【コメディー】芋一色
【お題:食卓、芋、料理人 テーマ:日常 文字数:449字】
「……姉さん、何これ?」
「あら、夕飯は何でもいいって言ったのはあなたでしょ?」
「そうだけど……」
食卓に並んだ品々を見て、僕は愕然とした。
今夜のメニューは、とろろご飯にジャガイモ入り味噌汁。主菜は長いもステーキ、里いもの煮物、ポテトサラダ。デザートは手作りのスイートポテトだそうだ。
「今晩のテーマは『芋』よ」
「だろうね」
しかも調味料と米を除いて、芋以外の食材は一切不使用という徹底ぶり。彼女の辞書に栄養バランスという言葉はないのだろうか。
「どう? すごいでしょ。一流の料理人ともなれば、縛りプレイも余裕なのよ」
「家族の食事をゲーム感覚で作らないでくれ」
僕はため息をつくとひとまず席に着いた。
どうせ何を言っても、彼女が再び台所に立つことはないんだ。ならとっとと諦めてさっさとテーブルをきれいにしてしまおう。
「いただきます」
「はーい、召し上がれ」
笑顔の姉さんを無視して味噌汁を一口すする。
続いて煮物、サラダと次々に箸を進める。
……箸が止まらない。
「……スゲェ、うめぇ……ッ!」
何故だか、凄く負けた気がした。