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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ロスカットさん

ロスカットさんって血とか通ってなさそう 為替階段

作者: 真似巾

小説なんて書いたこと無い。

 黒髪の美女がなだらかな螺旋階段を降りていく。

 美女は凶器を持っているわけではなかったが、幾ばくかの狂気を内に秘めているのは疑い無い。長い髪を揺らしながら、彼女の平均からすれば比較的ゆっくりと歩く。

 百十と何某。そんな数字の書かれた段を踏みしめる。少ないながらも幸せと落胆が世界に生じたことを感じる。


 階段は随分と広い。

 中央はぽっかりと空いていて、望めばいつでも飛び降りることができる。飛び降りるとなれば、大抵は痛い目を見ることになるだろうが、必要ならば飛ばなければならない。

 階段は広く、10や20ではきかない人数が並ぶこともできる。

 階段には参加しなければならないのかといわれれば否だ。自分からたどりつく者もいるが、いつも参加希望者を募集している人達に連れられてくるのが常だった。


 幸せがあるのだからこの歩みには意味があるだろうか?絶望が起きるのであるからこの歩みは止めた方がいいのだろうか?自問したこともあったかもしれない。

 しかし少なくとも、止まることは誰も望んでいなかった。世界に生まれた時から、動くことを望まれた。

 大きくなるよう望まれることが多かったが、小さくあることを望む人達もいた。大抵は大きくなることを望まれるので、そうなることが多かった。

 望まれるからこそ彼女は動く。希望もまた彼女の原動力なのだから。


「来るな!来るなよぉぉおおお!」

 男が階段を降りていく。

 涙と鼻水でぐしゃぐしゃの、悲嘆と絶望を混ぜこぜにした顔で走る。

 帽子も、上着も、大事な鞄も投げ捨てて、慌てた様子で駆けていく。

 どうにも、男の原動力に希望は残っていない様だった。


 今、私は階段を降りている。ただそれだけだというのに。

 そんなに怖がらなくても良いんじゃないだろうか?

 別に怖がらせるつもりはないのだが、あの様子ではそのうち自分の腕も引きちぎりそうだな。と、思っていたら男が実際にそうした。


 中途半端に心得ているせいで、苦しみは長く続く。とはいえ、慌てるのが遅すぎたのだろう。()()()()()()()()()()()()()()のだろうか?あっという間に身動きが取れなくなった。


「くそ!くそ!!くそ!!!くそ!!!!」

 達磨となった男は、踊り場の先で仰向けに、何やら世の中を恨んで呪詛を吐き始めた。最早飛び降りることもままならないのだから、他にできることはない。


 折角なら楽しい歌でも歌えばいいのに。

 ちょっと私を上がるようにつついただけでこの有様なので、悲しみは分からないではない。でも、世の中が不条理だということは知って受け入れて欲しい。いい大人なんだから。少なくとも他の現実に比べて、ここは予想外の不条理というものは起きにくい場所なのだから。


 もうあと何段もない。呪いの言葉を吐き続けるよりはいいだろう。踊り場から、すっと踏み出して、踏み潰して、退場させてやろうと思ったが、見えない壁に阻まれた。

 踊り場には点ゼロゼロの文字。

 百十の壁だ。

 

 なんどか軽く蹴ってみる。ダメだ。裸足のつま先がちょっと痛い。

 結局のところ、自由意志で進んでいるわけではないのだと実感する。


 どうやらとどめを刺されないようだと思った男が虚ろにニヤニヤしだしたので少しイラっとする。噛り付いてさえいれば満足するのであれば()()()()()()()()()()()()()()のに。

 

 さて、どうしたものだろうか。見えない壁と対峙していても埒が明かない・・・というわけでもないが、楽しいものではないので世界の認識を変容させていく。


 見えない壁は青銅の鎧騎士と成った。胴体には百十の文字。

 随分と大きな剣を携えて、男を守るように立っている。

 冴えない達磨も美少年にでもなればいいのに。思いながら左手に現れた赤黒の刺突剣で鎧を突き刺す。私が攻め手だ。鎧は剣と盾でもって弾く。黒い刀身が何度か鎧に届くが、意に介した風はない。金属のぶつかる良い音がする。一歩も引かずに殴り返してくる。当たると痛いので階段を上がって引く。そして再び斬りあって、引く。繰り返す。

 段々と背中に力を感じる。この殺陣は召還の儀式だ。黒い黒い大きな獣がその姿を現しつつある。見ずともわかる、地獄の獣の醜悪な臭いが漂う。


 踊り場を駆け抜けて食い荒らす準備が整ったことが知らされ、獣は鎧の騎士に飛び掛った。


 ・・・達磨男の命運もここまでと思ったが、なかなかどうして鎧騎士は強かった。獣は一撃で粉砕されて、悲しく一声啼いて雲散霧消。

 刺突剣を放り出し、右手で顔を覆って天を仰ぐ。どうにもこの踊り場は抜けることができない様だった。


 鎧騎士が階段の上を剣で示す。登れ、という強い力を感じて、思い切ってぽーんと階段を跳び登る。

 達磨は嬉しそうにしていた。苦しみが続くだけなんじゃないかとは思うものの、まあ、いいか、とも思った。


 世界が一瞬ぶれて感じられた。


 ぐ し ゃ り


 達磨が潰れたことを確認した鎧騎士の、何か言いたげな視線を感じる。

 別に私がぶれた訳ではないのだから、そんな貌はしないで欲しい。


「スプレッドよ」

 

 白髪の美女が逃げるように、階段をさっさと登っていく。


 ヒゲを残しながら。

とりあえず勢いで書いたら2時間もかかったよ!寝るわ!

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