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【シリアス】落日の味は辛く
【お題:唐辛子、王女 テーマ:暗闇 文字数:354字】
路地裏の陰で膝を抱えて、最後の食料に齧りつく。
こんな赤い実、何の足しにもならないけど。
無いよりマシだと、汚れた麻の服で涙をぬぐっては、また齧る。
クーデターにより王政が解体されてから早半年。
今や元王女という肩書きは、家畜以下の汚名でしかない。
あぁ……お父様、お母様。
……もう、私は限界です。
惨めな生活にではありません。死ぬことができないのがツライのです。
形見のナイフも何度も喉元に当てがいました。
なのに、恐怖心とプライドが、邪魔するのです。
あぁ……誰でも構いません。
堕ちきってしまう前に、どうか私を……。
「……ぅ……ぅう……!」
いくら嗚咽を噛み殺しても、
弱さと、情けなさと、惨めさと、碌でなさと、悲しさと、申し訳なさが、ぼたぼたと溢れてきて。
せめて、臆病者の自分を痛めつけるようにと。
乾いた唐辛子を、また齧る。