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悪役令嬢、闇に潜み、夜の街に生きて 3
3 そして、きれいな寝息で
生まれ育ったあの街から離れ
この無駄に騒がしい、白い都会で過ごす
いまこのとき
何人の女が、どこで、どれほど、泣いているのだろう
どんな目にあって。
そしてどんな目にあったとしても
そんなに簡単に
思いどおりにはなりはしないから
思いどおりにしようとも、願えなかった。
願えないまま、風吹くたそがれに遠い目が乾く。
あしたが来ない夜を
すごしたこと、おあり?
わたくしはあります、決して明けない。
だから、夜を、生きるのです。
だからですよ。
だから、人に好かれるかどうかは問題じゃあ、ない
ほんとうに、やりたいかどうか──ですよ
ですよ、ね?
こころに闇なき気楽な姫よ、どうか
貴女がどうか、汚されてしまいませんように
いつも
綺麗な寝息で 、眠れますように。