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人生最後に見る君  作者: Re:over
第2章〜中学校編〜
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39話 消えない傷

今回の話、本気で何か説明不足がありそうだから(自分では気づけてない)、わからないところがあったら質問お願いしたいですm(_ _)m


 心臓が止まる様子も見せずに激しく鳴るので、息苦しく、今にも意識が飛びそうなほどめまいがする。


 僕が殺したのだ。大夢を。


 罪悪感よりも、もっと怖い何か、幽霊に取り憑かれてしまったような感覚が体の隅々まで汚染していく。そして、涙を忘れるほどの痙攣が波のように押し寄せてくる。何とも形容し難い悲しさと苦しさに瞬きすら忘れてしまう。


「さぁ、第2ラウンドと行こうか」


 この様子を眺め、楽しそうな口調で津久田は喋る。生きるとは。僕は人を殺し、自分だけ生き長らえて満足しようとしている。どうしてそこまで生きていたいと思ってしまうのだろうか。不思議で仕方ない。僕が弱虫だからだろうか。


 血を流し、醜い形になってしまったそれ《・・》を見るたびに胸が裂けるような感覚に陥り、ナイフを握る関崎が動くたび、彼に対しての怒りが増幅する。


「第2ラウンドも10分ね。ほらほら、早く決めないとみんな殺しちゃうよ?」


 僕を嘲笑いながら、仲間の命を手のひらで転がす。そして、僕の生きたいという感情を煽る。どうして津久田は、僕に人を殺させるのだろうか。


「僕が人を殺すのを見て何が楽しいんだよ!」


「おいおい、俺は心広いからいいけど、普通なら爆発音聞こえるからね?」


 僕は真剣な瞳を――津久田に向けた。


 彼は相変わらずニヤニヤした顔つきで話し始める。




 おまえの両親は、この施設の研究員だったんだよ。ここでは主に、この国の将来を見据えた人体実験が行われていた。ちょうどその頃は、安楽死制度とか入院の自由が無かった時期だったから、死にかけの人たちをここに連れ込んで、実験をしてたわけさ。


 おまえの両親と俺は細胞の研究をしていて、将来、この国を任せられるような人材を作れる優秀な細胞――(アスタリスク)細胞を作るんだよ。何が優秀かというと、本人の意識とは別にもう一つの意識があって、それが学習能力の急激な上昇と、発育過程の短縮等を引き起こすことができる。そして、この細胞をばら撒くことに成功した頃、おまえの両親は俺たちを裏切りやがった!


 *細胞は使ってはいけないだとか言い出して、この研究所から出て行きやがった。しかも、*細胞に関する全てのデータを捨てて出ていった。その時、俺も*細胞の研究に携わっていてな、腹が立つことこの上ない。


 しかも、その件で俺は上司にここを追い出され、職を失った。だから、金の確保も兼ねておまえの両親を殺したわけさ! まぁ、当然の報いだろ? でもなぁ、まだ足りないんだよ。だから、こうしておまえを苦しめてるわけだ。わかるか?




 子供には難しい話かと補足して不気味な声を上げる。僕は両親を庇うことも、肯定することもできない。きっと、何かしらの理由があって、こういう行動をとったと信じることしかできないのだ。


 まさか、両親がそんなことをしていたなんて初めて知ったし、ましてや、人体実験のお隣で仕事していたなんて驚きだ。




 ビーッビーッビーッ――




 急に警告が部屋に鳴り響き、津久田の表情が曇った。


「畜生、ここまでか。友哉! 逃げるぞ!」


「じゃあね、啓太。もう、会うことはないだろうけど」


 スクリーンに映る関崎がいつもの関崎と全くの別人に見えた。いつもならにこやかで明るく、話しやすい雰囲気なのに対して、今は無表情かつ目が鋭くて、とてもではないが近づきがたい。体格も、小学校の頃とさほど変わらないというのにもかかわらず、津久田と同じくらいの威圧感を放っている。


「どうしてこんな……」


 僕にはその一言が限界だった。


「俺はね、おまえみたいなやつが嫌いなんだよ。正義の味方? 偉そうに。勉強もそこそこできるし、優秀なのが余計に気に食わねー。だから、おまえを苦しめるためだけに津久田さんと組んだから、裏切るも何も、俺は俺のしたいことをしたまでだ」


「え、だって、そんな……」


 関崎はいじめをなくそうとした時、僕を応援してくれた。それに、遠回しではあったが、助言をくれた。なのにどうして?


「俺はな、この世で一番の存在なんだよ。神に選ばれた存在なんだよ! それを理解してほしい。まぁ、おまえができるはずもないか」


「もう満足しただろ? 俺は先に行くぞ」


「あぁ」


「ちょっと! 待って!」


 津久田と関崎は僕の視界から瞬く間に消え、姿どころか声も気配も、なくなってしまった。今での2人の姿が幻影だったかのように。


 ガチャッ


 ドアの開く音がして、振り向くとそこには亜子の父親がいた。


「大丈夫か?」


「はい。大丈夫です」


 張り詰めた表情で、こちらの安否を確認する。応えると、通信機器を使って他のメンバーと連絡し始めた。そこで、クラスメイトも1人を除いて全員救助されたという報告を聞き、僕は胸を撫で下ろした。しかし、大夢が死んだことは僕にとって一生治ることのない傷として心に刻まれた。


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