:498字】
闇を侵食するかのように、紅き月光が館の中を照らす。
玉座の魔女が、妖艶な微笑を浮かべた。
「ようこそ新しい使い魔さん。それとも『魔』と呼ばれるのは不服?」
大きな魔法陣の上で跪く少年を、魔女はジッと見下ろす。
「悪いけど、人間を下僕に迎えるのは先例がないの。だから――」
「…………構いません」
少年は顔を上げぬまま、厳かに告げた。
「あなた様にお仕えするため、人の心はとうに捨てておりますゆえ」
「……ふぅん」
スッと、値踏みするように魔女は瞳を細めた。
そしてクスリ、と楽しげに笑うと、
「いいわ、面白いじゃない」
魔女が立ち上がり、両手を広げた。途端、魔法陣から緋色の光が浮かび上がった。
光は血管のように床を這い、少年を包む。
隷従の儀式が始まった。
その間少年は……魔女を、鋭く睨みつけていた。
魔女は知らない。
いや、とうに忘れたことだろう。
数年前、とある幼子から両親を奪い、悪魔に喰わせたことなど。
それを見た幼子が、どれほど憎悪の涙を流したかなど。
「歓迎するわ。あなたにはその身すべてを捧げてもらう」
「……御意に」
紅き災悪の魔女の前で、少年は誓いの言葉とともに頭を垂れる。
後ろ手にひっそりと、ナイフを握りしめながら。




